
「健康」という価値を生む研究開発(WEB限定コンテンツ)
総技研25周年記念トークセッション(WEB限定コンテンツ)
先駆的な取り組みで、住宅を起点に心身の健康を考える
小池 昭久
こいけ あきひさ
(入社31年目)
新領域技術研究部廣畑 友隆
ひろはた ともたか
(入社35年目)
研究統括室玄 晴夫
げん はるお
(入社27年目)
建築技術研究部インタビュアー 渡辺 将平
わたなべ しょうへい
(入社15年目)
信頼性センターインタビュアー 片岡 夏海
かたおか なつみ
(入社4年目)
新領域技術研究部
健康をコンセプトにした斬新な戸建住宅
渡辺本日は「健康」のエキスパートである先輩方に、過去・現在・未来の研究開発について語っていただきたいと思います。大和ハウス工業が「健康」の研究開発を始めたのはいつ頃でしょうか?
小池はっきりと「健康」を打ち出したのは、2005年に発売した創業50周年記念の戸建住宅「センテナリアン 健康百彩」ですね。100歳になっても健康な高齢者でいられる家、がコンセプトでした。ただ健康といっても体だけじゃない。心の健康、家の健康、経済的な健康など50の提案・100のアイテムを集めたんです。例えば「インテリジェンストイレ」は尿糖や血圧、体脂肪などを測定して生活習慣の改善を促します。「外張り断熱通気外壁」は家中を断熱材で保温してヒートショックを防ぐ技術として採用しました。空気清浄装置の「換気浄化ef」も、このときがデビューでしたね。
渡辺センテナリアンは私が入社した年の商品ですが、初めて見たときは斬新すぎて(笑)。すごい大きな池があるんですよ。「これがハウスメーカーの家なのか?」と驚いたのを鮮明に覚えています。
創業50周年記念住宅「センテナリアン 健康百彩」
小池あぁ、それは水盤ですね。水面に反射した太陽の光が、リビングの天井にゆらゆら映ってリラックスできる「ゆらぎ」を表現したんです。今だったらLEDで簡単にできそうですが、当時は水盤しかなかったから。他にもありますよ。大阪中の店を回って選んだ最高級のマットレスや布団で、究極の快眠ベッドを作ったんです。社員には飛ぶように売れました(笑)。いずれにしても「健康」という言葉を「住宅」の文脈で初めて使ったのはセンテナリアンじゃないでしょうか。当時も最先端でしたが、今でも通用する健康技術や、「軟水器」のように最近ようやく浸透し始めたアイテムも先駆けて取り入れましたから。
トイレから始める新しい住まい方提案
片岡「インテリジェンストイレ」は廣畑さんが開発されたんですよね。
廣畑発売は2005年ですが、そこに至る経緯がありまして…。1994年に総技研ができて、私が入所したのは翌年です。その頃は「高齢化社会対応住宅」が一つの大きなテーマでしたので、上司に頼んで、医療研究者や介護の理学療法士、福祉機器の工業デザイナーさんたちと高齢者の生活や動作を調べる研究会を立ち上げました。その先生たちから「トイレで排泄量を測れないか」と相談されたのがきっかけです。その後、医療機器技術を持つ企業とインテリジェンストイレを開発することに。ちょうど「生活習慣病」という言葉がメディアに出始めた頃でもあり、「家族で〝健康見守り〟を」と呼びかけて、住宅メーカーとして新しい「住まい方提案」に取り組んだ次第です。
片岡私は元々、建築専攻なので医療・福祉の知識修得に苦労しています…。
在宅健康チェックシステム「インテリジェンストイレ」

廣畑他の研究領域の研究者たちとの交流は面白いですよ。解決へのアプローチや次の時代の課題も見えてきます。昔、イギリスの医療保険システムを研究する先生に誘われ、現地へ同行したことがあります。すると当時のイギリスでは、かかりつけ医や在宅医療、高齢者住宅などの先進的な制度が当たり前に動いていたんです。それで「日本も10年、20年後にはイギリスのような考え方が普通になるだろう。じゃあ住宅は何ができるんだ?」と、住宅がどこへ進むべきか大きな課題として意識するようになりました。課題に対して自分の専門分野で何ができるか考えるとワクワクすると思いますよ。頑張ってください。
コミュニケーションや幸福感というプラスの発想
渡辺「健康」には心の健康もありますね。玄さんの専門分野である「音」の出番です。
玄大和ハウス工業は、音の研究を約50年前からやっていたんですよ。創業は1955年だから、創業10年目ぐらいから。上階や隣の住戸の生活音を抑える「防音」です。トイレ排水管の遮音を最初に始めた時は、他社にも瞬く間に広がりました。
小池大和ハウス工業には「業界初」が結構ありますよね。健康、環境、防犯、制震…。PRが下手だから後発の会社に先に言われて地団駄を踏む(笑)。
玄ははは。まぁ、そうやってストレスになる音を減らす・防ぐ研究開発を長くしてきたんですが、でも、家って「人に楽しみを与える場」でもあってほしいじゃないですか。それで、今まで培ってきた防音技術を集約して、音楽を楽しめる快適防音室「奏でる家」を2006年に発売しました。
快適防音室「奏でる家」

渡辺玄さんは研究所員なのに、注文が入ると自分で設計図面を引いて。当時、うちのチーム長だったんですが、全国の建築現場を駆け回って席にほとんどいない(笑)。賛否両論もあったと思いますが、それでも信念を貫けたのは?
玄お客さまが本当に満足してくださるのがわかるからです。防音室を選ぶお客さまは「防音室があるから、この家を建てる」という方が本当に多い。趣味を生涯全うしたいと思う方たちばかりだから、私もやるしかない! でも、このやり方でいいと確信できたのは、お客さまや事業所からの感謝の声が研究所に届き出してからですよ。それまでは全く評価されず(笑)。
廣畑研究者は、この道で正しいのか迷いながらも、「やりたい」「自分のつくったものが世に出てほしい」と思う気持ちが強いですからね。
玄確かに。家って器ですから、私たち研究者がその器に「体の健康」や「心の健康」といった特徴を持たせる使命を背負っているんです。
小池難しいのは「健康」って家の購入動機にはなりにくいことなんですね。家を建てるのは大体、健康なときなので、健康を意識しない。けれども、インテリジェンストイレは「家族のコミュニケーション」、奏でる家は「幸福感」という価値を生みます。「健康」の研究開発は、これまで騒音や汚染物質など健康を害するものを排除する「マイナス」の考え方が主流でしたが、これからは「プラス」の発想が欠かせません。さらに将来はIoTで生活の中から集めたビッグデータを、どうサービスや商品につなげるかを考えていかなくては。私たちは今、時代の転換点に立っているんですね。

大和ハウス工業
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