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コラム vol.477
  • 不動産市況を読み解く

2023年度版「中小企業白書」に見る事業承継として国も推進する「M&A」

公開日:2024/02/09

増加する中小企業のM&A

現在、中小企業の経営者の高齢化が進んでおり、後継者が不在の企業も多く、事業承継問題が深刻化しています。中小企業庁の試算によれば、中小企業・小規模事業者の事業承継問題が解決できなければ、廃業などの増加によって、「2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用と約22兆円の国内総生産(GDP)を失う可能性がある」としています。
中小企業の事業承継は、現在の多くの従業員を守り、貴重な経営資源やノウハウを継承していく上でも、とても重要なことです。

その事業承継の有力な方法のひとつとして注目されているのが「M&A」です。
中小企業庁「中小PMIガイドライン~中小M&Aを成功に導くために~」によれば、「M&A」とは「Mergers(合併) and Acquisitions(買収)」の略称で、会社法の定める組織再編(合併や会社分割)に加え、株式譲渡や事業譲渡を含む、各種手法による事業の引継ぎ(譲渡し・譲受け)を言います。
M&Aと聞くと、以下の調査結果にあるように、譲渡側は、M&A後に本当に従業員の雇用は確保されるのか、売却価格はいくらなのか、今後会社は発展するのだろうか、取引先との関係はこのまま維持できるのだろうかなど、さまざまな疑問や不安があるでしょう。

図1:譲渡側の重視すること

出典:中小企業白書(2021年)(株)東京商工リサーチ「中小企業の財務・経営及び事業承継に関するアンケート」

親族や従業員が順当に継承できる場合は、問題は少ないかもしれませんが、第三者へ経営権を譲ったり、企業の売却を行う場合には、上記のような課題があるのが現状です。
このような不安や心配を払しょくし、スムーズな事業承継を行うためにも、中小企業庁は、2020年、後継者不在の中小企業(M&Aの譲渡側)等に向けて「中小M&Aガイドライン」を策定しました。
さらに、これを支援機関において徹底するため、2021年8月に「M&A支援機関登録制度」を創設しています。

実際に、日本におけるM&A件数は増加しており、中小企業白書によれば、2022年は過去最多の4,304件となっています。未公表のM&Aも相当数あると推察されますので、今後、M&Aはさらに増加していくものと思われます。

図2:M&A件数の推移

中小企業白書(2023年度)(株)レコフデータの調査結果より

売り手からみたM&Aの目的・メリット

M&Aを成功させることができれば、売り手にとって、以下のようなさまざまなメリットがあります。

  • ・会社の存続
    後継者不足に悩む中小企業は多く、M&Aにより買い手から新たな経営者が就任すれば、後継者が生まれることになり、会社の存続を図ることができます。
  • ・従業員の雇用
    廃業した場合、大きな問題は従業員の雇用でしょう。M&Aにより会社を維持することができれば、従業員の雇用を継続することができます。
  • ・創業者利益の確保
    親子間で会社を相続し、株式の譲渡を行った場合、株式の相続に対して相続税が課税されるため、多くの未上場企業において相続税の資金準備は避けて通れない問題です。株式譲渡によってM&Aを行えば、オーナーは譲渡対価を得ることで、創業者としての利益を確保することが可能です。
  • ・将来的な事業の成長と発展
    売り手企業に資本が投入されることになれば、新たな事業展開が望める可能性があります。また、お互いの強み・弱みを補完し合うことができれば、売上増やコスト削減等につながり、将来的な事業の成長と発展にもつながるでしょう。
  • ・事業の再生、健全化
    M&Aを活用することで、経営戦略を見直し、停滞している事業の再建や健全化ができる可能性もあります。

M&Aを行えばすむ話ではなく、当然リスクもあります。組織文化の違いや事業戦略面でのすれ違い、顧客層の違いなど、すべてのM&Aが成功するとは限りませんが、M&Aの成功が条件とすれば、このように、企業の存続や発展のために有効な手段のひとつであると言えるでしょう。

「事業承継・引継ぎ支援センター」の役割

中小企業庁は、令和3年4月、全都道府県に「事業承継・引継ぎ支援センター」を設立しました。後継者不在の中小企業のM&Aにおけるマッチング支援として、「中小企業者等からの相談対応(一次対応)」「M&A候補案件の登録機関への橋渡し(二次対応)」「登録機関で対応できない案件等の引継ぎ支援(三次対応)」を実施しています。 たとえば東京都では、東京商工会議所内に設置されており、事業承継、特にM&Aに関する相談を中心に受け付けています。 次の図は、事業承継・引継ぎ支援センターの相談社数と第三者承継に関する成約件数の推移です。これによれば、相談社数・成約件数共に増加傾向にあります。

図3:事業承継・引継ぎ支援センターの相談件数・成約件数の推移

「事業承継・引継ぎ支援センター」ホームページより

「PMI」への取り組みがM&A成功のカギ

M&Aの効果を最大化するために、M&A成立後に行われる統合に向けた作業(PMI)が重要だと言われています。PMI(POST MERGER INTEGRATIONの略称)とは、主にM&A成立後に行われる統合(経営や業務等の面でのすり合わせなど)に向けた作業であり、PMIの取り組みは「経営統合」「信頼関係構築」「業務統合」の三つの領域に分類されます。 中小企業白書によれば、早期にPMIの検討をし始めた企業ほどM&Aで期待以上の成果を実感しているという結果が出ており、M&Aの成功には欠かすことはできない作業だと言えます。

図4:PMIの早期取り組みの効果「経営統合(PMI)の検討開始時期別に見た、M&Aに対する評価

2023年版中小企業白書 (株)帝国データバンク「中小企業の事業承継・M&Aに関する調査」(2022年12月)

買い手にとっても、M&Aにおいては、相手先従業員等からの理解を得られるかどうかは大きな問題です。「POST(後)」とあるため、M&Aの後と思われがちですが、M&Aの目的の明確化・共有や現状把握等を含め、M&Aの実施前から準備する必要があります。 前述したように、中小企業の従業員を守り、貴重な経営資源やノウハウを継承していくことは日本経済の将来にとっても欠かすことのできないことです。M&Aを効果的に活用し、日本の財産を承継していきたいものです。

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