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コラム vol.445
  • 不動産市況を読み解く

相続した土地の活用と相続土地国庫帰納制度について

公開日:2023/03/31

POINT!

・2024年4月1日から相続登記が義務化されるのに先立ち、2023年4月27日から「相続土地国庫帰納制度」がスタートする

・「相続土地国庫帰納制度」により、相続または遺贈によって土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることが可能となる

遺産相続でうまく進みにくいのが、土地や家屋などの建物の相続です。現金や株式などの遺産は分割しやすいですが、土地や建物は一団として形成されているため、分割は簡単ではありません。また、受け継いだ土地や建物をどう活用するのかも悩ましいところです。

相続した土地をどうするか

「土地を相続する」ということは、あまり経験することではありません。そのため、「相続した土地をどうすればいいのか」は、多くの方にとって悩ましい問題であり、「誰に相談すればいいのか」分かりにくいことと思います。
相続した土地には、「(1)自分で使う」「(2)相続放棄する」の2つの選択肢があります。

(1)相続した土地(建物)を自分で使う

相続した土地(建物)を自分で使う場合、「リフォームなどを行い自分で住む」「土地(建物)をそのまま貸す」「新たに賃貸住宅などを建てて貸す」「売却する」などの方法が考えられます。

(2)相続放棄する

相続した土地が立地や建築基準法の規定、その他の要因により、上記のような活用や売却ができない場合があります。その際には、土地の管理費用や固定資産税がかかることなどを考慮して、「相続放棄する」という選択もできます。
しかし、「不要な土地」だけを相続放棄することはできず、預貯金や株式などすべての資産の相続権も失うことになるので注意が必要です。「相続放棄」を行うには、相続の開始があったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に申し立てて、被相続人の権利や義務を一切受け継がないとする手続が必要です。

土地を受け継いだ時に確認すること

遺産分割協議を経て、土地を相続することになれば、相続登記を行う(相続人全員の戸籍謄本や住民票など多くの書類が必要です)ことになります。相続に関することは面倒なことが多く、また土地を相続するまでの手続きは複雑です。そのため、相続財産が多い場合は、弁護士などに依頼をするほうが賢明といえます。
相続登記を経て、土地を受け継いだ際には、「(1)隣地などとの土地の境界をきっちりと把握する」、また「(2)用途地域による土地の利用制限や建築基準法による建築制限などを確認する」ことは、まず行っておきたいことです。

相続登記の義務化

「相続登記」は、これまで行われていないケースが散見されていました。そこで、2024年(令和6年)4月1日より義務化されます。不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならず、また、遺産分割協議の成立により、不動産を取得した相続人は、遺産分割協議が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記の申請をしなければならないことになります。

相続土地国庫帰納制度とは

しかし、過疎化が進む地方などでは、「土地の相続」がスムーズにいかない事例が多く見られていました。相続した土地について、「遠くに住んでいて利用する予定がない」「周りの土地に迷惑がかかるから管理が必要だけど、負担が大きい」といった理由により、土地を手放したいという要望が大きくなっていました。そこで、2023年(令和5年)4月27日から相続土地国庫帰納制度がスタートします。
前述のとおり、これまでは相続財産に使わないであろう土地(=不要な土地)があっても、その土地だけを放棄することができず、不要な土地を含めすべて相続するか、他の資産も含めすべて相続放棄をするかしかありませんでした。
このような土地が管理できないまま放置されることで、将来、「所有者不明土地」が発生することを予防するため、相続または遺贈(遺言によって特定の相続人に財産の一部または全部を譲ること)によって土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする「相続土地国庫帰属制度」が創設されました。

国庫帰納申請ができる方の要件

相続した土地を国に引き渡すための申請ができるのは、相続や遺贈で土地を取得した相続人の方です。兄弟など複数の人で相続した共同所有の土地でも申請ができます(ただし、所有者(共有者)全員で申請する必要があります)。いうまでもなく、相続人などから該当土地を購入した方は相続ではありませんので、申請ができません。

国庫帰納ができない土地

すべての相続土地が国庫帰納できるわけではありません。以下の土地は、通常の管理や処分をするにあたり多くの費用や労力が必要になるので、対象外とされています。

  • (1)申請できない土地(申請段階で却下されます)
  • ・建物がある土地
  • ・担保権や使用収益権が設定されている土地
  • ・他人の利用が予定されている土地
  • ・特定の有害物質によって土壌汚染されている土地
  • ・境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
  • (2)該当すると判断された場合に不承認となる土地
  • ・一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
  • ・土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
  • ・土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
  • ・隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
  • ・その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

これらの点は注意が必要ですので、相続土地国庫帰属制度についての詳しい内容は、法務省の法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」を参照してください。

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