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【総合技術研究所~研究員たちの肖像 vol.3】自然環境下で生きる建物を
“暴風雨の脅威”から守れ!

地震や台風に強く、火災にも強い。
一年中健やかに過ごせて、静けさも大音響の音も楽しめる。
そんな良い家ができるまでには、地道な研究開発の積み重ねが欠かせません。

大和ハウス工業の総合技術研究所では、
日々、研究員たちがさまざまな「課題」の「答え」を探しています。
実験映像とともに「ダイワハウスの家」ができるまでの舞台裏をご覧ください。

第3回は「防水」の研究開発をご紹介します。

Profile

総合技術研究所 信頼性センター 耐火耐久性能グループ 主任研究員

石丸 謙吾

「建物」は一日中、動いている

「建物は“生き物”です。一日中、目に見えないスケールで伸び縮みしています。家に朝日の熱があたると温まり、日が暮れると冷たくなる。すると建物に使われている鉄や木、コンクリートなど、いろいろな部分が伸びたり縮んだりする。また時間や天候、季節によってもかなり収縮するので、私たちは建物を“生き物”のように捉えています」

そう語る石丸は、防水性や耐久性の高い「材料」や「構造」を研究開発する研究員です。彼のミッションは、家という生き物を観察して、データを集めて解析し、そこから新しい材料や構造をつくること。最初のステップとなる観察は、生き物の生息地、つまり家が本来建っている「屋外」での調査から始まります。

総合技術研究所では、北海道や新潟、奈良、沖縄で「屋外曝露(ばくろ)試験」を行っています。曝露試験とは、自然環境の中に外壁材を設置して、長期間にわたって劣化の程度を調べる試験です。雪が降って凍る地域では寒さで傷みやすいコンクリート系材料の劣化を、沖縄では紫外線や温度、降雨による劣化を調査します。

屋外曝露試験(沖縄)

屋外曝露試験(北海道)

石丸によると、これほどの規模で屋外曝露試験をしているハウスメーカーは少ないのだとか。ダイワハウスは全国に家を建てているため、どの地域でも長持ちするものを開発しなくてはなりません。ダイワハウスにとって「JIS規格」クリアは最低限のレベルに過ぎず、「xevoΣ(ジーヴォシグマ)」で業界屈指の「防水30年保証」を実現した背景には、高い目標設定と地道な調査がありました。実際に建っているお客様の家もさまざまな気付きを与えてくれます。ある年の冬、石丸は青森のお客様相談センターの社員から「雪国で暮らしたことのない石丸さんには、雪が下から降るなんて想像がつかないだろう」と言われ、外壁の状態を調査するために極寒の青森へ。

「気温はマイナス、風速10m/s以上の地吹雪が舞う中、数日をかけて何十棟と見て回りました。下から吹き上がった雪は外壁にたたきつけられ、そのまま凍りつく。その雪が溶けて、また凍る。コンクリートにとって最も厳しい環境を体感し、外壁の立場に立って、その大変さや苦労がよくわかりました」

石丸は、全国にある材料メーカーの拠点で材料開発時の実験に立ち会うこともあり、1年のうち多くは研究所の外に。北から南まで、各地での調査と実体験を研究開発に生かしています。

※「構造耐力上主要な部分」および「雨水の浸入を防止する部分」の初期保証期間は、保証期間内に当社が実施する点検を受けられることを条件に、お引渡しの日から30年間となります。点検を受けられなかった場合、原則としてそのときから保証が受けられなくなることをご承知おきください。

外壁防水の生命線は「目地」にある

住宅にとって雨水は天敵です。雨水が浸入すると、構造体の劣化が進み、建物の寿命が縮むからです。そこでダイワハウスでは、強烈な暴風雨でも雨水の浸入を大幅に軽減する“家の砦”として、鉄骨住宅に「外張り断熱通気外壁」を採用しています。石丸は外壁に使う「材料」を専門メーカーと開発し、その材料を組み合わせてベストな「構造」をつくりあげます。では、まずパーツとなる「材料」に注目してみましょう。

外張り断熱通気外壁にはさまざまな技術の粋が詰め込まれていますが、中でも防水の生命線となるのは、外壁材と外壁材の隙間を埋める「目地」だと石丸は明言します。ダイワハウスの主な鉄骨住宅商品は、構造耐力上主要な部分・雨水の浸入を防止する部分について「初期保証30年」を実現しています。さらに有料メンテナンス工事を行えば「60年」まで保証を延長し、60年以降も診断・保証する体制を整えています。この業界屈指の保証を支えているのが外壁であり、外壁の最前線で雨水を防いでいる「目地」なのです。外張り断熱通気外壁の目地には、独自に開発した「高意匠高耐久シーリング」が使われています。

「高意匠高耐久シーリングの『高耐久』とは、メンテナンスをしなくても30年長持ちするという長所を表しています。さらに、石調の外壁材になじむようにザラザラとしたテクスチャーを加えた『高意匠』となっており、目地を目立たせないことで外観のデザイン性を高めました」

シーリング材をはじめ、外壁材や透湿防水シートなど、部材は全て専門メーカーと共同で開発します。石丸は「目地は、一年中あるいは一日の中でも、建物の伸び縮みに常にさらされている部材。その動きの“癖”を最もよく知るのは、ハウスメーカーの研究員である私たちです」と自負し、癖を踏まえた性能目標や検証をオーダー。試験では、30年持たせるために40年、50年まで想定した劣化条件を与えます。高意匠高耐久シーリングは、強制的に目地を動かす15,000回を超える疲労試験で伸縮性能を検証。日々の伸縮だけでなく、地震時に建物全体が大きく揺れた場合にも追随性能が高いことを、E-ディフェンスでの実大実験で確認しています。

※E-ディフェンス:国立研究開発法人防災科学技術研究所の実大三次元震動破壊実験施設の愛称

E-ディフェンスでの「xevo Σ」加震実験

加震後のシーリング確認

風速40m/sの台風を建物にぶつける

数年かけて開発した材料がどれほど素晴らしくても、それだけで良い家はできません。材料をどう組み合わせ、どんな形状にするか、「防水構造」の開発も要になります。

「シーリング材が30年持つのであれば、シーリング材が引っ付く相手側の材料も30年持つものじゃないといけない。ところが材料には相性があるんです。仲が良いもの、悪いものがあるんですよ。ですから私たちは、材料メーカーがつくってくれた材料を、屋根から外壁、基礎に至るまで建物全体のバランスを見ながら組み合わせていきます」

組み合わせと並行して、雨水を建物内に浸入させない「構造」を設計します。外張り断熱通気外壁の「二重防水構造」もその一例。これは、ビル建築にも使われる外壁目地防水の中で最も耐久性、信頼性が高いといわれるダブルシールジョイント工法を採用したものです。さらに「外壁だけでなく、軒先換気口など換気・通気の出入口となる部位には、水をせき止める仕掛けを施しています。お城の掘に敵の侵入を防ぐ仕掛けがあるように、水を室内側に浸入させない形状や接合などの仕掛けが家全体に無数にあるんです」と防水の裏技を明かします。

二重防水構造 概念図[スタンダードV断熱仕様(xevoΣ)]

そうして構造のサンプルができあがったら、建物開口部の防水性を評価する「局所風雨実験」を研究所で実施。ここで登場する実験装置が、風速最大40m/sの暴風雨を巻き起こす“台風再現機”です。ちなみに気象庁によると、平均風速35~40m/sで走行中のトラックが横転し、40m/sを超えると樹木・電柱・街灯・ブロック塀が倒れ、倒壊する木造住宅もあるといいます。実験映像では物干し竿にかけた布団があっという間に吹き飛ぶ様子をご覧いただけます。

気象庁より 風の強さと吹き方

「実験では、建物の隙間に対してさまざまな方向から所定の風速の風雨をぶつけ、室外側に浸入する水の経路や量、漏水の有無を確認します。台風で漏水が発生しないように、ダイワハウスではこんな地道な評価を積み重ねているということを感じていただけたらと思います」

研究所には他にも、外装材に日射・降雨を繰り返し与える「屋内外温度差劣化試験機」や、疑似太陽光で外壁材を照射する「サンシャインウェザーメーター」なども活用。屋外曝露試験と併せて、自然条件が家にもたらす影響を徹底的に調べ、新技術・新商品の開発に反映しています。

屋内外温度差劣化試験機

サンシャインウェザーメーター

究極の夢はノーメンテナンスの家

1年の多くは全国を飛び回り、それ以外は研究所で研究開発に没頭する石丸ですが、驚くことに自宅に帰ってからも実験を続けています。

「10年前、自宅を実験棟のようにして建てたんですよ。元研究者の妻から『好きにしていいよ』と許可をもらい、外装から室内までのほとんどに当時開発中だった部材を使用。家の中にセンサーを付けて建物や目地の動きを測定したり、外壁4面の塗装を変えて朝晩の表面結露を比較したり。10年経って想定通りの劣化で済んでいるところが、自宅で一番気に入っている点です」

自宅でさえも実験対象にする石丸は、幼少期から好奇心旺盛で変わった子どもだったと親に聞かされたそうです。「池に行ったら1時間も2時間もずっと鯉を見ていたらしいです。私は覚えていません」と笑いますが、魚や電車など好きなものをじっと観察し、どうやってできているのかなど考えていたとか。スポーツにも熱中し、今につながる行動力を培いました。親となった今は、家で実験する自分の背中を見て、幼い子どもにも同じ兆しが表れてきたと苦笑します。

仕事においては「これまでに前例のない形で、建物の耐久性や居住性の向上、省エネ、省資源などをもう一段階引き上げていきたい」とさまざまなアイデアを温めています。究極の目標は「建築寿命やメンテナンスの必要がない建物」を開発すること。「もし外装メンテナンスを全くしなくていい住宅ができれば、メンテナンスにかかる費用が浮きます。そのお金を、内装や設備を改修して居住快適性を高めたり、余暇や教育など他のライフステージで使えたりすれば、より楽しく豊かな生活を送れると思いませんか?そんなことを実現できる研究開発を今後は目指していきたいです」と夢を大きく広げます。業界屈指の防水30年保証にも満足せず、石丸はこれからも飽くなき好奇心に導かれ、挑み続けていくことでしょう。

【vol.4】では、冬に真夏の暑さで家を熱する研究員が登場します。

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