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境界の基本のキ

「境界とは何か」なかなか難しい問題です。生活の中でそう何度もお目にかかるものではないため、「境界で揉めている?」とたまに他人から聞くことがあっても、実際に自分事になることはないので、もし関わることになったら専門家に頼めばいいかなと思っている方も多いのではないでしょうか。

しかし最近、土地の境界に関するトラブルは増えてきています。隣地所有者との関わりになるので、揉めることを避けたいがため、境界のことをよく知らずに納得してしまい、後で後悔する方の相談もよくあります。境界について知っておくべき法律等は多々ありますが、すべてを知ることは簡単でありません。境界に関する資料を確認したり、家族に相談したりすると、今までご自身の財産がどのように守られてきたか知ることができます。また、不動産を知ることはご自身の人生を知ることになります。

今回は、境界の基本のキを知り、この先ご自身に起こり得るかもしれない境界問題を自分事として考えてみてはいかがでしょうか。

境界とは?

土地の境界は、不動産登記制度により、土地の範囲を決められた境界があります。また、隣り合う土地との境界が明らかでなく、争いがある場合は所有者同士で話し合うことにより定めることもできます。しかしながら、土地は元来自然な状態では連続してつながっていますが、きれいな区画ばかりではありません。例えば木の塀とか目で見えるものに囲まれている場合には、この辺が境界だろうなと見当がつきますが、塀等で囲まれていない場合でも、必ずどこかに境界は存在しているのです。土地には基本的には目に見えるものや目に見えないものを含めて境界があります。

例えば、隣地と高さが異なる土地の上に建物がたっていて、使用している土地が擁壁の上などの場合は、境界が上にある(図1のC線)と判断されるときがあります。そうすると、この建物を支える擁壁が隣地となりますので、この擁壁は建物と同じ土地の所有者ではないことになります。ですが、擁壁を他人の土地に築造する事は考えにくいものです。すると、この擁壁自体は自分の土地の上にたっているものであるから、土地の境界は擁壁の下の部分(図1のA線)までになります。ただし、擁壁を共同で築造した場合等は擁壁の中心の部分(図1のB線)が土地の境界になることもあります。このように土地の境界は見た目とは違うところにある場合があります。

図1

境界はいつからあるのか?

境界はいつからあるのか?あるとすれば、昔からあるのでしょうか。それとも途中からできたのでしょうか。住宅地だけでなく、田、畑、山林にも境界はあります。その土地を最初に登記したときにできた境界を筆界といいます。また分筆登記をしてできた境界もあります。例えば、父親の持っている土地を長男と次男が約束の上で区画割りして使っている場合の境界や大地主の土地に何軒もの貸家が建っている場合にも境界があります。未登記の土地に境界がないか、あったとしてもはっきりしていないと適正な面積や境界がわからないので売却や建物を建てるときに困ることがあります。そのような土地、隣地との境界がわからない場合には、ブロック塀や門扉などの外構工事ができない場合や、建築する建物の面積や間取りが考えていた通りに設計できない等問題がおこる可能性があります。また、手続きに時間がかかり計画通りに売却や建築計画が進まないこともあります。よって早期に境界を確認して登記をすることが必要となってきます。また未登記の物件には気をつけましょう。

境界とはどのようなものか?

一般的に境界にはいくつもの考え方があります。不動産登記法では、法務局に初めて登記された時にできた境界を「筆界」と定められています。具体的には明治時代の地図を地租改正で台帳を整備し、図面を作成したとことが最初といわれてます。その後、改組、耕地整理、区画整理など、公共的事業で作り替えられたものや、大規模開発宅地造成による分譲住宅または宅地の分筆登記(登記簿上の一つの土地を複数の土地に分けて登記をする手続き)によって初めて定められた境界を筆界といいます。長い間の通行や水の流れによって少しずつ地形が変化をしたり、水害や災害、それに伴う復旧工事により移動があったのを登記していないけれども、人々の認識の中には定着している境界とは明らかに違うものです。

さらに公法上の境界が筆界であるのに対して、私法上の境界は、所有権界といいます。クランク状やS字状の地形が土地の利用形態に合わないからと個人的に土地を交換してしまうことがあります。自分たちが元気で仲良くお付き合いしているうちに、分筆・交換等の登記をしておけば良いのですが、忘れてしまったりすると、必要性が生じていざ売却しようかと言うときに争いの元になりかねません。

この所有権界という境界は双方の当事者にとっては有効ですが、どちらか片方だけが元に戻してほしいとか都合の良い部分だけ取ってしまうようなことがあると争いが起こります。争いにならないように事前に準備をし、問題が起こらないように現地で境界について確認し書面化するなど、トラブル防止のために身近な専門家に相談しておくことが大切です。

図2

境界を確認するには?

境界を確認するための大まかな流れを見ていきましょう。
まずは現地で境界標を探してみましょう。ブロック塀や擁壁があればその付近にあるはずです。はっきりした区切りがなくてもなんとなく土地の使用範囲がわかるようでしたら、探したことに価値があります。それから、法務局で土地・建物登記事項証明書を請求します。広範囲に所有者だけを調べたいときは要約書でも良いのですが、登記所備付地図法17条地図、または改正後の法14条地図、いずれもない時は地図に準ずる図面として公図の写しを入手しましょう。

また、地積測量図や建物図面があれば写しを請求しましょう。これらは有料ですが図面と登記事項の物件を照合するのに必要です。登記事項や公図を調べて、もう一度現地に行くといろんなことがわかります。

まず、入手した地積測量図との寸法チェックをします。書かれた境界標が見当たらない場合もあるべきところを丹念に探すと見つかることが多いです。植木鉢を除いたらコンクリート杭があったり、設置されている自動販売機設置の鉄板の陰にあったりすることがあります。

図3

とりあえず現地を見に行ってみる。公図や図面を見てあれこれ考えるよりも現場をいちど見てみることが重要です。図面に境界標が記載されていない場合でも、現地に境界標が設置してあったりすることもあります。

境界は決められているけれども、隣の建物の屋根が越境していることもあります。皆さんは隣の建物の屋根が越境しているような土地を購入したいと思うでしょうか。

また、ブロック塀がどちらの土地のものかどうかで揉めることもありますし、土地所有者が共同設置したコンクリートブロック塀が誰のものなのかで揉めたこともあります。中心が境界だというのに半分出ているなと、言う方もいます。木塀もブロック塀にもご自身の土地のほうに支えを設けるということも知っている必要があります。道路後退線のように、行政や町内の決まり事があるかどうかも調べましょう。自分の足と目で確かめる事はとても大切なのです。

図4

まとめ

境界問題は、隣地や行政により思いもよらない時に話が起こることもあり、なかなか事前に準備ができるものではありません。しかし、境界がどんなものなのかを知っておくことで、不動産を管理、売却するときや購入するときに、とても役立つ知識になります。

たとえば、

  1. (1)境界がわからないと土地の面積が計算できない。
  2. (2)境界が確認できないと土地の価値が低い場合がある。
  3. (3)境界が確認できないと隣地や行政との手続きに費用と時間がかかる。
  4. (4)境界を確認することがストレスになる。

というようなことが起きたときでも、知識があれば対応できます。

ご自身の土地の「境界」が今どのようになっているのかを事前に家族と一緒に確認しておくことはとても大切になります。また、不動産を購入する場合でも「境界」を意識してみることが、とても重要になります。ダイワハウスの分譲住宅および宅地は、「境界」がしっかりと確認できているものとなりますので、安心・安全な不動産の購入をご検討いただけると思います。

また「境界」のことは、隣地や地域の人との関わりもあり、一人で解決できる問題ではありません。拙速に対応したことで将来、後悔することもありますので、お一人で悩まれることなく、ご心配の方はダイワハウスの担当者へ一度ご相談してみてください。

(参考文献)
西本孔昭 『不動産境界入門』 住宅新報社3訂版
土地家屋調査士制度70周年記念 『土地・建物Q&A』 埼玉土地家屋調査士会
芥川基『境界をめぐるトラブル解決法』 増補版 自由国民社
末光祐一.『Q&A 隣地・隣家に関する法律と実務』日本加除出版(株)

執筆者

山田 一博

~測量・登記~ 京都やまだ事務所 代表・土地家屋調査士

20年土地家屋調査士業界で役員を続けおり「相続・空き家等の不動産に関する問題を【境界を解決】する手法でお客様に提案したい」という思いから土地家屋調査士による士業連携サービスを行う事務所を開設。現在は学会等にて研究をする傍ら、執筆、セミナーを行う。特に相続不動産のコンサルティング、売却、生前贈与に関する相談を得意とする。

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