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住宅をカスタマイズするためのシンポジウムレポート

Customize YOUR House! ~住宅をカスタマイズするためのシンポジウムレポート~ 2012年12月12日(水) 大和ハウス工業 東京支社 2F コンベンションホール、D'sスマートハウス

スマートハウスの開発や市場が活況を呈していますが、スマートハウス=電気代を節約できる家、というイメージは限られた一面にすぎません。これからの住宅のスマート化(情報化)を考えるシンポジウム「Costomize Your House!」(ソニーコンピュータサイエンス研究所、大和ハウス工業、ヤフー三社共催)を2012年12月12日(水)、大和ハウス工業東京支社で開催。大学や企業の専門家による講演、参加者との質疑応答、エンジニアや学生たちによるデモセッションを通じて、スマートハウスの可能性を探りました。

「スマートハウスの現在と今後(国際展開もふまえて)」 慶応義塾大学 梅嶋真樹氏

今、スマートハウスは非常にブームですが、この5年間、私が一貫して取り組んできたことが2つあります。
1つは、スマートハウスを活用して新しいサービス市場を強引でもいいから作ろうということ。もう1つは、異なるメーカーのさまざまな機器をつなげる際に、公知な標準インターフェースでつなげることです。
具体的に、HEMSの標準規格としてECHONETLiteの採用を官民連携で決めました。また、接続する機器の動作検証を行うための施設を、一色先生がおられる神奈川工科大学キャンパス内に立ち上げました。今後は必ず、ECHONETLiteを搭載したさまざまな機器が増える状況になると思います。本日は、そうした「スマートハウスのアジアへの展開」についてお話をしたいと思います。
私は慶応大学でベンチャー経営法の授業を担当していますが、この授業は、インターネットを使って世界14カ国、28大学の学生にライブ中継されています。すると、現地の技術やビジネス動向の話については、私よりも現地の先生が言ったことの方が正しい、といった事態が起こる場合があります。肝心なのは、学生からそれを指摘された時、「ごめん、私が言ったことは去年の話で、インドネシアの先生が言ってることの方が正しいよ」と間違いを認められること。教える側も頭の中身を変えていかなくてはなりません。大学も最先端でいるためには、「先生は常に正しい知識を持っていて、それを学生に教えてあげる」というマインドセット(概念)を崩さなくては。そうでない限り、研究者でさえも生き残っていけないのです。
また、スマートハウスの話をすると「キラーアプリケーションが必要だ」とよく言われます。その時に私は、いつもこう答えます。「だったら、あなたが作ったらどうですか?」と。スマートハウスの標準化が進めば、アプリケーションは誰でも開発できるようになります。開発するのは、家電メーカーや住宅メーカーでもなく、お客様自身かもしれません。現に、それは既に携帯電話の世界で起こっていて、うちの学生でもアンドロイドやiPhoneアプリを作る会社を立ち上げています。「キラーアプリケーションがなければ動けない」というのは、もはや古い概念なのです。
先日、インドネシアを訪問し、両国の政府関係者を交えて意見交換をしましたが、現地の方々の日本に対する信頼感は厚く、スマートコミュニティを日本と一緒にやろう!という話になりました。同時に言われたのが「日本と一緒にやるとつまらない」ということです。これが現地の、特に今後主力となる若手技術者の本音です。
「Design by us, not design by you(デザインするのは我々で、あなた方ではない)」、これは先方の政府の偉い方に言われた言葉です。現在、私はスマートハウスの国際展開に向けて最前線を飛び回っていますが、この概念を受け入れ、我々のマインドセットを変えない限り、10年後、私たちはアジアですべてのポジションを失うでしょう。しかし、考えを少し変えることができれば、スマートハウスの波に乗り、新しいサービス市場を創ることが可能だと思います。

慶応義塾大学 梅嶋真樹氏

スマートハウスの現在と今後(国際展開もふまえて) プレゼンイメージ

「実験住宅『お茶ハウス』と生活コンピューティング」 お茶の水女子大学 椎尾一郎氏

私は、IBMの基礎研究所に勤務した後、ジョージア工科大学で「アウェアホーム(Aware Home)」というユビキタスの実験住宅に携わっていました。1990年代からユビキタスコンピューティングの時代になるのではと言われており、当時、フロリダ大学のゲーターハウスなどアメリカの大学がこぞって実験住宅を建てていました。帰国後、日本の大学にもそういう住宅が欲しい、と造った実験住宅が「お茶ハウス」です。

お茶ハウス http://ochahouse.com/

生活に結びついたユビキタスコンピューティングの時代になると、住宅が非常に重要になります。梅嶋先生が「スマートハウスにはキラーアプリケーションが重要と言われた」とお話しされていましたが、まさにそれを探すのが私たちの研究室のテーマです。では、その答えは?と聞かれると心苦しいのですが、「お茶ハウス」をはじめ、こんな可能性があるだろうという事例をお話しします。
カジュアルなコミュニケーションという点では、家具にコンピュータを取り込むことで、さまざまな可能性が広がると考えています。
例えば、「お茶ハウス」にあるタンスには、引出しの中にカメラが付いていて、入れた物の映像が、別のタンスの引出し内にある液晶ディスプレーに映る仕掛けになっています。実際に、名古屋の実家で一人暮らしをしている私の母親と、当時小学生だった私の子どもに使ってもらい好評でした。
また、離れて暮らす家族をサポートする仕組みとして、離れた家の家電製品が同期するというコンセプトがあります。例えば一方の家で明かりをつけたり、テレビのチャンネルを変えると、もう一方の家の家電製品も同じ動作をします。単身赴任のお父さんとその家族、遠距離恋愛のカップルなど、コミュニケーションとして使えると考えています。
また、ユビキタスは、エンターテインメントにおいても可能性を持っています。
その一例が、掃除を楽しくするためのアプリケーションです。掃除機にプロジェクターが付いていて、プロジェクターに映ったゴミのキャラクターを吸い込んでいくと、ついでに床もきれいになります。他にも、食べ物を切ると効果音が出て料理を楽しくしてくれる包丁、フォークの握り方次第でさまざまな音が出る「食べテルミン」という音シリーズ、植木鉢が庭を走り回るロボットペット、Twitterと連動して起こしてくれる目覚まし時計など、いろいろなものを開発しています。
このように、ありふれた普通のコンピューターを家の中に取り込んでいくことで、キラーアプリケーションの可能性が増えていくのではないでしょうか。

お茶の水女子大学 椎尾一郎氏

実験住宅「お茶ハウス」と生活コンピューティング プレゼンイメージ

「HTML5で広がる新しいホームIT」 神奈川工科大学 一色正男氏

今日は、私がW3C(World Wide Web Consortium:Web技術の標準化と推進を目的とした、企業、大学・研究所、個人などによる国際的なコンソーシアム)のアジア代表をしているということで、W3Cとしての「HTML5」の話をします。W3Cは、簡単に言うとブラウザの仕様を決める団体です。
HTML5の仕様書には、1つだけ皆さんに関係する特徴があります。今まで、ブラウザというのは物を見る、文書を読む、写真を見る、動画を見るための仕様書でした。しかし、HTML5というのはちょっと違っていて、JavaScriptが入っていて、プログラムが動きます。この劇的な変化を日本のメーカーの人がどこまで理解してるかが心配なのですが…。HTML5は、ブラウザがアプリケーションのプラットフォームになっています。これにより上位レイヤーのビジネスが楽になりますが、そのためのインターフェースを今、世界中で決めているのです。これが、皆さんが関係しているパソコンや携帯電話にも絡んできますよ、というのが本日お伝えしたい一番のテーマです。
さて、その仕様書の一つにウェブソケットというものがあります。Webはリアルタイム性が無い、遅いと言われていたのですが、HTML5は一度つながってしまったら、その後は高速に処理しようという技術なのです。サーバー側とクライアント(ブラウザ)側にJavaScriptが仕込んであり、 Webの処理が従来の5分の1くらいに高速化します。一番いいのは、サーバーの負荷が軽くできるところです。
今日、皆さんがHackされているような家電や設備機器も、最後はWeb interfaceでいろいろな人やモノが活用する時代になるかと思っております。この時に重要なのは、いかに上手につないであげるかということです。今日のシンポジウムで「機器同士が連携する事がサービスだ」という話がありましたが、まさしくそういう時代になったかと感じます。今、W3Cにweb platform organaizationというサイトができており、世界中の教育コンテンツとか、Webに関わるすべてを突っ込もうとしてます。皆さんのご協力で充実させていきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

web platform organaization http://www.webplatform.org/

また、2012年11月に、HEMSの日本での普及をサポートしようということで、神奈川工科大学に認証センターをオープンさせました。自分の作った機器のミドルウェアが正しいかどうか評価でき、その結果をECHONETコンソーシアムに持っていくと認証されるようになっています。1階は試験設備で、2階は各社がどんな商品を作っているかわかる展示コーナーです。ホームページから申し込めるようになっていますので、ご興味のある方はぜひ一度ご見学ください。

HEMS(ECHONET Lite)認証センター http://sh-center.org

神奈川工科大学 一色正男氏

HTML5で広がる新しいホームITプレゼンイメージ

「サービスプラットフォームとしてのスマートハウス」 大和ハウス工業 吉田博之

本日、私がお伝えしたいのは、ただ一つ、「スマートハウスはサービスプラットホームだ」ということです。 今まさにスマートハウスブームですが、多くの方が太陽光と蓄電池とHEMSを搭載した家、と認識されているかと思います。しかし最近、「スマートハウスって、そもそもそんな話だった?」という疑問を各方面から耳にします。これは、現状のスマートハウスが電力網を中心に考えられており、スマートハウスはそこにつながるノード(端末)の一つとして捉えられているからではないでしょうか。住宅会社である当社としては、「それはおかしい、スマートハウスは生活者を中心に考えるべきだろう」といろいろなところで主張しています。確かにエネルギー問題は重要ですが、防犯や健康、教育といった生活する上でのさまざまな課題の一つにすぎません。
そもそも「スマートハウス」を単純化すると汎用的な通信制御システムであると言えます。中心にコントローラーがあり、右に接続するデバイスがあり、左にユーザーインターフェースであるiPadのような表示端末があり、それらの間でのインプット、アウトプットのやり取りで多様なサービスを提供するというものです(図1)。デバイスに電力計測装置を接続すればHEMSになりますが、防犯センサーをつなげば防犯システム、健康機器をつなげば健康管理システムになります。ですから、太陽光とか蓄電池とか「何を搭載しているか」で定義するのではなく、あくまでサービスを提供するためのプラットフォーム(基盤)と捉えることが重要と考えています。
では、その課題は?というと、いかに具体的なサービスを増やすかに尽きます。プラットフォームですから、その上でサービス提供していただける方々がいなければ価値がありません。
当社ではそれを促すために、住宅APIという開発ツールを提案しています(図2)。REST通信というHTTPでコマンドを送るとXMLの返答が返ってくるもので、ホームページを作る感覚で簡単にアプリケーションを開発できます。適当な写真を用意して、こうした簡単なコード(プログラム)をコピペすれば、例えばお子様の写真を使って電気の使いすぎを注意してくれるようなHEMS画面を簡単に作ることができます。ここまで簡単ではないですが、当社のHEMS(D-HEMS)は、この住宅APIを使ったサービスの一つで、ユーザーの好みにあったさまざまなHEMSにカスタマイズできるように設計したのがポイントです。

大和ハウス工業 吉田博之

サービスプラットフォームとしてのスマートハウス プレゼンイメージ

図1

図2

「HackにおけるOpen化の取り組み」 ヤフー株式会社 武居秀和氏

講演のタイトルからして「スマートハウス」が入っていなくて、アウェー感を感じていますが、「面白いこと言ってるね」くらいの感覚で聞いてもらえればと思います。今回は、私がヤフーで担当している開発イベントを紹介させていただきます。
「Hack Day(ハックデイ)」を聞いたことがある人はいますか?これは、ヤフーが開発したイベントで、面白いもの、イケてるもの、かっこいいと思うものを一日24時間で開発して、1分半から2分のプレゼンで紹介し、評価を受けるというものです。ヤフーでは、2007年から年に1回開催しており、毎回50組から75組くらいのチームが参加して、これまで500作品ぐらいのHack、いわゆる面白作品が生まれています。もちろんその中から新しいサービスも生まれています。
何のためにやっているかと言いますと、まずは「創造性の向上」です。普段の業務から離れて、自分が面白いと思うものを作るのが目的です。次に「開発力の向上」です。ヤフーにはWebエンジニアが2000人近くいますので、その中で切磋琢磨することで開発力を向上させようということです。あとは「交流」です。社内のエンジニアが互いに交流することで、アイデアの交換や開発に関する情報交換ができます。
これまでの作品の中にはスマートハウスっぽいものもありました。椎尾先生が紹介されたものに似た作品も出てきましたが、実際には家を建てられないため、ミニチュアの模型かWeb上でしか細工ができませんでした。
今年はヤフーが大きく舵を切り替えまして、「爆速」と呼んでいますが、世の中に数ある課題をITを使って解決していく「課題解決エンジン」であり続ける、という社長発表がありました。そこで、今まで「Hack Day」として取り組んできたものを、さらに密度を上げていこうと「Hackathon(ハッカソン)」を開催しています。今まではWebの世界で完結するものが多かったんですが、せっかくなのでもっとオープンにやろうということになり、今回このイベントに呼んでいただいたというわけです。Webの世界から飛び出して、実際にリアルな家をHackできるということで、私たちもとても楽しみにしています。これまではWeb上でしか物を動かせなかったのですが、今回、実際にリアルな場で物が動くという点がすごくワクワクするところなんです。ですので、スマートハウスの未来に少なからず弊社も貢献できるのではないかと思っています。
この後のデモセッションで、弊社の指折りのエンジニアが取り組んだHackの事例について3チームがデモをしますので、ぜひご覧になってください。

ヤフー株式会社 武居秀和氏

HackにおけるOpen化の取り組みプレゼンイメージ

「ECHONET Liteを使った家電プログラミング」 ソニーコンピュータサイエンス研究所 大和田茂氏

最初に、これまで私がやってきた事についてお話しします。5年くらい前に「萌え木」という植物に萌えることを目的にした育成ゲームを作りました。これは、植物が成長する様子を24時間撮影し、その成長に合わせて植物の妖精キャラが成長し、最後に植物とともに妖精を食べて終わりというものです。あまりにも斬新すぎて、途中でちょっと自信がなくなっていましたが…(笑)。その後、せっかくソニーにいるんだからと、家電に拡張した「萌家電」を開発しました。擬人化された家電のキャラが勝手にテレビのチャンネルを替えたりして、人間の邪魔をするというものです。マイクに向かって「こらっ!」と叱ると、みんなワーッと逃げていくという、それがやりたかっただけなんですが…。(会場笑い)
これを経済産業省の担当官に見せたら、なぜか大和ハウス工業の吉田さんを連れてきたんです。吉田さんから聞いた、あらゆる家電をAPIで制御する住宅APIのコンセプトに感激しまして、昨年、D'sスマートハウスを使って萌家電を一緒にやりました。アプリは豪華声優陣のフルボイスになったため、いろんなところで報じられて非常にインパクトがあったように思います。
2011年には、そのエンジン部分を「Kadecot」というアンドロイドアプリで公開しました。今、公開している萌家電では、ソニーのブルーレイと通信して録画コンテンツをお勧めしてくれるもの、エアコンのキャラが好きな温度設定にしておくと好感度が上がってコスチュームが増えるもの、節電すると夜空の星がたくさん見えるようになるものなどがあります。
そんな時に「ECHONET Lite」との出会いがありました。規格書の資料もシンプルで、対応機器も増えているということで、萌家電を作るには使うしかない!と思ったんです。既に 公開されてますが、「OpenECHO」というものを今年の初めから開発しています。これは、 住宅APIのようにHTTPを使いたかったので、先ほどの「Kadecot」とは違って、Webサーバーになっています。私の継続的な興味として、誰でもソフトを作ることができるプラットフォームを開発したいという思いがあり、そういったSDKをブラウザの中に置く開発をしています。コンテンツを再生する部分をHTMLファイルに書いて、アンドロイドで動くホームサーバーにアクセスし、ECHONET のノードとしていろんな機器が見えてくるわけです。これは神奈川工科大学のプロジェクトで作っているもので、「Processing」 からOpenECHO機器オブジェクトを作れます。ここから住宅APIを呼び出すこともできますし、赤外線のコントローラーを呼び出して、あたかもECHONET 機器であるように見せることもできます。

ソニーコンピュータサイエンス研究所 大和田茂氏

ECHONET Liteを使った家電プログラミングプレゼンイメージ

先日、こうしたシステムを使って、椎尾先生と「Home Hacker’s Workshop」を開催しました。これは、Kadecot関連の開発システムを学生に触ってもらい、一日かけて何かアプリを作ってもらうイベントです。短時間で想像もつかなかったアイデアがたくさん出てきて、若い人の力って素晴らしいな、と思いました。今後はこうしたワークショップの継続開催やKadecotサーバーの公開などを通じて、家をカスタマイズする人を支援していきたいと考えています。そして、誰に何と言われようと萌家電を作り続けていきます。(会場笑い)

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