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コラム vol.456
  • 不動産市況を読み解く

キャップレートとは何か?
最新キャップレートで見る不動産市場の見通し

公開日:2023/06/30

POINT!

・キャップレート(期待利回り)とは不動産投資における指標の一つで、不動産投資を行う方が「どれくらいの利回りを期待するか」を示すもの

・最新の調査によるキャップレート動向は、オフィスビル、賃貸住宅のワンルーム、商業施設、物流施設は横ばい、賃貸住宅のファミリータイプはやや低下、宿泊特化型ホテルは低下となった

・キャップレートよりも実際の取引利回りが低くなっていることから、期待する利回りに達していなくても購入している現状がうかがえる

新設住宅着工戸数を牽引してきた「貸家」建築数が、26カ月ぶりに、2023年4月分で前年同月比マイナスとなりました。新設住宅着工戸数全体を見ると、「持ち家」では、住宅建築工事費の上昇に伴い、2021年12月から2023年4月分まで17カ月連続で前年同月比マイナスとなっていましたが、2023年4月は「貸家」でもマイナスとなりました。
しかし、最新のキャップレートを見れば、賃貸住宅の投資熱は高止まりが続いていることが分かります。ここでは、キャップレートについての解説と最新キャップレートを分析してみます。

キャップレートとは

キャップレート(CapitalizationRate)とは、「期待利回り」を指します。ここでは「収益に基づいた価値(=資本化)」というイメージを持っていただくとよいでしょう。キャップレートは、不動産投資(賃貸住宅建築も含む)を行う方が、「どれくらいの利回りを期待するか」を示したものであり、不動産投資における指標の一つとして活用されています。
キャップレートの算出方法にはいろいろありますが、「期待する」利回りですから、「不動産投資家(あるいは企業)がどれくらいの利回りを期待しているか」を調査集計し、算出する方法が一般的です。また、算出されたキャップレートは、利回りの妥当性の基準となります。例えば、物件の購入を検討している時に、「物件の利回りが妥当か」を判断する基準となるわけです。
キャップレートは2022年後半以降、賃貸住宅分野で史上最低値を更新しています。キャップレートを「不動産投資熱」と捉えれば、「史上最高水準に賃貸住宅投資熱が高い」とも言えます。

キャップレートの計算

キャップレートは、「年間NOI(Net Operating Income)÷現在の物件価値(価格)」で計算された値となります。収益還元法での物件価格の算定の際には、「年間収益(NOI)÷利回り=不動産価格」という計算で求められますので、「投資をしようとしている価格が妥当か」の判断基準にもなりえます。

キャップレートと取引利回り

キャップレートは賃貸用の不動産に投資する(購入する)際の、「期待する」利回りの値ですから、実際に取引される売買価格での利回り(取引利回り)と異なる場合が多く見られます。
とくに、不動産投資熱が旺盛な時にはこの傾向が顕著になり、キャップレート水準で購入できる物件は少なくなります。

NOIキャップレートとNCFキャップレート

利回りを示す時、表面利回りとネット利回りの2種類があります。このうちネット利回りをより細かく分類すると、NOI利回りとNCF利回りがあり、同様に、キャップレートもNOIをベースしたNOIキャップレートとNCFをベースにしたNCFキャップレートの2種類があります。
NOIとはNet Operating Incomeのことで、賃料収入の年間合計(=満室想定賃料-空室損失)から支出として不動産運営費用(管理費・修繕費・固定資産税・都市計画税・損害保険料など)を引いたものです。ここでは、借り入れ金利は含みません。また、実際にお金の動かない減価償却費も含みません。
一方、NCFはNet Cash Flowのことで、お金がいくら残っているかにフォーカスした額です。
NOIと計算内容は同じですが、収入には、敷金やそれを運用した際の運用益なども計上します。また、支出においては資本的支出なども考慮します。資本的支出とは、不動産の価値を高めるため、使用期間を延長するための工事や設備投資費用のことを指します。対して修繕費は、維持管理・メンテンナンスといった費用を指し、通常経費となります。修繕費は、例えば原状回復費のオーナー負担分などで度々発生する経費であり、資本的支出は、賃貸住宅などでは大規模修繕など15~20年に1回程度の臨時に支払う費用と考えればいいでしょう。賃貸住宅経営において、NCFとNOIのどちらで判断するかはそれぞれですが、一般的な土地活用で建築するサイズの賃貸住宅ではNOIをベースにするといいでしょう。このあと示すキャップレートの数字はNOIでの計算となっています。

キャップレートの調査と公表

キャップレートはいくつかの機関から公表されています。多くの投資家が活用している一つが、1999年4月から一般財団法人日本不動産研究所が調査・公表している「不動産投資家調査」のレポートです。この調査は、アセットマネジメント会社・デベロッパー・商業銀行・投資銀行・生命保険会社・不動産賃貸業などへのアンケート調査です。
ここからは、この調査の最新版である、第48回「不動産投資家調査」(公表:2023年5月30日、調査時点:2023年4月)のデータを見てみましょう。

最新の各アセットのキャップレート動向

最新の同調査によるキャップレートでは、不動産種別、地域ごとに動向の違いが見られました。
全国的に見れば、オフィスビル(Aクラスビル)は横ばい、賃貸住宅ではワンルームは横ばいでファミリータイプはやや低下、商業施設は横ばい、物流施設は横ばい、宿泊特化型ホテルは低下といった状況となりました。
このうち、オフィスビル・賃貸住宅(ワンルーム・ファミリーとも)・物流施設については、2000年以降(1999年の調査開始以来)最低値の状況になっています。「もうこれ以上、キャップレート は下がらないだろう」という業界の予測は、コロナ前にも昨年にもありましたが、結果は「まだ下がりそうだ」と言えそうな状況です。 賃貸住宅では、東京(城南エリア)が、本調査開始以来最も低い値を更新(前回から連続して最低を更新)し、多くの地方都市で、とくにファミリータイプ物件のキャップレートは前回(2022年10月調査)より低下しました。「不動産投資家の投資意欲が引き続き旺盛である」こと、また「投資物件価格が引き続き上昇している」ことが分かります。
オフィスビルのキャップレートは、多くのエリアで横ばいでした。キャップレートが低下した地点は、東京赤坂、京都、広島の3エリアのみとなり、国内で最もキャップレートの低い東京丸の内・大手町エリアは久しぶりに横ばいとなりました。それでも同地点のAクラスビルのキャップレートは3.2%で、2000年以降最低値(前回と同値)となっています。
宿泊特化ホテル(≒ビジネスホテル)では、国内の移動が再び活発化、インバウンド観光需要の回復を受けて、札幌・名古屋・大阪・那覇で前回より低下しました。最も低い東京(JR/地下鉄の主要駅周辺徒歩5分以内の立地を想定、築5年未満、100室程度)で4.5%となっています。
商業店舗のキャップレートは、東京銀座で前回より0.1ポイント低下し、3.4%となりました。それ以外の全国主要都市における主要エリアでは、すべて横ばいとなっています。
東京近郊の郊外ショッピングセンター(東京都心まで1時間程度、幹線道路沿いを想定)では5.2%でした。他のエリアにおける、主要エリアと郊外エリアの違いは、0.6ポイント~1.0ポイント程度となっています。東京都心部のズバ抜け感がうかがえます。

賃貸住宅ワンルームタイプのキャップレート

ここからは、賃貸住宅にフォーカスして解説します。
ワンルームタイプ(25~30m2、築5年未満、駅徒歩10分以内を想定)の賃貸住宅(一棟物件)のキャップレートは、調査を行った全国主要都市(10都市)のうち、東京城南・名古屋・大阪の3エリアで0.1ポイント低下しました。それ以外の7都市では横ばいとなっています。

図1:賃貸住宅の期待利回り(CAPレート)の推移

一般財団法人日本不動産研究所 第48回「不動産投資家調査」(2023年5月30日)より作成

2012年以降、多くの都市で、キャップレートはコロナ期など時折横ばいの時もありますが、ほぼ右肩下がりで推移しています。ほとんどの都市で過去最低を更新、あるいは過去最低水準にあります。こうしたことからも、賃貸住宅への投資は一時的なブームではないといえるでしょう。加えて、東京都心だけでなく、賃貸住宅投資熱(賃貸住宅建築熱)が全国主要都市に広がっていることが分かります。
東京城南地域(目黒区・世田谷区、渋谷駅・恵比寿へ電車で15分圏内想定)のキャップレートは3.8%となっていますが、同地域の想定物件の実際の取引における利回りは3.5%(前回は3.6%)となっており、過熱している状況がよく分かります。東京城東エリア(墨田区・江東区、東京駅・大手町駅へ電車で15分圏内想定)のキャップレートは4.0%で、史上最低値が続いています。また、実際の取引における利回りは3.7%で、こちらも前回調査から低くなりました。このように2023年に入ってもきわめて低く推移しており、東京都心はもとより全国主要都市で、引き続き賃貸住宅投資熱の高さがうかがえます。

ファミリータイプの状況

ファミリータイプ(50~80m2、築5年未満、駅徒歩10分以内を想定)でも同様に、全国主要都市のうち6都市(東京城南・横浜・名古屋・大阪・広島・福岡)で0.1~0.2ポイント低下しました。

図2:賃貸住宅の期待利回り(CAPレート)の推移

一般財団法人日本不動産研究所 第48回「不動産投資家調査」(2023年5月30日)より作成

とくに東京・城南地域では、前回4.0%から3.9%へ下落。ワンルームと同様に調査開始以来最低となり、想定物件の実際の取引における利回りは3.6%となっています。東京・城東地域では4.1%で、こちらも下落傾向にあります。実際の取引利回りは3.8%となっています。

キャップレートはこれまで、比較的賃貸住宅需要が旺盛なワンルームタイプのほうが、ファミリータイプに比べて低い傾向にありました。しかし、このところの動向を見れば、ファミリータイプのキャップレートも低下基調で、都心を除く多くの主要都市で、ワンルームもファミリータイプもほぼ同じ値となっています。また、前述の通り、期待する利回り(=キャップレート)よりも、実際の取引利回りが低くなっており、つまり期待する利回りに達していなくても購入している現状にあることがうかがえます。

まだまだ投資意欲は高い

同同調査では、不動産への新規投資意欲について、専門家へのアンケートも実施しています。
「今後1年間の不動産投資に対する考え方」の項目の回答では、「新規投資を積極的に行う」の回答が96%もあり、前回よりも1ポイント上昇し、逆に「新規投資を控える」の回答は3%にとどまり、前回調査から2ポイント低下しました。当面は金融緩和政策が続く見通しとなり、不動産市況はまだまだ活況が続きそうです。

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