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コラム vol.545
  • 不動産市況を読み解く

2025年地価公示を読み解く地価上昇は地方や人気観光地へ

公開日:2025/03/31

2025年(令和7年)の地価公示が3月18日に国土交通省より発表されました。 好調が続く不動産市況ですが、地価上昇が実感される中で、上昇幅はどれくらい伸びているのか、どれくらい全国的に好調の波が広がっているのか、人気観光地の地価はいったいどれくらい上昇しているのか、などの点に注目が集まっていました。

2025年の地価公示の全体俯瞰

地価公示法に基づく地価(公示地価)は、毎年1月1日を価格時点として3月20日頃に公表されます。2025年の公示地価は、全国の全用途(全用途は、住宅地・商業地・宅地見込地・工業地)平均で+2.7%となりました。前年は+2.3%でしたので前年を超える大きな伸びとなりました。過去4年を振り返れば、2022年は+0.6%、2023年は+1.6%でしたので、4年連続して全国平均で上昇、そして連続して上昇幅拡大となっています。
全国平均を用途別にみれば、住宅地は+2.1%(前年は+2.0%、前々年は+1.4%)、商業地は+3.9%(前年は+3.1%、前々年は+1.8%)となっており、2021年以降、いずれも4年連続の上昇、そして毎年上昇幅が拡大しています。
上昇幅が拡大している要因としては、引き続き低金利が続き、加えて円安基調が続いていること、インバウンド需要が拡大していることなどがあげられます。

バブルの様相は見られない、昨今の地価上昇

長く続く地価上昇(2019年~2021年を除く)について「バブル期の再来」と考える方もいるかもしれません。確かに、全国全用途平均の伸び率では、1991年(バブル期と呼ばれた最終年)に11.3%に次ぐ伸びとなっており、大都市圏での上昇が目立ったミニバブル期の最終年(2008年)の1.7%を超えています。期間でみれば、地価におけるバブル期と呼ばれるのは1985年頃から1991年頃で約7年間、ミニバブル期は2005年~2008年で約4年間ですが、今の不動産好景気は、地価で見れば、2014年頃から続いていますので、約10年間継続しているといえます。
このように、バブル期やミニバブル期と比べれば、このところの地価上昇は、「ゆっくり、ジワジワと長期間」というのが特徴です。また、バブル期の地価は、物価上昇率をはるかに超える伸び率でしたが、昨今の地価上昇は物価上昇程度となっています。また、賃貸住宅、オフィスビル、商業施設などの空室率の低さをみれば、「実需が伴っている」という状況です。こうしたことからも、「バブル」という様相は見られず、確かな実需に基づいた相応的な地価上昇といえるでしょう。

住宅地の状況

図1は2006年以降の住宅地地価の変動率を圏域別に見たものです。
全国・三大都市圏・地方圏(地方四市以外)で上昇幅が大きくなりました。都市部では、堅調な住宅需要に支えられて引き続き住宅価格とくにマンション価格上昇が続いています。とくに東京圏や大阪圏、また人口流入の多い地域での上昇が続いています。
地方四市(札幌・仙台・広島・福岡)では2年連続して昨年より上昇幅は縮まりました。過去10年にわたり大きく上昇した後、多少上昇率が鈍化していますが、それでも5.8%と高い伸びとなっています。また、それ以外の地方都市においても、国内外から人気の高いリゾート地や別荘地、その周辺地域などで地価上昇が顕著となっています。

図1:圏域別地価公示前年平均変動率(住宅地)

国土交通省「地価公示」より作成

商業地の状況

図2は2006年以降の商業地地価の変動率を圏域別に見たものです。
都市部や地方主要都市でのホテルの稼働率上昇、オフィスや店舗の空室率低下と賃料の上昇などを背景に物件の収益性が向上していることが地価上昇につながっているようです。
地方では、地方都市駅前などの再開発が進み利便性が向上している地域やインバウンド需要が旺盛な地域の上昇が目立ちました。
また、大都市部での主要駅周辺などではマンション需要との競合が地価上昇に寄与しているようです。

図2:圏域別地価公示前年平均変動率(商業地)

国土交通省「地価公示」より作成

大都市圏の状況

三大都市圏(東京圏・大阪圏・名古屋圏)全体では、全用途は+4.3%(前年は+3.5%、前々年は+2.1%)、住宅地は+3.3%(前年は+2.8%、前々年は+1.7%)、商業地は+7.1%(前年は+5.2%、前々年は+2.9%)と、いずれも連続して上昇幅が拡大しました。特に商業地は上昇幅が大きくなっています。

東京圏の状況

東京圏(東京都区部や多摩地区、神奈川県・千葉県・埼玉県の主要地域など)の全用途平均では、+5.2%(前年は+4.0%、前々年は+2.4%)、住宅地は+4.2%(前年は+3.4%、前々年は+2.1%)前々年は+0.6%)、商業地は+8.2%(前年は+5.6%、前々年は+3.0))となりました。いずれも4年連続で上昇、上昇幅も拡大しています。

住宅地では、特に東京都区部(23区)の勢いは強く、下落地点はゼロ、23区平均の住宅地上昇率は+7.9%(前年は5.4%、前々年は+3.4%)で、4年連続して23区全てで上昇、また上昇幅も全ての区で拡大しました。最も上昇率が高いのは中央区で+13.9%(前年は+7.5%)、次いで港区12.7%(前年は+7.2%)、目黒区12.5%(前年は+7.3%)となっています。マンション需要の旺盛な地域においてはマンション価格が大きく上昇し、それに伴い地価の上昇が顕著となっています。目黒区青葉台の地点では+18.9%と全国住宅地の全地点の中で10番目に高い伸びとなりました。
23区中心部の地価上昇の波及効果により23区外縁部にも影響を及ぼしており、上昇率は中心部ほどではないものの、地価上昇幅は拡大しています。
東京圏全体の住宅地の状況をみれば、下落地域は、圏内外縁部の、わずかな地域しかなく、郊外も含めて広範囲に地価上昇している状況となっています。

商業地は、23区平均では+11.8%(前年は+7.0%、前々年は3.6%)で、3年連続全23区全てで上昇、すべて5%以上の上昇幅で、上昇幅も拡大しています。商業地で上昇率が最も高かったのは中野区で+16.3%(前年は+8.2%))、次いで杉並区15.1%(前年は+8.0%)、台東区+14.8%(前年は+9.1%)となっています。再開発が進む地域と国内外の観光客に人気の地域を抱える地域の上昇が目立ちます。都内の商業地では多摩地区の上昇幅が5.3%上昇し、人気回復の兆しが見えています。
東京圏全体の商業地の状況をみれば、住宅地と同じように、下落地域は、圏内外縁部の、わずかな地域しかなく、郊外も含めて広範囲に地価上昇している状況となっています。

大阪圏の状況

大阪圏(大阪府全域、兵庫県・京都府・奈良県の主要地域など)の全用途平均では、+3.3%(前年は+2.4%、前々年は+1.2%)、住宅地は+2.1%(前年は+1.5%、前々年は+0.7%)商業地は+6.7%(前年は+5.1%、前々年は+2.3%)となりました。
特に、商業地は大きく上昇しました。京都市は+10.2%(前年は+6.6%)11区のうち5区が10%以上の伸びとなりました。大阪市は+11.6%(前年は+9.4%)、北区、福島区、西区では10%を超える大きな伸びとなっています。大阪駅北ヤード2期(グラングリーン大阪)開発、中央郵便局の再開発など、大阪駅周辺での開発が進み、京都駅も南北(七条口・八条口)とも駅周辺の開発が進んでいます。神戸市は+5.5%(前年は+4.1%)、全9区で上昇幅が拡大しました。
大阪圏全体では、コロナ禍からの急回復、急上昇が続いていますが、コロナ禍直前の2020年の地価公示では+6.9%でしたので、完全回復にあと一歩というところです。
また、4月13日からは大阪・関西万博が大阪市此花区夢洲で開催され、それに先立ち1月19日には地下鉄中央線が延伸されました。また、2029年度(予定)には同じ夢洲でIR開業も予定されています。これらに合わせて、この後も、大阪圏では鉄道の延伸計画がありますので、住宅地、商業地とも地価上昇の傾向が続きそうです。
住宅地では、京都市は+3.2%(前年は+2.5%)中でも東山区、下京区、南区は6%台の上昇となっています。大阪市は+5.8%(前年は+3.7%)で、中心6区の上昇と、北大阪地域や京阪沿線地域での上昇が目立ちます。神戸市は+2.7%(前年は+2.1%)。特に東部4区は4%前後の上昇率となりました。

名古屋圏の状況

名古屋圏(愛知県の主要地域、三重県の一部など)の全用途平均では、+2.8%(前年は+3.3%、前々年は+2.6%)、住宅地は+2.3%前年は+2.8%、前々年は+2.3%)、商業地は+3.8%(前年は+4.3%、前々年は+3.4%)。三大都市圏で唯一上昇幅が縮まりました。
住宅地を見れば、名古屋市では+3.6%(前年は+4.5%)、全16区のうち2区は上昇幅が拡大、残り14区では上昇幅が縮小となりました。
商業地は、名古屋市では+5.0%(前年は+6.0%)、全16区のうち3区では上昇幅が拡大しましたが、2区で同率、残り11区では上昇幅縮小となりました。
昨年は、とくに商業地においては三大都市圏で最も上昇幅は小さかったのですが、今年は上昇幅が縮まっています。インバウンド需要の回復が遅れ、三大都市圏から取り残された感が出てきており、またこれまでの上昇に一服感も出てきました。

地方圏の状況

地方四市(札幌・仙台・広島・福岡)では、全用途平均は+5.8%(前年は+7.7%、前々年は+8.5%)、と2年連続して上昇幅が縮まりました。コロナ禍中も含めて10年以上連続して地価上昇しており、住宅価格の高騰、収益不動産価格の高騰など全体的に不動産価格が高くなっていることから、上昇に一服感が出てきました。上昇幅が縮まったとはいえ、三大都市圏以上の上昇率ですから、引き続きの勢いがあるといえるでしょう。住宅地は+4.9%(前年は+7.0%、前々年は+8.6%)、商業地は+7.4%(前年は+9.2%、前々年は+8.1%)となりました。
地方圏全体では、上昇していますが、上昇幅は横ばいという感じです。全用途平均は+1.3%(前年は+1.3%、前年は+1.2%)、住宅地は+1.0%(前年は+1.2%、前々回年も+1.2%)、商業地は+1.6%(前年は+1.5%、前々年は+1.0%)となりました。
地方4市を除くその他の地方圏では、全用途平均は+0.8%(前年は+0.7%、前々年は+0.4%)、住宅地は+0.6%(前年は+0.6%、前年は+0.4%)、商業地は+0.9%(前年は+0.6%、前々年は+0.1%)と、いずれも3年連続してのプラスなりました。
特に、商業地の上昇率は拡大しています。大手半導体企業の進出地域やその周辺地域の住宅需要、賃貸住宅需要が増え、引き続き建設ラッシュが続いていること、また周辺の商業地域でも開発・新規出店があいついでおり、工業地はもちろん住宅地・商業地も活況にあること、また人気のリゾート地での別荘地需要が旺盛な事、などポジティブな要因が多く、まだしばらく上昇する見通しです。
地方四市以外の地方県庁所在地市では、金沢市や高松市、那覇市などが、堅調に上昇を続けています。特に那覇市は地方四市に匹敵する地価となっています。

地方の地価上昇の注目地点

今年の住宅地上昇率トップは、昨年に続き、北海道富良野市の地点でした。今年の上昇幅は+31.3%、前年は+27.9%でしたので、2年で1.7倍近くになっています。観光地でありスキーリゾート地として有名な富良野の勢いが続いています。
スキー系のリゾート地では、白馬の地点が住宅地地価上昇率2位(+29.6%)、野沢温泉が6位(+20.9%)、となっています。国内のスキーやスノーボード人口が大きく増えているという状況ではないようですので、これはインバウンド需要が背景にあるのでしょう。
また、上位10位には、3位に宮古島の地点(+23.1%)、7位・8位に石垣島の地点(+20.3%、+19.3%)が入っています。

今年も住宅地変動率上位10位に、半導体メーカー「ラビタス」工場が進出する千歳市が1地点(4位)ランクインしています(昨年は4地点がベスト10にランクイン)。商業地では、トップ3に千歳市の地点がランクインし、1位の地点は48.8%、2位の地点は42.9%、3位の地点は36.8%と極めて高い伸びを示しています。

都道府県別の住宅地・商業地の変動率

次に、各都道府県別に見てみましょう。
都道府県別に見ると、住宅地地価上昇となったのは30都道府県でした。昨年29、一昨年24都道府県でしたので連続して増えており、地価上昇の波が地方に波及していることがわかります。逆にマイナスとなったのは15県、横ばいは2県となりました。
上昇が目立つのは、沖縄県で+7.3%(前年は+5.5%)、2年連続して1位となりました。
2位は東京都で+5.7%(前年は+4.1%)、3位は福岡県で+4.9%(前年は+5.2%)となっています。

図3:都道府県 地価公示(住宅地)変動率(2025年)

国土交通省「令和7年地価公示」より作成

次に商業地を見てみましょう。

図4:都道府県 地価公示(商業地)変動率(2025年)

国土交通省「令和7年地価公示」より作成

都道府県別に見ると、商業地ではプラスとなったのは34都道府県で、昨年29、一昨年は23都道府県でしたので、こちらも順調に地方圏へ波及していることが分かります。逆にマイナスとなったのは10県だけとなっています(3県は横ばい)。マイナスとなったのは、香川県を除く四国地方、北東北、山陰地方などの県です。

半年ごとの地価変動率の推移

最後に、都道府県地価調査との共通地点における半年ごとの地価変動率の推移を見てみましょう。毎年7月1日時点で実施される都道府県地価調査との共通地点は1,590地点で、そのうち住宅地が1,087地点、商業地が503地点があります。国土交通省の「都道府県地価調査との共通地点における半年ごとの地価変動率の推移」によれば、住宅地では、全国、東京圏、大阪圏、地方四市では前半よりも後半の方が、上昇率が高くなっています。これは、住宅地価格が、後半ほど伸びが顕著だったということ、つまり住宅地地価は全国的に上昇基調にあることになります(注:前半は1月1日~7月1日、後半は7月1日~1月1日)。地方四市では上昇幅は低下していますが、前半後半の状況をみれば、住宅地地価上昇の勢いが感じられます。
商業地では、東京圏において前半より後半の方が、上昇率は高くなっていますが、大阪圏、名古屋圏、地方四市、地方圏とも後半の方が上昇率は低下しています。商業地地価がかなり高くなっており、上昇に一服感があるように思われます。

まとめと2026年への展望

ここまで見てきたように、2025年分の公示地価は全国的に上昇し、バブル期以来の大きな伸びとなっています。しかし、前半で解説したように、消費者物価指数がここ数年+3%(コアCPI)前後で推移していることを考えると、地価上昇幅は妥当な上昇幅と言え、地価上昇率が10%を超えていたバブル期(消費者物価指数よりもはるかに大きな上昇幅)に比べると、上昇スピードは「ゆっくりジワジワ」という状況であり、現状が「バブル」とはいえないでしょう。

政策金利はジワジワと上昇しており、執筆時点(3月24日)では0.5%、2025年中にはもう1回か2回の上昇可能性がありますが、それでも実質金利でみれば、まだまだかなりの金融緩和といえます。こうしたことから、引き続き2025年中も「不動産市場は活況が続く見通し」といえるでしょう。
このようなことから、2026年3月に公表される公示地価は、引き続き上昇の可能性が高いと思われます。

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