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コラム vol.355
  • 不動産市況を読み解く

2021年公示地価を読み解く~復活のキザシはどのくらい見えたのか?~

公開日:2021/04/05

POINT!

・新型コロナウイルスの影響で、令和3年の地価公示は全国的に下落

・用途別では、住宅地よりも商業地、特にインバウンド需要を見込んでいた地点での下落率が大きい

・地域別では、三大都市圏や地方四市を除く地域では下落に転じたが、地方四市や首都圏近郊の別荘地など上昇した地点もあった

国土交通省より「令和3年地価公示」が3月23日夕方に発表されました。これは選定された標準地の2021年1月1時点の1m2あたりの価格を判定して公示したものです。コロナショック後、初めての公示地価ということで、新型コロナウイルスが地価に与えた影響について大きな注目を集めました。

全体俯瞰

の全国平均は前年比-0.5%。昨年まで5年間続いたプラスから一転、6年ぶりにマイナスとなりました。新型コロナウイルスの影響は大きく、三大都市圏(東京圏、名古屋圏、大阪圏)はいずれもマイナス、地方圏全体でもマイナスとなりました。
地価上昇時は、大都市圏から地方圏にプラスが波及する流れでしたが、21年の公示地価では一気に全国的なマイナスとなりました。ただし、マイナスの幅に、住宅、商業、オフィスなどの「その土地の使われ方」によって差があったことも今回の公示地価の特徴です。
全国の住宅地は-0.4%(前年は+0.8%)、商業地は-0.8%(前年は+3.1%)で、ともにマイナスですが、商業地の落ち込みのほうが住宅地に比べ圧倒的に大きくなっています。また、さまざまな要因でプラスになっている地点も散見されます。
住宅地では、調査地点全18,166地点のうち上昇は3,473地点(19%)、下落が10,496地点(58%)、横ばいが4,197地点(23%)でした。
商業地では、全6,411地点のうち上昇は1,090地点(17%)、下落が4,081地点(64%)、横ばいは1,240地点(19%)となっており、その割合は似通っています。
以下、細かく見ていきます。

図1:地価公示変動率の推移(住宅地)

国土交通省発表データより作成

図2:地価公示変動率の推移(商業地)

国土交通省発表データより作成

住宅地では後半は持ち直した

2020年3月中頃から、その後の緊急事態宣言の解除まで、経済活動の停滞と外出自粛に よって街からぱったりと人がいなくなるという時期がありました。またインバウンド観光客は皆無に近く、観光地は大苦戦となりました。宣言解除後、20年後半からは景気の持ち直しがあり株価などは大きく上昇したものの、こうしたことが公示地価に色濃く出ています。

毎年9月に発表される都道府県地価と同一地点に限った公示地価では、全国の住宅地は年間では-0.2%でした。細かく見ると、前半は-0.4%(1月1日~7月1日までの変動率)でしたが、後半は+0.2%(7月1日~21年1月1日までの変動率)となり、前半のマイナス分を後半でカバーしきれなかったという状況です。同様に商業地は年間では-1.4%、前半-1.4%(同)で、後半は±ゼロ(同)となり、マイナス圏から脱せませんでした。この同一地点の地価を地域で分析すると、住宅地は三大都市圏、地方圏も合わせ、全国的に年の後半は概ねプラスになりました。一方、商業地では、大阪圏は後半も-0.6%、地方主要4都市(札幌・仙台・広島・福岡)以外の地方も後半は-0.3%と、マイナス圏のままとなっています。

東京圏の状況

東京圏では、全用途が-0.5%(前年は+2.3%)、住宅地は-0.5%(前年は+1.4%)、商業地は-1.0%(前年は+5.2%)となりました。
特徴的だったのは、商業地地価が東京23区全てにおいて下落になったことです。特にこれまでインバウンド観光が盛んだった台東区などでの下落幅の大きさが目立ちました。銀座・浅草・新宿歌舞伎町などの商業地では、2ケタのマイナスとなっており、新型コロナウイルスの影響が大きく出た格好となりました。商業地は全体的にマイナスながらも、飲食・小売りなどが主体のエリアのマイナスは大きく、丸の内や大手町のようなオフィスエリアはそれほど大きなマイナスではありませんでした。

住宅地では、港区と目黒区を除く東京23区の大半がマイナスとなりました。逆に、川口市や戸田市、横浜市の港北エリア、千葉県の総武線沿線エリアなどの住宅地はプラスとなりました。また、デュアルライフ(多拠点生活)が浸透し、千葉県房総半島エリアの住宅地もプラスとなっています。
細かく見ると、都心一等地で希少性の高いエリアや利便性の高いエリアなどではプラスが続いています。しかし、こうしたエリアにおいても、上昇地点数は例年に比べ少なくなりました。

大阪圏の状況

大阪圏では、全用途が-0.7%(前年は+1.8%)、住宅地は-0.5%(前年は+0.4%)、商業地は-1.8%(前年は+6.9%)となりました。
インバウンド観光需要が大きかった関西エリアでは、その影響が特に商業地で大きく出ました。
大阪の主要商業エリアでは、下落幅が20%台のところも5地点見られ、商業地下落率の上位10地点のうち8地点が大阪、1地点が京都エリアとなり、このことを大きくメディアが取り上げました。
昨年36.1%も上昇した大阪駅隣接の梅田の地点では、今年は-8.4%と振れ幅の大きさが目立ちます。住宅地は4年ぶりのマイナスとなりましたが、近年の上昇幅がそれほど大きくなかったためか、下落幅もわずかとなりました。

名古屋圏の状況

名古屋圏では全用途が-1.1%(前年は+1.9%)、住宅地は-1.0%(前年は+1.1%)、商業地は8年ぶりの-1.7%(前年は+4.1%)となりました。
名古屋圏での特徴は、上昇地点が少なかったことです。住宅地総地点数1,302地点のうち、上昇したのは36地点(3%)にとどまり、横ばい201地点(15%)、下落1,065地点(82%)でした。また、商業地総地点数477地点のうち、上昇地点はわずか2地点でした。横ばいが29地点(6%)、下落が446地点(94%)と、商業地ではほとんどが下落したといえるような状況です。
ただし、年間の前半後半の比較では、三大都市圏の商業地では、名古屋圏だけが+0.9%となっており、回復の兆しがうかがえます。

地方圏と地方主要都市

地方中核4市(札幌・仙台・広島・福岡)では、全用途平均が+2.9%(前年は+7.4%)、住 宅地は+2.7%(前年は+5.9%)、商業地は+3.1%(前年は+11.3%)となり、いずれもプラスになりました。

図3:地方四市 地価公示変動率の推移(住宅地)

国土交通省発表データより作成

図4:地方四市 地価公示変動率の推移(商業地)

国土交通省発表データより作成

ここしばらく続いた大幅上昇ではなくなりましたが、広島市を除けば堅調な上昇を続けています。
しかし、三大都市圏を除くすべての地方圏(上記4都市も含む)では、全用途平均が-0.3%(前年は+0.8%)、住宅地は-0.3%(前年は+0.5%)、商業地では-0.5%(前年は+1.5%)となりました。商業地は4年ぶりのマイナ ス、住宅地は3年ぶりのマイナスでした。

都道府県別の上昇下落率

都道府県別の地価公示上昇下落率を見ると、図5の住宅地ではプラス(横ばい含む)が1道8県の9つ、それ以外の38都府県はマイナスとなりました(昨年のマイナス数は24)。近年大きく伸びていた沖縄ではプラスは維持しているものの、上昇幅は小さくなりました。

図5:都道府県別 地価公示変動率の推移(住宅地)

国土交通省発表データより作成

図6は商業地の地価公示変動率です。1道7県の8つでプラス(横ばい含む)、それ以外の 39都府県でマイナスとなりました(昨年のマイナスは23)。商業地においても沖縄はプラスでしたが、近年毎年2ケタの上昇率が続いていましたので、急ブレーキがかかったといえるでしょう。その中心地である那覇市の商業地では、昨年は+20.1%でしたが、今年は+0.6%となりました。観光需要の大幅減少が大きく影響したものと思われます。

図6:都道府県別 地価公示変動率の推移(商業地)

国土交通省発表データより作成

特徴的なリゾート地他

地価公示の「変動率上位順位表(全国)」を見ると、住宅地の1位~6位が札幌近郊のリゾートアエリア(ニセコ〈倶知安町〉周辺など)が占めました。商業地では札幌近郊と福岡市中心街が1位~10位を占めました。
また、先に述べましたがテレワークの浸透でデュアルライフスタイルが広まり、房総エリアや、別荘地として人気の軽井沢など、首都圏近郊のいわゆる別荘地の住宅地地価の上昇が見られました。首都圏からの利便性がよい熱海、箱根、 河口湖なども人気で、価格は上昇基調にあります。

その他の特徴的な上昇地点

大阪市の地下鉄御堂筋線に直接乗り入れる北大阪急行が延伸され、大阪府箕面市内に新駅の設置が予定されています。その周辺での地価上昇がみられています。こうしたエリアでは、流通小売り店舗の建設等も見られるようです。
また、物流施設が建設されているようなエリア(工業地)での地価上昇も多く見られ、EC需要の高まりがうかがえます。

22年以降はどうなる?

2021年は、新型コロナウイルスの影響が強く出た公示地価でした。まとめると、次のような状 況だったといえるでしょう。

  • (1)2020年の前半の落ち込みを後半でカバーしきれなかった
  • (2)商業地、特にインバウンド観光需要を見込んでいるエリアでの落ち込みは大きい
  • (3)住宅地の上昇は止まったものの、下落は限定的

2022年以降は、新型コロナウイルスの影響がどこまで残るかが大きな要因となるのは間違いあ りません。しかし、国内需要の反動的な回復が早く起これば、早晩再びプラスに転じる可能性があると思います。

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