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コラム No.39-2

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今仲清の事業承継シリーズ(2)事業承継は健康なうちに行い、数年間は伴走する

公開日:2017/11/30

高齢になって社長を後継者に譲り自ら会長に就任したにもかかわらず、大きな設備投資や取引先との重要案件、役員人事などの意思決定の権限を手放さない経営者が見受けられます。会社経営の能力が高く順調に経営実績を上げており、その能力の高さは誰もが認めています。ただ、高齢にもかかわらず自らが重要な意思決定を行っているため、社内外の誰もが会長に万一のことがあった場合の会社の行く末を心配しています。創業社長に多く見られるケースですが、社長の最後の仕事は後継者の育成であり、これを怠っているということに他なりません。

社長の最後の仕事は後継者育成

A社では、創業者が形式的に社長を譲りましたが、実際には会長として経営の意思決定を全て行っており、取引先、金融機関などからもそのように見られていました。創業者が亡くなり事業を受け継いだ社長は対外的な信用がなく、取引条件や資金調達に支障が生じました。こうした事態にならないよう、事業承継は現経営者が健康なうちにできるだけ早めに着手する必要があります。

後継者育成と会社の内外への周知

後継者育成に注力せず、社内外に認知される後継者がいない段階で、実質的な経営者に相続が発生すると、信用不安が発生する恐れが高くなります。経営を承継する社長の経営力が未知数ですから、不安に思われても仕方ありません。さらに、会社の経営成績が不振で、財務内容が悪化している状況で経営承継が行われると、取引先に与信枠を縮小されたり、金融機関に運転資金の融資枠を絞られることもあります。長い時間をかけてしっかり後継者を育成し、その過程で内外に後継者候補であることを周知させ、権限を委譲し、後継者候補が徐々に取引先や金融機関などの信用を得ていく必要があります。

後継者から委譲を求めるとトラブルになる

後継者の側から現経営者に権限委譲を要求すると、現経営者から「私はまだまだ元気だ。私を引退させる気か」などと、トラブルになる可能性が高くなります。実際に、後継者が金融機関に現経営者の株式の移転について相談に行ったところ、現経営者が反発して逆に銀行に対して株式売却によるM&Aの相談をするなど、泥沼化する例もあります。

できるだけ早く後継者教育を開始する

後継者を決めるのは難しいものです。しかし、早くから後継者候補に対してさまざま教育を行い、社内に後継者として認知させることが重要です。ある程度の規模の企業になると、複数の後継者候補を競わせながら育成することも可能ですが、中小企業においてはかなり困難です。現経営者が元気なうちに後継者教育を始め、実際に権限委譲を始める際には数年間伴走していく必要があります。この際、留意しなければならないのは、指揮命令系統を段階的に後継者に一本化することです(表1参照)。

後継者育成のポイント

  • ・後継者育成は重要な仕事
  • ・後継者教育を始めるのは早ければ早いほどよい
  • ・事業承継は健康なうちに行い、後継者とは数年間は伴走する
  • ・指揮命令系統は一本化する

事業承継を先送りしない

事業承継の着手を先送りしたため、後継者を確保できなかったケースもあります。2016年2月に実施した帝国データバンクの調査からわかるように、中小企業経営者の高齢化が進んでいる中、実際に準備に着手している企業は70代、80代の経営者すら半数に満たない状況です(図1参照)。

図1:経営者の年齢別に見た事業承継の準備状況

出典:帝国データバンク

アンケートに見る事業承継のベストタイミング

事業承継のタイミングは、それぞれの企業の歴史、先代経営者の考え方、業種等、置かれた環境や状況に応じて異なります。図2は事業承継時の現経営者の年齢別に、事業承継を受けた時期のアンケート結果です。これによると、「ちょうど良い時期だった」を回答している割合が最も多い年齢層は40~49歳でした。40歳未満で事業承継を受けた経営者でも69.1%が「ちょうと良い時期だった」と答えていますが、21.6%が「もっと遅い時期の方が良かった」と答えています。
また、2009年に実施された(株)日本政策金融公庫の「中小企業の事業承継に関するアンケート」(集計対象は事業承継後に経営革新に取り組んだ従業員19人以下の中小企業)によると、「ちょうど良い時期だった」と回答した現経営者の事業承継時の平均年齢は39.6歳でした。

図2:事業承継時の現経営者年齢別の事業承継のタイミング

資料:中小企業庁委託「中小企業事業承継に関するアンケート調査」(2012年11月(株)野村総合研究所)
注)事業承継のタイミングについて、「分からない」と回答した企業は除いている

出典:中小企業庁「2013年版中小企業白書」

後継者の思いよりも遅い実際の事業承継時期

図2で「ちょうど良い時期だった」と回答している現経営者の事業承継時の平均年齢は43.7歳であり、(株)日本政策金融公庫の調査では39.6歳でした。最近5年間の現経営者の事業承継時の平均年齢が50.9歳であり、実際には後継者が「ちょうど良い時期だった」と考えている時期より事業承継が遅れ気味であることがわかります。

社長業を実践で学ばせる

43.7歳で事業承継した現経営者は、20歳代からさまざまな後継者教育を受けているはずです。最近多い後継者教育は、子会社やM&Aで子会社化した会社の経営を任せる方法です。特にM&Aによる子会社化の場合には、「本社の企業風土の定着」「不採算部門の原因発見と改善策実施」など重要な課題について、リーダーシップを発揮して実行しなければならず、その過程で先代経営者が後見をして経営力を磨くことができます。ケーススタディからわかるように、事業承継は現経営者が健康なうちにできるだけ早くから着手することが必要です。

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