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コラム vol.472-7
  • 土地活用税務コラム

相続税・贈与税の基本(7)不動産の贈与を成功させるには

公開日:2024/04/26

贈与後の収入は贈与された人のもの

不動産を贈与する場合、現金贈与と異なり、登記をもってその事実が確定しますので、必ず証拠が残り、手続上安心です。しかも、地代や家賃などの賃料収入は、贈与による移転の後、その土地や建物をもらった人の収入になります。現金をそのまま持っていても何も生みませんが、収益を生む土地や建物の場合は、それ以後の収入が無税でこれらをもらった人に移転することになり、あたかも贈与税なしに毎年贈与しているような状態になるわけです。
また、贈与税や相続税を計算する場合、土地は通常の取引価額(時価)ではなく、国税庁の定めた評価方法(路線価方式又は倍率方式)により評価されます。このような評価額は、一般的に公示価格(国が公表する取引価格)の80%程度とされています。建物の評価額も、通常の取引金額ではなく、国税庁の定める相続税評価額(固定資産税評価額)となり、建築価額の60%程度になることが多いようです。
このほか、貸宅地、貸家建付地などについては、さらに評価の引下げができます。

値上がりする不動産を贈与するのがポイント

相続対策として生前贈与を考える場合、相続時より贈与で取得する時点の評価額のほうが低いことが重要なポイントです。
土地の贈与は、地価上昇局面においては地価が上がる前にできるだけ早く、地価下落局面においてはできるだけ下がりきってから実行するのが、税務効果を考えた贈与の鉄則です。現在のような、先行き不透明な時代においては、今後の区画整理や都市開発事業等によって確実に値上がりすると思われる土地こそが、賢い贈与の対象といえるでしょう。

区画整理事業が予定されている

区画整理をする前の土地は、一般的に道路付きや土地の形状が悪く、かつ道路面と大きな段差があるなど、土地価格が低いため当然相続税評価額も低くなっています。
この地域に区画整理事業等があった場合、形状のよい利便性の高い土地に変わるため、区画整理による土地面積の大幅減少後でも、時価も相続税評価額も高くなることがほとんどです。
このような事例では、区画整理前の相続税評価額の低いうちに、子や孫に思い切って土地を贈与してはいかがでしょうか。区画整理前なら土地の相続税評価額が低いままですので贈与税の負担も軽くてすむにもかかわらず、区画整理が完了すれば価値の高い土地となりますので、もらった者にとっては自由に活用や売却ができる価値ある土地を軽い税負担で手に入れることになるからです。

都市計画の変更

農地から宅地への変更に大きな制限のある「市街化調整区域」から、規制が外れて届出だけで農地から宅地への変更ができる「市街化区域」へ編入されると、土地を農業以外に自由に活用できる反面、その土地の地価にも影響を与えることになり、当然、相続税評価額も大幅に引き上げられることになります。
このように、将来都市計画の変更があるかもしれないと予想される農地については、現在の相続税評価が安いうちに贈与税を払ってでも贈与しておくほうが良いでしょう。ただし、農地の贈与については農地法の規制があり、誰にでも贈与できるわけではありません。将来市街化区域に編入された場合、もらった人にとっては土地としての価値が上がり有効活用も可能になります。

相続時精算課税制度の選択

土地の評価が上がる前に思い切って贈与した場合に、負担すべき相続税額が重すぎる場合には、相続時精算課税制度を選択するのも良いでしょう。なぜなら、贈与の時の価額で相続時に精算されますから、贈与後にその土地が開発等により上昇しても、相続税が増える心配がいらないからです。地域の将来性をじっくり検討し、どうすべきか考えてみるのも不動産所有者の相続を考える第一歩といえるでしょう。

親所有の土地に家族が賃貸物件を所有している場合

親所有の土地に子や孫などの家族が賃貸物件を建てて所有している場合には、通常は権利金の授受もされていないため「使用貸借」となり、土地は貸家建付地でなく自用地として評価されることになります。そこで、評価を引き下げる対策として、賃貸物件である建物を親に贈与することを検討します。
つまり、土地を自用地から貸家建付地に変身させ、相続税評価額の引下げをしょうというわけです。親の資金が潤沢にあれば、贈与ではなく建物を時価で譲渡することも考えられます。親子や夫婦であっても、時価以外で建物を売買した場合には余分な税金がかかることがあります。
また、このときに時価と建物の残存価額との差額に益が生ずれば譲渡所得税が課税され、損が生ずれば譲渡損として切り捨てになることもありますので、留意する必要があります。

収入増加によるデメリットと評価引下げ効果を検討

土地所有者に建物を贈与したり譲渡したりすると、それ以降は収入が土地所有者に移転してしまいますので、その分収益が相続財産として積み上がっていくことになります。相続対策として検討する場合は、そのデメリットと、土地が貸家建付地になる評価引下げ効果によるメリットとの比較によって、実行するかどうかの判断をする必要があります。
このときに考慮すべき事項は次のようなことです。

  • (1)不動産所有者の年齢や健康状態から、近い将来に相続開始が想定されるかどうか。相続開始が想定されるときには贈与や譲渡を実行するかどうかは熟慮を要する。
  • (2)相続開始までに長期間を想定できるときには、金融資産の贈与や他の対策と組み合わせることによって、収入増加のデメリットを相殺できるかどうかを検討する。
  • (3)赤字会社がある場合には、会社に建物を贈与するのも1つの方法である。
  • (4)同族会社に建物を売却すれば、収入を分散する効果を得ることができる。

費用や特例が使えないことに注意

不動産を贈与すると不動産登記費用や登録免許税、不動産取得税などが、相続で名義を変更するときに比べ余分に費用がかかります。相続による土地の登記の際の登録免許税は贈与のときの5分の1以下ですし、不動産取得税はかかりません。したがって、遺言書を作成して相続や遺贈をする場合は、贈与に比べると諸税金が非常に安くなります。十分にこれらを考慮した上で、不動産の贈与は考えてください。
また、「小規模宅地等の特例」は相続税の評価の特例ですので、宅地を贈与する時の評価の際には適用できません。
例えば、自宅の敷地を子や孫に贈与してしまうと、80%の評価減が適用できる特定居住用宅地等の特例を受けることができなくなります。自宅以外の土地や建物などの贈与を選択し、相続時に特定居住用宅地等の特例を受けたほうが、土地所有者の相続対策として良い場合もあるでしょう。

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