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コラム vol.339
  • 不動産市況を読み解く

新型コロナウイルスの影響はどれくらい?最新2020年基準地価を読み解く

公開日:2020/09/30

2020年の基準地価(調査主体が都道府県のため、都道府県地価調査と呼ばれます)が9月29日に発表されました。
全用途(住宅・商業・工業)全国平均は-0.6%、2年連続続いたプラスからマイナスに転じました。また、住宅地は昨年-0.1%だったのが、-0.7%に、商業地は+1.7%が-0.3%に、工業地プラス1.0%がプラス0.2%となっています。しばらく右肩上がりで回復~上昇を続けていた基準地価ですが、やはり新型コロナウイルスによる影響で、失速した状況にいます。本サイトで毎年9月に紹介している基準地価の詳細分析を行います。

なぜ例年以上に基準地価に注目が集まったのか

公示地価や路線価といった他の公的な地価調査の価格時点が1月1日であるのに対して、基準地価は7月1日が価格時点です。今年は、春先からの新型コロナウイルスの影響が経済に大きな影響を与えていますので、「地価にどんな影響を及ぼしているのか」と、注目されていました。また、7月に国税庁から路線価が発表された時に、「コロナウイルスの影響で基準地価が広範囲で大きく下落した場合、路線価を減額修正する(=つまり減税)可能性がある」としておりましたので、こちらにも注目が集まりました。
このように注目の基準地価、例年は9月20日前後に発表されるのですが、今年は新型コロナウイルスによる調査分析の遅れなのか、公表が9月ギリギリとなりました。

基準地価について

基準地価について簡単に説明しておきます。
3月に発表される公示地価と目的や用途はほぼ同じですが、いくつかの違いがあります。大きな点は、以下の2点です。調査主体が公示地価は国土交通省で基準地価は都道府県です。また、価格時点は公示地価が1月1日で基準地価は7月1日となっており、価格時点を比較すると、中間点という位置づけになります。
調査地点数は公示地価が約26,000、基準地価は約21,000地点となっており、うち約1,600地点が同一地点です。同一地点が10%以下のため、県単位や市町村単位での、実数字の単純な比較はできませんが、推移をみることで上昇下落といった傾向はつかむことができます。

2020年基準地価の全体俯瞰

全国の全用途平均は前年比-0.6%、住宅地は-0.7%、商業地は-0.3%となり、いずれも前年より下落しました。昨年まで全用途は5年連続のプラス、住宅地は3年連続のプラス、商業地は6年連続のプラスと、バブル崩壊以降では、最も長期間の上昇を続けていましたが、新型コロナウイルスによる影響により腰折れ感が強く出た結果となりました。
ただ、細かくみてみると、すべての要因が新型コロナウイルスによるものではないようです。それに加えて、特に商業地や一部住宅地において地価押上げをけん引してきたホテル関連投資の一服感も上昇鈍化(あるいは下落)の要因であると思われます。こうした要因などから、三大都市圏の商業地の上昇は大きくブレーキがかかっており、前年は大都市(東京圏・大阪圏・名古屋圏)においてはプラス5.2%でしたが、今年はプラス0.7%とかろうじてプラスに留まりました。また、

もちろん、上昇した地点もあります。地価公示の価格時点(1月1日)と基準地価の価格時点(7月1日)の間に、都心の超一等地において、高輪ゲートウェイ(JR)と虎ノ門ヒルズ(東京メトロ)の2つの新駅が開業しました。このようなインフラ整備が進んだ場所や再開発が進んだエリアやその周辺ではかなり上昇しています。
また、大和ハウス工業も積極的に開発を進めている高速道路IC近くの物流施設周辺でも大きな上昇がみられました。

住宅地の状況

それでは、ここからは全国の住宅地について見てみましょう。
東京圏では-0.2%(前年+0.9%)、大阪圏-0.4%(前年+0.3%)、名古屋圏-0.7%(前年+1.0%)となっています。(国土交通省「令和2年都道府県地価調査」より)

*東京圏、大阪圏、名古屋圏の定義は、国土交通省「用途・圏域等の用語の定義」に従います。

次に、都道府県別に見てみましょう。図1は、都道府県別の住宅地対前年変動率を高い順に並べたものです。

図1:基準地価 都道府県別対前年平均変動率(住宅地)

国土交通省「令和2年都道府県地価調査」より作成

プラスになったのは5つの都県に留まっており、前年は15都道府県ありましたので、大幅に減りました。最も上昇したのは沖縄県で+4.0%(前年6.3%:1位)、つづいて福岡県+0.8%(前年1.7%:3位)、3番目は東京都で+0.2%(前年2.5%:2位)となっています。こうした上昇した都県においても、上昇幅は小さくなっています。
一方で、地方の中核都市の住宅地は、今年もそこそこ上昇しています。地方圏は-0.9%(前年-0.5%)ですが、札幌・仙台・広島・福岡の4市に限れば、+3.6%(前年4.9%)となっています。ちなみに、変動率が横ばい、もしくは上昇した県は5つあり、変動率が上昇(改善)したのは秋田県-1.8%(前年-2.0%)、横ばいが北海道・山形・大分・島根となっています。

図2:基準地価 変動率推移(住宅地)

国土交通省「令和2年都道府県地価調査」より作成

図2は、2000年以降の4つの主要都府県における住宅地基準地価の推移です。
ミニバブル期のような急激な上昇ではありませんが、2013年以降(地域によってはそれ以降)にじわじわと上昇を続けていました。近年は、ゆっくりと上昇(あるいは回復)、そして全国的に波及していました。しかし、2020年にブレーキがかかって失速していることが分かります。

商業地の状況

次に、商業地について見てみましょう。
東京圏では+1.0%(前年+4.9%)、大阪圏+1.2%(前年+6.8%)、名古屋圏-1.1%(前年+3.8%)となっています。(国土交通省「令和2年都道府県地価調査」より)

都道府県別に見てみましょう。図3は、都道府県別の商業地対前年変動率を高い順に並べたものです。

図3:基準地価 都道府県別対前年平均変動率(商業地)

国土交通省「令和2年都道府県地価調査」より作成

プラスになったのは11の都府県(±0含む)で、前年は20都道府県でしたので、こちらも減りました。最も上昇したのは住宅地と同じく沖縄県で+6.2%(前年12.0%:1位)、つづいて宮城県+3.0%(前年4.9%:5位)、3番目は福岡県で+2.1%(前年4.0%:6位)となっています。上昇している地域においても大きく上昇幅が減りました。また、前年大きく上昇した大阪(+8.7%)・京都(+7.1%)は、インバウンド観光の大幅減少が起因していると思いますが、今年は上昇幅が、大阪+1.8%、京都+0.4%と大きく減少しました。
今年の3月に公示地価が発表された際に本サイトの連載で、「ここ数年商業地地価の伸び率で沖縄に次ぐ全国2位の京都では、伸び率が低下しています。京都でのホテルが飽和状態にあり、稼働率が低下気味のようなので、心配されます。また、このエリアの商業地はコロナウイルスによる外国人観光客の大幅減少の影響をモロに受けそうですので、来年の公示地価では下がらないまでも、上昇率は大きく低下すると思われます」と書きました。「下がらないまでも、上昇率は大きく低下する」と予想した状況は、7月の時点ですでにはっきりとそうなりました。
インバウンド観光を見込んで過剰なまでに建てられたホテルにおいては、稼働率の低下が懸念されており、投資意欲の減退傾向が散見されるようになりました。そこに加えて新型コロナウイルスによる影響で実質的に海外からの観光客はストップしています。早くおさまり、海外旅行客が戻ることを願いますが、もし長期化すると、商業地における不動産価格に大きく影響が出るものと思われます。

逆に、地方の中核4都市(札幌・仙台・広島・福岡)は、多少下げたものの、今年も大きく上昇しました。昨年は10.3%で今年は6.1%と沖縄に匹敵する上昇幅が2年続いています。(国土交通省「令和2年都道府県地価調査」より)

図4:基準地価 変動率推移(商業地)

国土交通省「令和2年都道府県地価調査」より作成

図4は、2000年以降の4大都市における商業地基準地価の推移です。
リーマンショックが過ぎ、2013年ごろから、全国的に上昇傾向が見られました。そして住宅と同様に2020年は、主要都市はプラスを維持しましたが、前年までのような伸びは見られませんでした。

2021年はどうなる?

論点としては、今回のブレーキは、新型コロナウイルスによる影響を全て盛り込んだものなのかどうか?に注目が集まります。もし全て盛り込んだものとするならば、1年後の基準地価は横ばい、もしくは上昇の可能性があります。しかし、新型コロナウイルスによる影響が出始めたのが3月からだとすれば、価格時点である7月1日は約4カ月ですので、その後の経済回復の状況をみれば、かなり盛り込んではいるものの、全て盛り込んでいないと判断すべきでしょう。
すでに金融の世界では、新型コロナウイルス感染拡大前の状況に戻っていますが、実経済の回復は、じわじわゆっくりと元に戻りつつあるという状況です。
しかし、ここに来て明るい兆しも見え始めました。イベントなどの人数制限も徐々に緩和されており、また、海外との行き来についても、徐々に制限解除の方向に向かっています。もうしばらくすると、さらに緩和が進み、海外からの来訪者も増えそうです。このようにポジティブな光もだいぶんみえてきましたので、新型コロナウイルスが再び感染拡大することがなければ、実経済の回復も少しは勢いがつくのではないでしょうか。
こうして考えると、来年9月に発表される基準地価は、大きく落ち込むことはなく、今年並みか少しの下落程度になると予測します。

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