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コラム No.6-1

CREコラム

CRE戦略とは何か(1)企業価値を向上させる

更新日:2019/09/30
公開日:2016/03/25

企業が保有する不動産資産

国土交通省の「法人土地・建物基本調査」(平成25年)によると、平成25年1月1日現在、土地を所有している法人は67万法人、建物を所有する法人は80万9千法人となっており、土地の所有よりも建物を所有している法人数の方が約20%多くなっています。
土地・建物所有状況別にみると、土地・建物とも所有している法人は60万2千法人(法人総数の29.4%)、土地のみ所有している法人は6万8千法人(法人総数の3.3%)、建物のみ所有している法人は20万7千法人(法人総数の10.1%)であり、土地・建物双方とも所有している法人が多くなっています。また、土地・建物のいずれも所有していない法人は116万6千法人(法人総数の57.0%)となっています。意外に多くの企業が不動産資産を持っていることがわかります。

土地・建物の所有状況別割合

国土交通省平成25年法人土地・建物基本調査より作成

法人の中で、土地を所有する法人は67万法人なので、総数に対する比率は32.8%となりますが、この割合は少しずつ減少しています。土地を売却したり、別の用途に活用したりする法人が増えているのでしょう。
ちなみに、「会社以外の法人」は17万7千法人で、土地所有率は57.9%と高くなっています。ただし、平成20年に比べると1.1ポイント低下しています。「会社以外の法人」とは、社会福祉法人、学校法人、医療法人、宗教法人などで、どちらかといえば土地の所有を前提とした事業活動を行う法人が多いため、土地所有率が高いようです。

土地所有法人率(平成5~25年)

国土交通省平成25年法人土地・建物基本調査より作成

経営戦略の中核、CRE戦略

法人が保有する不動産を利活用するCRE戦略は、経営戦略の中核をなすといえるほど、大きな課題となっています。CREとは「Corporate Real Estate」の略で、CRE戦略とは、経営に効果のある不動産の活用戦略ということになります。これまで日本のビジネスにおいては、不動産に特化したような業種業態でもない限り、CREが注目されることはあまりありませんでした。しかし、現在では、不動産活用を経営戦略の一環としてとらえ、不動産を効果的に活用することによって企業価値を向上させていくという考え方に変わってきています。
経済の発展とともに、土地の開発や有効活用は全国に広がりました。その結果、企業が所有する土地(CRE)の持つ価値も大きく変わり、企業の発展のために効果的に活用する必要性が出てきたのです。
とはいえ、不動産を有効活用し、企業価値を向上させるのは簡単なことではありません。たとえば、不動産は持ったほうがいいのか、借りたほうがいいのか、というシンプルな問題に対しても、一概に決められません。「どうすれば効果的にビジネスの成果を生み出すことができるか」という観点から戦略を選択する必要があります。

企業価値向上

CRE戦略の目的をひと言でいえば、企業価値を向上させることにあります。
現在、不動産に関する事業価値の算出は、DCF法(Discounted Cash Flow Method:割引キャッシュフロー法。将来事業が生み出すキャッシュフローを現在の価値に割り引いた額とされている)が主流です。わかりやすくいえば、現在の100万円と10年後の100万円では価値が違いますし、10年後までにはさまざまなリスクがあります。こうした将来にわたるリスクまで踏まえたうえで、企業価値が最大化するような不動産の有効活用を図らなければなりません。短期的な利益や財テク的な不動産活用ではなく、不動産が生み出す中長期的な企業価値、企業の成長という経営理念や経営戦略に基づいていなければCRE戦略とはいえません。
経営資源とは、ヒト、モノ、カネ、情報といわれますが、企業が保有する不動産も貴重な経営資源のひとつです。むしろ、財務上では比重も高く、不動産の持つ立地や条件がメリットになっていることは少なくありません。

企業保有の不動産とひとことでいっても、いくつかに分類することができます。
まず、「事業のために不可欠な不動産」、たとえば本社ビル、支店・営業所、工場、物流センターといった事業の利益を生むために活用されているものがあります。次に、「直接ではないが間接的な効果を上げている不動産」があります。たとえば、社宅や寮、別荘などの福利厚生施設などがあげられます。そして、「事業には関係なく保有している不動産」たとえば何も使っていない遊休地や駐車場などがあります。
事業用の不動産であれば、本業のさらなる生産性向上のために何ができるのか、直接事業に関係はなくても、社員のモチベーションや人材確保のために必要な活用法は何か、遊休地であれば、その立地において最適な活用法は何かについて、将来のキャッシュフローを含めて考える必要があります。企業不動産を快適で効果的なワークスペースとして活用することで、イノベーションを生み出しやすい環境整備や従業員満足へとつながる施策を実施することも可能でしょう。

CRE戦略によって企業不動産の有効活用がうまく進めば、不動産の利用価値が上がり、前述したDCF法などによる測定でも経営の安定、事業価値の向上につながっていきます。
また、収益を生み出さない、あるいは遊休地になっている不動産を売却し、その収益を別の事業に投資することも企業価値向上のひとつの方法です。

さらに、会計上においても、世界で国際会計基準(IFRS)の採用が進んでいます。この基準では公正な不動産評価が求められますから、保有不動産についても、難しい判断が必要とされる場合も出てくるでしょう。 このようにCRE戦略は、経営戦略においても欠かせない問題となっています。

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