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連載:5分でわかる!サステナブルニュース 気になる疑問、調べてみた カーボンニュートラル社会へ向けた"環境のフジタ"の提案。付属棟「続」が開く可能性

連載:5分でわかる!サステナブルニュース

カーボンニュートラル社会へ向けた"環境のフジタ"の提案。付属棟「続」が開く可能性

2025.12.25

    未来の建物って、どんな姿をしているんだろう。都心のビル街でも、木の香りや温もりを感じられて、当たり前に脱炭素や自然共生、資源循環がなされている——。そんな"少し先の当たり前"を先取りした場所が、2025年9月に神奈川県厚木市の山あいに生まれました。

    フジタの技術センター付属棟「続(つづく)」です。

    柱・梁から床、外壁、内装、歩道に敷き詰められたブロックまで。ここにあるのは、従来の建設の枠を超えて、素材そのものが環境価値を持つ世界です。

    2026年4月から、GX-ETS(排出量取引制度)が本格的に義務化されることで、企業は「どれだけCO2を出すのか」をもう他人事にできなくなります。カーボンニュートラル社会の実現に向けた経済・社会システムの変革が、法制度や市場メカニズムを通じて本格化する重要な年となります。

    その"答えのかけら"を集めるための場所として誕生したのが、この「続」でした。

    「自然を 社会を 街を そして人の心を 豊かにするために フジタは たゆまず働く」を企業理念に、長年にわたって環境技術を磨き続けてきたフジタの次の一手が凝縮された付属棟「続」の全貌とは? フジタのGX戦略部部長の菅原玲子さんに、その背景と狙いを伺いました。

    木×コンクリートのハイブリッド構法が実現する、126tのCO2削減

    小田急線・本厚木駅から車で約20分。丹沢の山々を望む自然豊かな地に、フジタの技術センター付属棟「続」は佇んでいます。その最大の特徴は、木質を前面に押し出した構造にあります。外装も内装も、至るところに木材が使われています。これは単なるデザイン的なこだわりではありません。

    「ゼネコンとして建物でGX(グリーン・トランスフォーメーション)の推進やカーボンニュートラルをどう実現するか考えた時、最初は『鉄を使わない建物を考えたらどうなるんだろう』という議論から始まりました」と菅原さんは振り返ります。

    株式会社フジタ GX戦略部部長 菅原玲子さん。

    「検討を重ねる中で、やはり木だろうと。弊社は工場でコンクリート部材を製作して、現場で組み立てるプレキャスト(PCa)工法についてはかなり自信を持っています。その強みと木造建築を掛け合わせて、カーボンニュートラル社会に向けて、どのような提案ができるかを考えました」。

    そこで開発されたのが、鉄筋コンクリートの頑丈さと、木材のCO2吸収や炭素固定機能を兼ね備えた木質ハイブリッド構法「FWdPC®構法」でした。中高層ビルへの適用も可能で、木の温もりも生み出す新たな資材として、「続」ではふんだんに用いられています。

    木材で覆われた鉄筋コンクリート柱(木巻きPCa柱)と集成材(木板を積層した材)の梁、天井面が木材となる 鉄筋コンクリート床版(木-鉄筋コンクリートPCa合成床版)などで構成されます。

    「FWdPC®構法」は在来のRC(鉄筋コンクリート)構法と比較すると、材料由来のCO2排出量は25t減少します。また、木材には吸収したCO2を「炭素として固定」する機能もあります。この木材の炭素固定量101tを合わせると、合計126tの削減効果があり、建物全体で見ると、RCで建てた場合と比べて15%のCO2削減を実現しています。

    さらには、この構法により大幅な省力化が実現でき、1サイクルあたりの工期は14日から9日に圧縮され、加えて工種、人工ともに減っています。

    木の炭素固定量を加味した場合のCO2排出量比較です。木質ハイブリッド構法の付属棟では、在来の鉄筋コンクリート造(RC)より15%削減。

    歩道のブロックに花壇まで。随所に散りばめられた新技術

    それだけではありません。「続」には次世代の「カーボンニュートラル建築」の実験場としての仕掛けが随所に施されています。

    例えば、建物の眼前の通路に敷き詰められたブロック、これはフジタとトクヤマ、トクヤマアートブロックLABOが共同開発した「バイオ炭インターロッキングブロック」という新技術です。木質バイオマスガス化発電の副産物のバイオ炭を混ぜ、実質CO2排出量をゼロにするとともに、資源の有効活用を実現しています。

    セメントなど材料由来の温室効果ガス排出量の実質ゼロを実現。(写真下)断面の黒い部分がバイオ炭です。

    「わかりやすく言えば環境配慮型の歩道用舗装材です。中に炭素を固定することでカーボンニュートラルを実現しました。もちろん、ブロックとしての強度はお墨付きです」。

    他にも「続」の入り口の天井には、デザイン性の高い建材一体型太陽光発電パネルが使用され、そのすぐ横には在来種植物による壁面緑化が見られます。

    その先に目を向けると、在来種が植栽された花壇が見えてきます。この花壇はレインガーデンになっており、さらにフジタで開発したバイオ炭混合土壌「ピクソイル®」を使用することで、炭素を貯留しています。

    「炭素貯留型レインガーデンといって、雨水浸透機能を高めて周囲(非レインガーデンの緑地、車路、駐車場など)からの雨水を集めて浸透させます。豪雨時の表面水が敷地外に流れ出すことを抑制する効果があります」。

    他社の技術も取り入れることで、さまざまな先進的な取り組みが施された「続」ですが、なぜフジタは環境技術の研究や開発にこれほどまでに力を入れているのでしょうか。

    環境保全のDNAを受け継ぐ企業文化

    フジタの高い環境への意識や取り組みは、今に始まったことではありません。1989年には地球環境室を設置し、1997年には環境マネジメントシステムに関する国際規格「ISO14001」を業界で初めて取得しています。

    菅原さんが入社した約25年前、同社は土壌に空気を通して自動車の排ガスのNOx(窒素酸化物)を吸収・分解する「EAP」という大気浄化システムを開発していました。

    「車の排ガス規制が厳しくなって、今ではEAPの需要はなくなりましたが、当時は大きな社会問題でした。時代の課題を常に捉えて研究・開発する。それがフジタの文化なんです」と菅原さんは話します。

    しかし、順風満帆だったわけではありません。環境部門は、肩身の狭い思いをしたこともありました。

    「時代の先を行くからこそ、部署として理解されないことも多かったですね。環境部も一時期は『法令遵守第一』『違反しないように』と、"守りの環境"が中心で、他部署からは面倒な部署だと思われていたと思います」。

    それでも、1986年に制定された企業理念の「自然を 社会を 街を そして人の心を 豊かにするために フジタは たゆまず働く」では、「自然」が最初にあげられており、社員の共通言語となっていました。

    「“環境のフジタ”と言いたい、そこで力を抜いてはいけない」という思いが、組織を支え続けてきました。

    転機は2022年に訪れました。DX(デジタル・トランスフォーメーション)に続く次の変革として、GXへの取り組みが社内で本格化します。週1回の勉強会からスタートし、2023年度にはGX戦略部として独立、2024年9月には全社的なGX戦略が承認されました。

    30年以上にわたって、フジタ社内の中に脈々と「環境」の遺伝子は息づいてきました。その象徴として「続」は誕生しましたが、完成して終わりではありません。むしろ、ここからが本番ですと、菅原さんは続けます。

    「続」の一部外装。直射日光の受光量や雨掛かりなどを考慮し、適切な耐候性の外装保護材を選定。部位ごとに異なる保護材を採用したのは、外装保護材の耐久性の比較検証を行っていくためです。

    「ここで得られたデータが次の開発につながっていきます。そうして研究結果を活用しながら次世代につなげていく。フジタの思いを『続ける』、持続可能な社会を『続ける』。そんな願いを込めて『続』という名前なんです」。

    多面的な評価の重要性。CO2だけでは見えないもの

    菅原さんは、環境価値の評価について重要な指摘をします。

    「CO2排出量など数値だけを指標にすると見逃す部分もあります。もちろん数字の削減目標は重要ですが、振り回されすぎないことが大事です」。

    例えば、「続」の壁の一部に使用されている内装ボードは、フジタで使わなくなった作業服から再生したアップサイクル製品です。このボードの製造工程は繊維を輸送したりして、製造工程が増えるため、他の仕上材に比べて、計算上は大幅なCO2削減効果は期待できません。ただ、廃棄物削減や資源循環の観点で見れば「計算上は測定されない環境負荷の削減」があります。

    さらに敷地内の在来種の葉や枝を圧密加工し、仕上げています。

    「脱炭素、自然共生、資源循環。この3分野は相互に関係し合っています。一つの側面だけ見ないで、多面的に評価することが、環境の価値や付加価値を考える上で大切なんです」。

    2026年4月からのGX-ETS義務化を前に、フジタはさまざまな答えを模索し、社会を牽引しています。木質構造による炭素固定、多面的な環境価値の追求、そして人の心を豊かにする空間づくり——。「環境のフジタ」のDNAは、新しい技術と融合しながら、次世代へと受け継がれていきます。

    未来の景色を、ともに

    大和ハウスグループも「生きる歓びを、分かち合える世界」の実現に向け、様々な取り組みを進めていきます。

    株式会社フジタの環境経営方針や環境への取り組みは、こちらよりご覧いただけます。

    "高"環境

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    株式会社フジタの「"高"環境レポート2025」は、こちらよりご覧いただけます。

    "高"環境レポート2025

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