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生活を考える

コンパクトでも、広々と感じる住まいを建てるには?「開放感」を生み出す設計のコツ

都市部は通勤通学や暮らしの利便性から人気がある一方、
敷地には限りがあることが多く、隣家との距離も近いことから、
閉塞感のある空間になりがち、という課題もあります。
しかし設計の工夫次第で、こうしたコンパクトな敷地でも
広々とした開放感を感じる住まいを建てることは可能です。
今回は、大和ハウス工業の一級建築士・吉川慶が、そのコツや具体的なアイデアを紹介します。

Profile

大和ハウス工業株式会社 住宅事業本部
設計推進部ZIZAIデザイン室

吉川 慶

一級建築士、ハウジングマイスター(社内認定)

家族同士の間合い、家具や家電の間合いなど、あらゆる「間」を巧みにコントロールすることで居心地を生み出す設計士。「家づくりを楽しむ」をモットーに、お客さまお一人お一人の理想を求めて情熱を注ぐ。

30坪台の建築事例・建築実例

都市部の住まいで閉塞感を感じるのには「理由」があった

住宅が密集した都市部に家を建てる場合、多くの方は「限られた敷地の中で、少しでも窮屈に感じない快適な家を作りたい」と考えています。難問のようですが、実は設計の工夫次第でかなえられることもたくさんあります。

ただしそのためにはまず、なぜ「閉塞感」を感じるのか、その理由を知っておく必要があります。「閉塞感」の正体とは何でしょうか。

閉塞感の正体(4つの要因)

閉塞感は主に次の4つから生じます。

1つ目は「光の不足」です。住宅密集地では、それぞれの家が敷地いっぱいに建っているために、屋内に光が差し込みにくくなること。さらにプライバシーも配慮するために、窓を少なくしたり、カーテンやブラインドを閉め切ったりすることによる暗さもあります。

2つ目は、「空間の分断」です。狭い敷地に全ての機能を入れようとするために、機能別の小さな部屋がたくさんでき、それぞれの空間に余白がなくなってしまい、閉塞感が生まれます。

3つ目は「視線の抜けの少なさ」です。住宅密集地では、隣家と近いために窓が少なかったり、窓の外もすぐに隣家があったりと、視線の抜ける先がないために、景色に動きや奥行き感が感じられず、これが閉塞感につながります。

4つ目は「収納の少なさ」です。限られた間取りの中で収納スペースを十分設けられず、「引っ越すときにモノを減らそう」と考えていたのに、結局ほとんどを持ち込んでしまうというケース。収納に収まりきらないモノが部屋にあふれて、窮屈な印象を生むということも少なくありません。

ですが、裏を返せば、これら4つの要因に対処することで、閉塞感を払拭できるということでもあります。

もちろん、いずれも限られたスペースが原因で起きることですから、簡単にはいきません。お子さんに「(開放感を出すために)窓の外にお庭を作るから、◯◯ちゃんのお部屋は我慢してね」というわけにはいかないでしょう。けれど、少し発想を変えることでこの問題を解決できます。

発想の転換で、開放感を生み出す方法

例えば、限られた空間で「子ども部屋がほしい」と考えるなら、「子ども部屋」の捉え方を変えてみるのです。「子ども部屋」の中に、寝床、勉強コーナー、クローゼットといった機能を全て収めようとすると、ある程度の広さが必要になってきます。しかし、「一人になれる場所」「籠もれる場所」と考えるなら、3帖でもいいのかもしれません。服は「ファミリークローゼット」にまとめ、勉強は「スタディスペース」にまとめて、日中は親がリモートワーク、夕方は下の子が、夜は上の子が使うというのも可能かもしれませんね。

またはリビングとダイニングとスタディスペースを全て広いリビングにひとまとめにする方法もあるでしょう。ハイバックチェアやチェストなどで空間を区切ったり、コーナーごとにラグを敷いたりするだけでも、それぞれの場所に異なる空気感を持たせることができます。こうすれば部屋の分断はぐっと整理されるのではないでしょうか。

また視線の抜けを作る方法も、立派な「庭」である必要はありません。窓の外に街路樹や隣家の庭などきれいな景色が見えるなら、その方向に窓を設ければ借景になります。

そのほか、外の景色を鏡に写り込ませる方法もありますし、室内に観葉植物を置いたり、壁にプロジェクターで自然の景色を投影したりするのもいいでしょう。こんなふうに工夫すれば、スペースがあまりなくても「視線の抜け」は手に入るのです。

まずは光を取り入れる方法を考える

このように限られた空間で開放感を生み出すには、やはり発想の転換が必要です。ただ、どの工夫にも共通していえる「大前提」があります。それが採光です。

私たちは住宅密集地のコンパクトな土地に家を建てるとき、まず「どこから光を取り込むか」を最初に設計します。必ずしも南側を採光部にすればいいというわけではありません。隣家の高さのない場所や、隣家の庭に面している方向など、抜けのあるところを見つけて、そちらを光の取り入れ口にします。

そのうえで、プライバシーに配慮しながら、いかに光を住まいの中に引き込むかを考えて、家の角度や窓の位置を決めるのです。ここで鏡に反射させることもあれば、隣の家が白い外壁なら、その外壁をレフ板にして光を反射させることもあります。

「視覚効果」や「しかけ」で開放的な印象を作る

さらに、「開放感」は感覚のものですから、心理的な要因が大きく影響します。例えば、体育館のような広い空間だからといって、開放感を感じるわけではありませんよね。私たち設計士はこうした「開放感」への心理的なイメージをひもといて住まいづくりに取り入れます。さまざまな方法があり、その組み合わせで開放感を生み出していくのですが、いくつか具体的な例を挙げてみましょう。

例1:「期待感」を持たせる

1つ目は「期待感を持たせること」です。鬱そうとした竹林を抜けた先にビーチがある、というような景色は、狭くてもその先の開放感を想像させますよね。

こうしたイメージのように、狭いところにあえて細く小さな窓を設けると、「その先に何かがありそう」という期待が生まれます。下半分がガラス、上が障子の「雪見障子」や逆に上半分がガラスの「月見障子」などは、外の気配を想像させながら、同時にプライバシーに配慮することができます。

また家具の選び方、置き方でも期待感を持たせることは可能です。脚付きの家具や、壁付けしたテレビなど、床から浮いているもののほうがその先の広がりを期待させます。またソファやチェストなどを壁にピッタリつけるのでなく、30〜40cm離しておくことで、後ろにも光が流れ込んで広く見えます。

例2:コントラストをつける

2つ目は「コントラストをつけること」です。開放感というのはそもそも相対的な感覚です。そのため、閉塞感、圧迫感を感じるような景色をあえて並べることで、開放感のある空間が際立ちます。家中にまんべんなく開放感を出そうとするのでなく、メリハリをつけたほうが開放的な印象が生まれるということです。

例えばリビングの開放感を印象づけるために、あえて廊下や寝室の採光を抑え、照明を暗くしたり、狭くしたり、天井を低くしたりするのです。「暗い」「狭い」と聞くと、ネガティブに感じるかもしれませんが、暗さや狭さは落ち着きを生む効果もあります。部屋の用途に応じて変化をつけることで、より心地よい空間が生まれます。

例3:奥行き感を出す

3つ目は「奥行き感を出すこと」です。床材がフローリングの場合、板目の向きで遠近感を演出できます。長方形の部屋なら長い方に、正方形に近い部屋なら入口から窓に向かう方向に、長い板目を使いましょう。遠近法の効果で奥がより遠くに感じられます。

天井にも板を張る場合は、天井と床の目の方向をそろえることで、より強い奥行きが生まれます。

またこれも錯視効果ですが、鏡も空間を広く見せるのに役立ちます。鏡に外の景色や廊下などを「映り込ませる」ことで、その空間がずっと続いていると感じさせたり、外へとつながっているように見せたりできます。鏡を使う際は、「どこから見て、何を映り込ませるか」を十分に考えて設置するのがポイントです。

「高さ」「白さ」は広さを感じさせる近道

さまざまなテクニックを紹介しましたが、もっとシンプルに「高さを出す」「明るくする」 といった基本的な要素も開放感を生み出す重要な手法です。

同じ面積で広さを感じさせるには、天井を高くするのが効果的な方法のひとつです。日本の住宅の天井高は平均2m40cmほどですが、+5〜10cm程度でもぐっと広がりを感じます。窓も扉も大きいほうが広く見えるので、窓をハイサッシに、ドアも天井まで届くフルハイトにすることで、より開放感が生まれます。ただし、あまり天井が高いと市販のサッシが使えなくなるので、予算との相談が必要です。

一方で、大きな窓を設けると断熱性能が低下し、断熱等級に影響が出る場合があります。近年は断熱性能を重視する傾向が強まっているため、窓のサイズと断熱性能のバランスを考慮して計画することが大切です。

  • ※1xevoΣおよびxevoΣPREMIUMの場合、天井高は2m40cm、2m72cm、さらに2m80cm、3m8cmと3m16cm(1階のみ)の仕様を選ぶことができます。天井高については間取りや建設地、建築基準法(法令)等により、対応できない場合があります。
  • ※2間取り・仕様等により「断熱等級6」に適合しない場合もあります。xevoM3(ジーヴォ・エムスリー)と省エネ地域区分1~4地域(寒冷地および沖縄県等)を除く。

「明るくする」ためには、白い床材や壁を選ぶといいでしょう。外からの光を取り込むのに障子などを使うのも効果的です。ただし、白は汚れやすく、障子は破れやすいため、メンテナンスの手間を考慮して選択することも大切です。

照明は、部屋全体を照らすタイプにし、昼白色を採用すると全体が明るくなります。また部屋の角にフロアライトを置いたり、間接照明で壁や天井を照らしたりすれば、部屋の隅々まで明るくなり、広さを感じさせることができます。

「本当に開放感が必要か」を考えてみる

一方、どこもかしこも明るくて広い家というのは、どこか落ち着かない雰囲気になることも。例えば窓は、光を取り込み、外への広がりを感じさせてくれる半面、外の景色が雑然としているのであれば、それはむしろ「ノイズ」になります。外から「見られる」ことでプライバシーが守られず、「心の開放感」が得られないといったことにもなりかねません。

こういった場合、視線より高い位置に空や木々の見える窓を設けたり、視線より低い位置で、外の空き地の景色を切り取るなど、外の情報を整理して映し込む必要があるでしょう。その点「天窓」なら、プライバシーに配慮しながら光を取り入れられます。しかし、天窓には注意点があります。夏は室内が高温になりやすく、また雨漏りなどのリスクもあるため、慎重に検討する必要が。また、窓を多く設けるとその分の壁面が減り、家具の配置に制約が出るということも覚えておくとよいでしょう。

まとめ

こうして見てきたように、開放感とは単なる面積によるものではなく、空間と空間のつながりや外の景色とのつながり、余白の作り方、広さや色のコントラストなどの手法を駆使して、視線や動線の流れが連なるように組み立てることによって生み出せるものです。コンパクトな住まいであれば、その分より多くの工夫が必要になりますが、こうしたアイデアやこだわりが家の個性になり、愛着にもつながります。

また、心地よい住まいを作るためには、漠然とした「開放感」ではなく、本当に自分たちが望んでいるもの、大事にしているものは何なのかを絞り込むことも大切です。

日頃から建築事例を見たり、SNSなどで流れてきた好きな空間を集めたりして、「なぜ惹かれたのか」と考えてみましょう。「好き」が明確になった上で、設計士と話すことができれば、コンパクトな住まいの中にも、開放感と暮らしやすさを兼ね備えた、理想の空間が実現できるはずです。

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