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コラム vol.287
  • 土地活用税務コラム

注目!小規模宅地等の特例の改正

公開日:2019/06/28

自宅や店舗、不動産賃貸業を営む土地の相続税評価額を最大で8割減少させることができる「小規模宅地等の特例」に税制改正がありましたので、今回は「小規模宅地等の特例」とその改定内容について解説します。

「小規模宅地等の特例」について

(1)小規模宅地等の特例とは

まず「小規模宅地等の特例」を簡単に説明しましょう。

  1. 小規模宅地等の特例とは、「相続又は遺贈により取得した財産で、その相続の開始の直前において被相続人の事業の用、又は居住の用に供されていた宅地等のうち相続税の課税価格に算入される金額について、一定の限度面積までの部分の一定の割合が減額される制度」のことをいいます。

被相続人が有する宅地等の用途によって、減額される割合や、限度面積は異なりますが、概ねのイメージで申し上げると、居住の用に供していれば330m2までは80%が減額され、事業の用に供していれば400m2までは80%が減額され、不動産事業などの貸付の用に供していれば200m2までは50%が減額されます。詳しい用途別の限度面積や、減額割合は以下を参照ください。

相続開始の直前における宅地等の利用区分 要件 限度面積 減額される割合
被相続人の専業の用に供されていた宅地等 貸付事業以外の専業用の宅地等 特定事業用宅地等に該当する宅地等 400m2 80%
貸付事業用の宅地等 一定の法人に貸し付けられ、その法人の事業(貸付事業を除く)用の宅地等 特定同族会社事業用宅地等に該当する宅地等 400m2 80%
貸付事業用宅地等に該当する宅地等 200m2 50%
一定の法人に貸し付けられ、その法人の貸付事業用の宅地用 貸付事業用宅地等に該当する宅地等 200m2 50%
被相続人等の貸付事業用の宅地等 貸付事業用宅地等に該当する宅地等 200m2 50%
被相続人等の居住に供されていた宅地等 特定住居用宅地等に該当する宅地等 200m2 80%

(2)小規模宅地等の特例の趣旨

では、なぜ相続税が安くなるような手厚い制度が創設されたのでしょうか。
小規模宅地等の特例は、被相続人が営んでいた事業や、居住の継続を目的に制度が設けられました。高度成長期には、土地が値上がりすることで、相続税の負担が大きくなってしまい、被相続人が営んでいた事業用の土地や、被相続人や相続人が住んでいた土地であっても、それを売却しないと相続税が支払えないという事態が頻繁に生じてしまいました。そこで、被相続人が営んでいた生活を出来るだけ、維持・継続させることを趣旨に、「小規模宅地等の特例」という制度が作られ、相続税負担の緩和が図られるようになりました。

「小規模宅地等の特例」の改正

ただ、こうした納税者の意向を汲んで小規模宅地等の特例制度を創設したにもかかわらず、その趣旨に沿わずに同制度を巧みに利用した税務対策が増えてしまいました。そのため、去年、今年と続けてこの小規模宅地等の特例に税制改正が入り、趣旨に沿わない場合には、この特例制度を適用できないようになりました。
まず、今年の改正を見てみましょう。今までは、相続開始時に事業の用に供していれば、小規模宅地等の特例の対象と成り得ましたが、2019年4月1日以降に発生した相続については、例え、相続開始時において事業の用に供していたとしても、「相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等」で一定の条件に該当した場合には、小規模宅地等特例の対象から除外されるようになりました。

(税制改正の内容)

改正前の要件
  • ・相続開始の直前において被相続人等の事業の用に供されていた宅地等であること
  • ・宅地等を相続税の申告期限まで有していること
  • ・相続税の申告期限まで、その宅地等の上で事業を営んでいること
改正事項
  • (1)相続前3年以内に事業の用に供された宅地については、特例の対象から除外する
  • (2)ただし、(1)に該当する土地であっても、当該宅地等の上で事業の用に供されている償却資産の価額が当該宅地の相続時の価額の15%以上であれば、特例の対象とする

つまり、相続開始時において、事業共用期間が短くその土地の上に設置された設備資産が安価な事業の場合は、土地は小規模宅地等の特例から外されるようになったのです。
では、なぜこのような土地は、小規模宅地等の特例から除外されるようになったのでしょうか。

税制改正により「ある事業」が小規模宅地等の特例対象外に・・・

ここで、皆様は、「土地を活用して事業を営めば、土地の評価額が下がり相続税対策に繋がりますよ。だから、事業を始めてみてはいかがですか?」と、勧められたところで、何の事業を営めばよいのか、思い浮かばないのではないでしょうか。また、事業を営もうと考えても、準備や設備投資の負担は少なくありません。事業を行うには、ハードルが非常に高いのではないでしょうか。
ただ、中には、そのような設備投資等の負担もさほどかけずに事業化が可能なハードルの低い事業もあります。その代表格がトランクルーム事業といわれていました。

例えば、被相続人が保有している空き地があったとします。被相続人が高齢となり、そろそろ相続が発生するかもしれない。「何か相続対策をしないと」という状況になったときに、その空き地にちょっとカスタマイズしたコンテナを置いてしまえば、直ぐにでも立派なトランクルーム事業が開始できてしまうのです。また、事業を止めたくなったらコンテナを撤去してしまえばよいだけなのです。

トランクルーム事業は、他の事業と比べて圧倒的に設備投資費用が抑えられ、また、短期間で直ぐに事業を開始することができ、相続対策だけのために事業を始めたい方にとってはうってつけの事業だったのです。
このように、事業を営んでいる体にして、小規模宅地等の特例を利用しようとする税務対策が横行したのです。

財務省は、こうしたトランクルーム事業の税務対策を封じることを狙い撃ちにしたと、公にしている訳ではありませんが、改正内容を確認すれば、一目瞭然という気がしてきます。その理由は、先述した改正事項の(2)から読み取れます。「相続開始前3年以内に事業を始めた土地であっても、その宅地等の上で事業の用に供されている償却資産の価額が当該宅地の相続時の価額の15%以上であれば、特例の対象とする」との条件があります。
つまり、それ相応の設備投資をして事業を営んでいれば、例え3年以内の事業開始であっても小規模宅地等の特例の対象になります。ここで特例の対象外とされているのは、設備投資額が土地の15%という小さな金額の場合に対象外とされるようになったのです。こうした設備投資額が非常に小さく済む事業として、コンテナ事業や、トランクルーム事業が該当するといわれているわけです。

昨年の改正

前後してしまいましたが、昨年の平成30年度の税制改正についても触れておきましょう。実は、去年も今年と似たような改正が行われていました。
税制改正前であれば、相続開始の時において被相続人の貸付の用に供され、かつ、確定申告期限においても引き続き貸付の用に供していれば、その宅地等については小規模宅地等の特例を受けることが可能でしたが、相続開始前3年以内に、相続対策に不動産賃貸業を営み始めた「新たに貸付事業の用に供された宅地等」については小規模宅地等の特例の対象外とされたのです。

「新たに貸付事業の用に供される」とは、以下のような場合が該当します。

  • ・貸付事業の用以外の用に供されていた宅地等が貸付事業の用に供された場合
  • ・宅地等若しくはその上にある建物等が何らの利用がされていない場合において、当該宅地等が貸付事業の用に供された場合

このように去年も税制改正において、「にわか不動産賃貸事業」の場合には、小規模宅地等の特例の対象から外されていたのです。今年は、去年の「にわか不動産賃貸事業」に続いて、「にわか事業」の場合にも、小規模宅地等の特例の制約が入るようになったのです。

相続が開始するからといって、あわてて相続税対策に走ったような場合には、税制改正によって、小規模宅地等の特例の対象外となる可能性があります。
事業投資や、不動産投資というのは税務対策に繋がる。という副産物への期待があっても良いのですが、それだけに目を奪われてしまうと、税務対策という副産物のフィルターをかけて、投資物件を検討してしまうことになり、本来の投資効果を見誤る可能性が大きくなってしまいます。税務対策はあくまでも、副産物であって、それが投資の目的となってはいけません。

また、事業投資や、不動産投資は長期的な投資になるので、相続が発生するからという短期的な視野ではなく、長期的な視野が求められます。
昨今の税制改正については、確かに小規模宅地等の特例の適用範囲が狭まったことは事実ですが、税務対策という副産物に期待することなく、純粋な投資判断が求められるようになったという点では、より不動産の目利きが重要になったと考えられます。
また、今まであれば、小規模宅地等の特例の適用が出来ていたものが、適用の対象外となることも考えられるので、投資にあたっては十分な検討が求められるようになりました。

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