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人生100年時代に向けて~ライフプランと老後資金~

人生100年時代と言われてあなたは何を思いますか。「そんな先のことは分からない」、「今から考えなくてもいずれ考えれば」…でしょうか。それとも「たぶん自分はそんなに長生きしないから」と根拠なく考えるのをやめたりしていませんでしょうか。

有名なゆでガエル理論に「カエルは、いきなり熱湯に入れると驚いて逃げ出すが、水に入れてゆっくり水温を上げていくと逃げるタイミングが分からず、最後には死んでしまう」というものがあります。これはゆっくりと進む変化にはなかなか対応できないといった、もののたとえとしてよく使われますが、寿命はまさに少しずつ右肩上がりでじわりじわりと延びており、結局準備ができぬまま、老後を迎えてしまうことになりかねません。

今から人生100年時代を想定し、先ほどのカエルのようにタイミングが分からず気づいたら身動きが取れなくなったとなる前に、さまざまな側面から計画を立ててみましょう。

平均寿命と健康寿命

平均寿命と健康寿命という考え方があります。現在の日本は世界的にみてもこの平均寿命が上位で、令和2年平均寿命の年次推移の表によると男性81.64年、女性87.74年となっています。年次推移表を見れば分かる通り、平均寿命は年々延びています。

表1:平均寿命の年次推移

(年)

和暦(西暦)
1947年(昭和22年) 50.06 53.96
1950年(昭和25年)~1952年(昭和27年) 59.57 62.97
1955年(昭和30年) 63.60 67.75
1960年(昭和35年) 65.32 70.19
1965年(昭和40年) 67.74 72.92
1970年(昭和45年) 69.31 74.66
1975年(昭和50年) 71.73 76.89
1980年(昭和55年) 73.35 78.76
1985年(昭和60年) 74.78 80.48
1990年(平成2年) 75.92 81.90
1995年(平成7年) 76.38 82.85
2000年(平成12年) 77.72 84.60
2005年(平成17年) 78.56 85.52
2010年(平成22年) 79.55 86.30
2015年(平成27年) 80.75 86.99
2016年(平成28年) 80.98 87.14
2017年(平成29年) 81.09 87.26
2018年(平成30年) 81.25 87.32
2019年(令和元年) 81.41 87.45
2020年(令和2年) 81.64 87.74
  • 平成27年以前は完全生命表による。
  • 昭和45年以前は沖縄県を除く値である。

出典:厚生労働省 令和2年簡易生命表の概況より

表2:平均寿命 国際比較 上位3国

第1位 スイス 2019年 81.9年 第1位 日本 2020年 87.74年
第2位 日本 2020年 81.64年 第2位 韓国 2019年 86.3年
第3位 シンガポール 2020年 81.5年 第3位 シンガポール 2020年 86.1年

出典:厚生労働省 プレスリリース( 令和2簡易生命表)より

多くの方はこの平均寿命をもとに、これからのライフプランを考えたり、老後のお金について計画したりと、平均寿命は老後の生活を考えるための指標となっています。しかしながら、あくまでもこれは今現在の数字であって、今後平均寿命はさらに延びる可能性がありますので、現平均寿命をベースに考えるのは注意が必要でしょう。

また、指標にはもうひとつ健康寿命というものがあります。 厚生労働省では寿命の考え方に健康寿命というものを取り入れており、健康寿命はその文字の通り、不健康ではない健康的な生活を送ることができる期間を指しています。いくら長生きしても不健康な期間が長ければ、思うように過ごせないだけでなく、お金もかかり、周りに負担をかけてしまうこともあるでしょう。人生100年時代に向けて、この先はいかに健康寿命を延ばすかが大切になってきます。

表3:平均寿命と健康寿命の推移

資料:平均寿命については、2010年につき厚生労働省政策統括官付参事官付人口動態・保健社会統計室「完全生命表」、他の年につき「簡易生命表」、健康寿命については厚生労働省政策統括官付参事官付人口動態・保健社会統計室「簡易生命表」、「人口動態統計」、厚生労働省政策統括官付参事官付世帯統計室「国民生活基礎調査」、総務省統計局「人口推計」より算出。

出典:厚生労働省 令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える

老後の生活費

男性の平均寿命の例で考えてみましょう。男性の平均寿命が71.73年だった1975年(昭和50年)では、60歳で定年を迎えた後から平均寿命まではわずか11.73年間でした。社会人として働くことを終了して老後というステージに入っても、平均寿命まで11.73年間の計画をすればよかった時代に比べて、現在の平均寿命は81.64年ですので、もし60歳で定年を迎えたとすれば、21.64年間という期間となります。

この期間をお金で考えてみましょう。もし老後が11.73年間だとすれば、年間300万円の生活費として3,519万円分の年金と貯蓄が必要ですが、21.64年間だとすればその金額は6,492万円となる計算になります。さらに100年時代を考えるとその期間は40年間となり、計算上は1億2,000万円が必要となるでしょう。

平均寿命 60歳リタイアからの期間 ×300万円(生活費)
1975年男性 71.73年 11.73年間 3,519万円
2020年男性 81.64年 21.64年間 6,492万円
人生100年時代 40年間 1億2,000万円

平均寿命が延びるということは、必要な生活資金が増えるということにつながります。老後の計画を立てるときには、人生100年時代を念頭に置くことが、今後より一層必要となってくると思われます。そのためには老後になっても少しでも収入を増やす、もしくは老後の出費を減らすといったことを考えることと、社会人のうちに蓄えを増やしておくこと、そしていつまでも健康でいるといった、これらのことが大切になってくるでしょう。

もちろん元気なうちは働き続けるという選択肢もありますが、仕事を辞めてしまえば収入は増えません。そこで少しでも長く働き、年金受給開始時期を繰り下げることで年金の受取額を増やす方法があります。

年金の繰り下げ

人生100年時代を念頭に国も制度を整え続けており、現在原則65歳から支給開始となっている年金制度は、希望すれば60歳から70歳の間でご自身の就労状況等に合わせて自由に受給開始時期を選ぶことができます。

また、2022年(令和4年)4月から適用される制度改正にて、2022年(令和4年)4月1日以降に70歳に到達する方(1952年(昭和27年)4月2日以降に生まれた方)対象で、60歳から70歳までの選択可能となっている年金受給開始時期について、その上限を75歳に引き上げることが決定しています。また、繰り下げすることによる増額率は1月あたり、プラス0.7%(最大プラス84%)となります。

例えば65歳で受取開始の年金を66歳開始に繰り下げた場合、その増額率は12カ月×0.7%=108.4%となります。

※2022年(令和4年)4月から適用される年金受給開始時期の引き上げと増額率

参考:繰上げ・繰下げによる減額・増額率
減額率・増額率は請求時点(月単位)に応じて計算される。

  • 繰上げ減額率=0.5%×繰り上げた月数(60歳~64歳)※繰上げ減額率は令和4年4月1日以降、60歳に到達する方を対象として。1月あたり0.4%に改正予定
  • 繰下げ増額率=0.7%×繰り下げた月数(66歳~75歳)
請求時の年齢 60歳 61歳 62歳 63歳 64歳 65歳 66歳 67歳
減額・増額率
(改定後)
70%
(76%)
76%
(80.8%)
82%
(85.6%)
88%
(90.4%)
94%
(95.2%)
100% 108.4% 116.8%
68歳 69歳 70歳 71歳 72歳 73歳 74歳 75歳
125.2% 133.6% 142% 150.4% 158.8% 167.2% 175.6% 184%

出典:厚生労働省HP 年金制度改正法の概要

現在65歳からとなっている年金支給開始年齢の引上げは行わないのでご注意ください。

老後の出費を減らす

人生100年時代の老後資金について考えるにあたっては、老後の出費を減らすことも検討しなければなりませんが、出費のなかでも占める割合の高い住宅費をいかに抑えられるかということがポイントになってくるでしょう。

特に賃貸住宅の場合では、その金額は長生きすればするほど変わってきます。例えば、月間家賃8万円の賃貸住宅を85歳まで借りた場合と長生きして100歳まで借りた場合との比較をしてみましょう。

1)毎月の家賃が8万円の賃貸住宅を60歳から85歳まで借りた場合

(家賃の値上げは含まれません)

家賃8万円×12カ月×25年間=2,400万円
更新料 2年更新で1カ月分の更新料がかかる場合
12回×8万円=96万円
合計2,496万円

2)100歳まで長生きして60歳から100歳まで借りた場合

家賃8万円×12カ月×40年間=3,840万円
更新料 2年更新で1カ月分とした場合 20回×8万円=160万円
合計4,000万円

当然ではありますが、賃貸住宅の場合では、長く住めば住むほど多くの家賃が必要となります。

一方、持ち家の場合でも同様に、長く住めば住むほど税金や修繕費、マンションの場合にはさらに管理費がかかります。戸建の場合には、マンションのように長期の修繕計画といったものがないため、自身で建物を管理しなければならず、その修繕費はその建物と管理の状況によって、購入後20年後、30年後に大きく差が出ます。

建物について安かろう悪かろうでは、年月を重ねるうえで結局高いものになってしまったとならないように、購入時は先々のことも考えて検討することが望ましいと言えます。 このように、住宅費は出費のなかでも占める割合の高い金額になってくるため、早い時期から将来を見据えて計画を立てることが必要となってくると言えそうです。なかなか人に相談しづらい住宅やお金の悩みについては、経験豊富なプロに相談することをお薦めいたします。

まとめ

人生は選択の連続です。そして人生が長くなればなるほど、身の回りにはいろいろな変化も訪れることでしょう。その時にあわてないようにいくつかの選択肢をしっかり用意して、これから訪れるであろう人生100年時代に対応できるように、今から準備しておきたいものです。そしてそんな時代はもうすぐです。

執筆者

山田健介

FPplants株式会社 代表取締役社長

住宅メーカーから金融機関を経て「お客さまにお金の正しい知識や情報をお伝えしたい」という思いからFPによるサービスを行う会社を設立。現在は全国のFPを教育する傍ら、執筆、セミナーを行う。特にライフプラン作成、住宅、保険に関する相談を得意とする。

※掲載の情報は2021年8月現在のものです。内容は変わる場合がございますので、ご了承ください。

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