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暮らしにいいものを探して vol.22暮らしにいいものを探して vol.22昭和の型板ガラスを
繊細な柄を生かした皿に

昭和40年代に建具用に使われていた型板ガラス。
繊細で多様な柄を生かし、
皿やランプシェードとして
アップサイクルを手掛ける旭屋ガラス店。
下町風情が残る兵庫県・
神戸市の工房を訪ねました。

2024.8

旭屋ガラス店の代表・古舘嘉一さんは昭和2年から続くガラス店の三代目。

神戸・長田で三代続くガラス店。
残っていた型板ガラスの美しさに
惹かれて

かつて建具として和室や部屋の間仕切りに使われていた昭和型板ガラス。片面に柄を施し、光を取り入れながらも視線を遮るためにつくられたもので、昭和40年頃に広まり、製造会社からは毎年新しい柄が登場していたそう。その後ライフスタイルの変化などから需要が落ち、たくさんあった柄も次々と廃番となり製造されなくなりました。

「うちの親父が昭和型板ガラスを大量に残していたんです。震災でも割れず残った。それを捨ててしまうのはもったいない、何かに生かしたいと思ってたんです」と旭屋ガラス店の代表・古舘嘉一(こやかた よしかず)さん。

工房に置かれた大きさもさまざまな昭和型板ガラス。当時は破損時の張り替え用にストックしていたという。

昭和型板ガラスは、つるりとしたガラス面と柄が入った面があるのが特徴。それぞれに名前がつけられ、上はぐるぐると曲線が描かれた「サーキット」、下は大胆な曲線がユニークな「わかば」。

2002年に脱サラして家業を継いだ古舘さんは、新しい分野に挑戦しようとステンドグラスの修業を積み、技術を会得。残された昭和型板ガラスでランプシェードをつくることを思い立ちます。その後、熱を加えれば皿にできると思いつき、試行錯誤の末に商品化。それがコロナ禍に人々の目にとまり、一躍人気商品となりました。

「小物なんかもいろいろつくってはみたんです。でも究極はお皿とランプシェード。生活で一番使ってもらいやすいものやなって感じたんです」

そして昭和型板ガラスの魅力はなんといっても70種類ほどもあるという多様な柄。「海外だとテクスチャーの種類はあっても、ここまで多様な柄はほぼない。自然や草花などモチーフもバラエティー豊かで日本独特のデザインだと思いますね。だから自分でつくりながら、『わあ、きれいやな』と、たえずそう思いながらつくってます(笑)」

独自に生み出した技術で
昭和型板ガラスを繊細な皿に

繊細な柄を生かすため、どうしても皿にしたかったという古舘さん。成型のために熱を加えると、肝心の柄が溶けてしまうという難題を、こまめな温度調節をすることでクリア。実験を重ねながら、皿状になり、縁の切り口も溶けてテカリが出て、かつ、きちんと柄が残る温度域を見つけ出しました。

専用カッターでガラスを切り抜く。

円形にカット。縁に研磨をかけて整えてから熱を加える。

使うのはガラス工芸用の電気窯。素焼きのモールド(型)の上に載せ、少しずつ温度を上げながら熱を加えた後、自然冷却する。微妙な温度調節が必要だそう。

完成した皿は3サイズ。丸皿2mm厚・大2,750円、中2,200円、小1,650円、丸皿4mm厚・大3,300円、中2,750円、小2,200円。ほかに4mm厚の四角皿や三角皿、6mm厚の大皿なども。

昭和型板ガラスはすでに製造されていないため、ストックのほか、廃業する同業者から譲り受けたり、解体される家屋で引き取ったりするなどして確保しています。「東京にも山口にも引き取りに行きました。でも次々と古い家が解体されて捨てられているので、生かせるようにもっと考えていかなあかんなと思ってます」

最近では、令和6年能登半島地震で被災した家屋で、解体時に廃棄処分となる昭和型板ガラスを引き取り、復興事業として役立たせるため検討予定だそう。

「ちょうど昭和レトロがはやって、アップサイクルという価値観も浸透してきた。今こそ昭和型板ガラスを使うべきやと思うんです。捨てられるものがこんだけ魅力的になるってことだから。しかも日本にしかない。それをいかに伝えて、わかってもらって、使ってもらえるかと考えますね」

Column

おうちで使ってみました!

「銀河」の小皿を晩酌タイムに。小1,650円。

工房に置かれた昭和型板ガラスは、「これ、見たことある!」と思わず声が上がる、懐かしい光景につながるものばかり。そんな昭和型板ガラスの皿は家で使うときも、ちょっと気持ちが優しくなれるような気がします。

旭屋ガラス店

兵庫県神戸市長田区二葉町2-8-2
tel. 078-611-4491
※工房の一般公開は行っていません。

asahiyagarasuten.com

※表示価格は消費税込み2024年7月現在。詳しくは旭屋ガラス店のウェブサイトをご確認ください。

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