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コラム<リノベーション>
孫が遊びに来たくなる工夫とは?
安全で心地よい住まいをかなえるリフォーム
小さな孫に、安心して遊びに来てほしい……。孫も自分も安全で快適に過ごせて、家族の交流が深まる住まいの工夫について、シニア世代の住宅を数多く手がける一級建築士の吉田紗栄子さんと、長年保育に携わり自身も3人の孫がいるこどもコンサルタントの原坂一郎さんに、それぞれの視点から語っていただきました。
住まいの安全に配慮すべき点は子どももシニア世代も同じ
──子どもやシニア世代にとって安全で快適な住まいとはどのようなものでしょうか?
原坂さん:子どもにとって快適な家とは「楽しい」「うれしい」「面白い」と感じる場所。一方、安全な家とは、子どもの室内における不慮の事故の原因である「落ちる」「転ぶ」「ぶつかる」「(ドアなどに)挟む」「やけど」の5つが起こらないように配慮された場所だと考えます。この5つは、子どもが病院に運ばれる理由として長年上位にきています。
それから、特に3歳未満の場合は「誤飲(物をつまらせる)」にも気を付けたいですね。高齢になると目が見えにくくなり、しっかり掃除をしているつもりでも大きなホコリなどが落ちていることがあります。それを口に入れてしまう、なんてことも起こりがちです。
吉田さん:シニア世代も安全に配慮すべき点は同じですね。高齢になるとつま先が上がらなくなり、すり足歩行になるので、カーペットの1cmの厚みでもつまずいてしまうんです。
目が見えにくくなっているから、家具にぶつかることも。動作が鈍くなるので、危険な物をさっと避けにくいんです。そういう意味で、シニア世代にとって快適な住まいとは、体が不自由になってもバリアフリー設計がされていて、今まで通りに暮らせる場所といえるのではないでしょうか。
原坂さん:バリアフリー設計の家なら、親も安心して子どもを連れてこられます。
吉田さん:大切なのは、なるべく若いうちから、最終的にどんな暮らしをしていきたいか考え、逆算して計画を立てていくこと。部分ごとにではなく、まずは家全体について考えた方が良いと思います。
特に75歳以降の後期高齢者になると、ぐっと不自由なことが増えてきますし、リフォームをするならお金もかかります。シニア世代にとって安心・安全な住まいに整えていった結果、若い世代の方にも気に入ってもらえる事例も多いんですよ。
原坂さん:わが家も、義父のために取りつけた手すりのおかげで、私たちも孫もぐっと暮らしやすくなりました。バリアフリーな家は、誰にとっても快適なことを実感しています。
古い家には段差や急な階段など危険な場所がいっぱい
キッチンはメリハリのある色使いに。直感的な収納で誰でも使いやすく
──古い家で子どもやシニア世代が過ごすリスクを教えてください。
原坂さん:先ほど挙げた事故の原因が起こりそうな場所は、ベランダ、階段、廊下、ドア、浴室、台所、玄関。古い家ほど浴室に段差があったり、ベランダに踏み台になりそうな物が置かれていたり、階段の一段が高かったり、ドアの建て付けが悪くて指を挟みやすかったり……。玄関も古い家は上り框が高いので転落の危険があります。
吉田さん:シニア世代にとっても玄関の安全性や使いやすさは重要です。玄関が不便だと外出がおっくうになり、出かける機会が減ってしまいますから。
原坂さん:あとわが家がそうなのですが、玄関を開けたらすぐ道路という家も多いですよね。マンション暮らしの孫はドアを開けると飛び出す習慣があるので、必ずいったん止まって左右を確認してから外に出るよう伝えています。
吉田さん:周囲の環境も大切ですよね。それから、古い家はトイレが暗くて狭く、部屋から遠いことが多いため、特に夜間は転倒やつまずきの危険があります。家全体の断熱性も低く、夏は暑くて冬は寒いため、体への負担も大きいものに。
ほかにも段差が多い、階段に手すりがないなど、家全体に安全面での配慮が足りない点も問題です。
階段は「下りるとき」に注意。事故防止グッズも上手に活用を
──古い家で安全に過ごすにはどのような対策を取ると良いでしょうか?
吉田さん:階段にはぜひ手すりをつけてほしいですね。昔の階段は幅が狭いので、両側に手すりをつけると物を運ぶときに邪魔になることも。その場合は、下りるときの利き手側につけてください。段差はバリアフリーにするか、それができない場所には色をつけるなどして段差の存在を明確にし、必要なら手すりをつけるといいと思います。
原坂さん:ただし、手すりの高さがちょうど子どもの目線に来てしまうことがありますよね。
吉田さん:ぶつかったときのケガを防ぐため、角を丸くするなどの工夫が大事です。
原坂さん:子どももシニア世代も、階段は上がりかけや下りる直前の踏み外しが多いので、わが家では万が一のために階段下に厚めのカーペットを敷いています。階段の滑り止めシートの使用もおすすめです。
また、ドアの指挟み防止グッズや家具の角の保護グッズなどは100円ショップで手軽に手に入るので、危険な場所を見つけたらすぐに対策を取ることが大切です。
吉田さん:一度、お子さんの目線になって家を見てみると良いかもしれませんね。
原坂さん:私は保育士時代から「子どもの半径3m以内には必ずケガの原因が2つある」という意識を持ち、常に注意してきました。3つ以上見つけようとすると大変ですが、2つ探すくらいなら習慣化しやすいんです。紙一枚でも子どもは滑ってケガをすることがあるので、孫が遊びに来るときはいつも大掃除です(笑)。
吉田さん:人が遊びに来るとなるときれいに片付けるので、結局それが自分の安全で快適な暮らしにつながります。気軽に人を呼べる家にしておくことも大切ですね。
孫に「楽しい」と感じてもらう工夫と、みんなが心地よく過ごせるリフォームを
──孫や自分が快適に過ごすための工夫やリフォームのアイデアを教えてください。
原坂さん:孫に「楽しい」「うれしい」「面白い」と感じてもらう工夫としては、まず孫の家にはないおもちゃや絵本を用意すること。ちょっとしたものでもいいので、玄関に置いておくと第一印象が良くなり効果的です。孫の好きなキャラクターのポスターや家族写真を飾るのもおすすめ。娘・息子家族にも歓迎の気持ちが伝わるはずです。
吉田さん:それなら実践しやすそうですね。
原坂さん:物的環境だけでなく、優しく遊んでくれる祖父母の存在や、虫捕りなどそこでしかできない体験ができることも大切ですね。子どもはやることがないと走り回るなどしてケガをすることがあるので、集中して何かに遊べる環境をつくることは安全にもつながると思います。
吉田さん:リフォームでは、庭にスロープ付きのウッドデッキをつくると、玄関を使わずにバリアフリーで出入りでき、車椅子やベビーカーにとっても便利です。
また、普段は4人がけのテーブルで、孫たちが来たときは6~8人がけに広げられる伸長式のテーブルもおすすめ。それから、間仕切りリフォームをして、普段は引き戸で仕切り、孫たちが来たら引き戸を開放して空間を広く使うのもいいですね。
原坂さん:わが家も伸長式のテーブルにしたのですが、すごく便利。いつも孫たちが来るとテーブルを広げて使っています。リフォームでは複層ガラスと床暖房を取り入れました。複層ガラスで断熱性が高まり、夏は冷房の効きが良くなりましたし、冬は家がとても暖かくなって心まで温かい気持ちに。安全面はもちろん、快適に過ごせて家族みんなが幸せになるリフォームはお金に代えられない価値がありますね。
吉田さん:無垢材の床もおすすめですよ。夏は調湿効果でベタつきにくく、冬は暖かく感じます。滑りにくいのもポイントです。
リフォームは、早く行えばそれだけ恩恵を受ける期間が長くなり、年単価のコストも安くなります。できれば50代くらいのうちから、シニア世代になっても安全で快適に暮らせる住まいについて、間取りから動線、温熱環境まで、家全体のプランをじっくり考えてみるといいのではないでしょうか。
リブネスでできること。
「不動産売買」「リフォーム」「賃貸管理」「空き家管理」「相続」「資産運用」まで、大和ハウスグループのネットワークを生かし、お客さまのお住まいに関するお悩みの解決をお手伝いいたします。
プロフィール
吉田紗栄子(よしださえこ)さん

有限会社ケアリングデザインアーキテクツ 一級建築士事務所代表。一級建築士、バリアフリーコンサルタント。身体障がい者や高齢者と建築との関わりをテーマに、住宅や福祉施設などの設計に携わる。共著に『バリアフリー住まいをつくる物語』(三輪書店)など。
原坂一郎(はらさかいちろう)さん

KANSAIこども研究所所長。関西国際大学教育学部非常勤講師。23年間の保育所勤務を経て、現在はこどもコンサルタントとして、子どもや子育てに関する研究・執筆・講演を全国で行う。TV出演も多く、『男の子のしつけに悩んだら読む本』(すばる舎)など著書も多数。
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写真:Getty Images
