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コラム No.108-6

CREコラム

急拡大するESG投資(6)ESGと不動産投資【1】

公開日:2021/02/26

投資の世界でESGに対する積極的な関与が求められていますが、不動産投資はESGとどのように向き合えばいいのでしょうか。不動産はそれ自体で価値を生み出すものではなく、不動産が存在する地域の環境との関係の中で資産価値が生まれるものです。環境や社会と密接に繋がっているだけに、不動産投資は他の投資に比 べてESGと強い関係があるように見えます。

世界潮流に適合する不動産投資

日々の暮らしや経済活動の中で、環境問題や社会的課題に無関心でいられる時代は過ぎました。21世紀の現代は、地球温暖化を抑制し、人権を尊重することは当然のことになっています。
投資の世界においてもESG(環境・社会・統治)に対して積極的に関与するという世界の潮流に適合していくことに議論の余地はありません。

とりわけ不動産投資は投資の中でも中長期的な展開を求められるので、ESGに関して積極的に関与すべきではないでしょうか。不動産投資はオフィスやマンション、工場や倉庫、駐車場、商業施設などの賃貸収入と一定期間後の物件売 却が収益源です。収益を上げるためには自然災害から物件を守り、入居者に対してより快適な空間を提供し、立地している地域コミュニティとより良い社会的な関係を築くことが求められます。

図1:我が国における「ESG不動産投資」のあり方として検討すべき仮説

出所:国土交通省・第1回ESG不動産投資のあり方検討会資料「ESG不動産投資に関する基本的な考え方(素案)

ままた、不動産開発会社や不動産仲介会社、不動産ファンドといった不動産投資に関連する全ての企業・団体は、不動産オーナーや物件のある地域社会さらには自社の株主に対してコンプライアンス(法令順守)に則って行動することが必要です。これからは、不動産投資でESG(環境・社会・統治)に配慮しないと、入居者やオー ナー、地域社会、株主からの共感も得られず、物件評価が低下する可能性があります。つまり、投資リスクは高まり、リターンを減らすことにつながりかねません。

まだまだ少ない国内のESG不動産投資

しかし国内の不動産投資において、ESG投資はまだまだ立ち遅れています。日本サステナブル投資フォーラムの「サステナブル投資残高アンケート調査結果」(2020年11月25日公開)によると、資産ごとの投資残高で不動産の占める割合はわずか約2.3%。昨年比約20.5%の増加ですが、それでも株式や債券、ローンなどの金融資 産と比べるとシェアの違いは一目瞭然です。国内にESGに適合した魅力的な物件や少ないことや、国が進めているESG投資における認証制度の基本設計が遅れていることなどが背景にあると思われます。

図2:資産別のサステナブル投資残高(2020年:商品名、単位:億円、%)

NPO 法人 日本サステナブル投資フォーラム「サステナブル投資残高アンケート 2020 調査結果」より作成

国土交通省は2017年に「ESG投資の普及促進に向けた勉強会」を開催。さらに2019年には「ESG不動産投資のあり方研究会」で、中間とりまとめである「我が国不動産へのESG投資の促進に向けて」を公表するなど、ESG不動産投資の促進に注力しています。ただ、ESG投資に対する評価方法は歴史が浅く、ESG投資の国際的な調査団体はあるものの世界の各地域を十分網羅しているわけではなく、統一性に欠けるきらいがあります。また評価軸が乱立し、デファクトスタンダードは確立されていないのが現状です。
わが国では政策的にはESG不動産投資における促進するための中心軸を模索している段階にあるようです。

マテリアリティと情報開示

投資はリスクとリターンの2つの軸をもとにした経済行為と考えられてきました。しかし、前述し たように、ESGを考慮に入れない不動産投資は広範な支持を得られないだけでなく、中長期的にみて投資損失を被ることにもつながりかねません。もともと不動産はそれ自体だけで価値が決まる資産ではありません。不動産の規模や用途にかかわらず、地域社会との良好な関係を築くことが共通の大前提です。わが国でESG不動産投資を促進するには、ESG評価軸の決定版の登場を待つのではなく、ESG不動産投資の担い手が主体的にESGの考え方を導入し先導していく ことが求められるのではないでしょうか。

ESG不動産投資では、不動産の開発や運用の担い手である企業や団体が環境・社会にもたらすさまざまな影響を踏まえたうえで、何が重要なのか(マテリアリティ)を特定し、情報開示に努めることが重要だと「我が国不動産へのESG投 資の促進に向けて」の中間とりまとめで、国交省は指摘しています。ESGの要素を含む非財務情報には、財務情報だけでは得られない貴重な情報が少なくないはずです。

図3:不動産へのESG投資の枠組み(ESG投資とSDGsの関係の例)

国土交通省「ESG不動産投資のあり方検討会 中間とりまとめ資料」より

ESG不動産投資の情報開示において非財務情報は一定の量があり、比較しやすい性質であることが求められます。上の図は不動産分野におけるESG投資の枠組みを示したものです。個別不動産では社会と環境への対応が中心になり、不動産会社や不動産ファンドでは情報開示とガバナンス(企業統治)がESGの軸になります。

地域社会・経済への寄与では、大型商業施設などの開発によって地方で新たな雇用が創出されることで地域社会への貢献が生まれます。
健康性・快適性の向上は、オフィス環境の改善に向けて2019年から認証制度「CキャスビーASBEEウェルネスオフィス」がスタートしており、快適で執務しやすいオフィス環境の普及に期待がかかっています。

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