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連載:未来の旅人 Z世代の就活が社会を変える。人と企業を「価値観」でつなぐBaseMeの可能性

連載:未来の旅人

Z世代の就活が社会を変える。人と企業を「価値観」でつなぐBaseMeの可能性

2025.4.30

    「本当に自分に合った仕事って何だろう?」

    大学3年生で迎える就職活動では、多くの学生がこんな疑問に直面します。人気ランキングや世間の評判、あるいは給与や福利厚生といった情報は簡単に見つけられても、本当に自分に合っているのかわからない……。入社後「価値観」が合わずに早期退職を招いてしまうと、学生・企業双方の損失は計り知れません。

    こうした課題に挑むのが、株式会社アレスグッドが運営する就活プラットフォーム「BaseMe(ベースミー)」です。Z世代キャリア支援プラットフォームとして、企業とのマッチングを「価値観」を軸に実現する仕組みが注目を集めています。同社代表・勝見仁泰さんは「就職活動のルールは、65年間ほとんど変化していません。ここにメスを入れない限り、日本社会は変わりません」と断言します。どのような狙いでBaseMeを立ち上げたのか、そして就活シーンの課題やこれからについて話を伺います。

    大手企業は、なぜBaseMeに集うのか

    2025年3月から、2026年卒の就職活動が本格的に始まりました。しかし、4月時点で内定率は約6割、半数以上の学生が、すでに卒業後の進路が決まっています。一方、2021年に大学を卒業し、新卒で就職した人のうち3年以内に離職した人は34.9%※1。必ずしも離職や転職はネガティブなものではありませんが、過去15年間で見るともっとも高い数値です。

    ※1:厚生労働省の調査より。

    「就職活動で大切なのは、表面的な条件ではなく、お互いの価値観がマッチするかどうか。そこがズレてしまうと、結局ミスマッチが起こってしまうんです」。

    勝見さんの言葉どおり、BaseMeで企業名とともに目にとまるのが、「DE&I」や「サステナビリティ」「地方創生・まちづくり」など、各企業が大切にしている価値観を打ち出している点です。また、BaseMeでは給与や福利厚生などの情報を基本的に掲載していません。これはあえて企業の"数字"を強調せず、学生が「自分にとって本当に大切にしたい要素」を最優先に探せるようにするためだと言います。

    一方、学生側だけではなく企業側にも「価値観」のマッチングが求められています。

    「就活をする人数は大体40万人、そのうちの10万人がエントリーする企業もあります。ですが、それは学生側からしたら"ただ名前を知っている"という状態にすぎません。学生優位の売り手市場な時代だからこそ、企業は誰でもいいから大量にエントリーしてもらうのではなく、本当に欲しい人材に出会う方法を探す必要があるのです」。

    一説によると、入社後1年で早期離職してしまった場合に発生する1人あたりの損失額は、新卒採用の場合で657万円といわれています。

    現在、BaseMeの登録者数は2万人超、取り扱い企業はトヨタ自動車やアサヒグループジャパンなどの大企業やメルカリなどベンチャー企業をはじめ、125社以上に拡大しています(2024年3月時点)。実際に企業のエシカル部門やサステナビリティ部門でインターンや内定に結びついた事例も出ています。こうしたユニークなプラットフォームを生み出した背景には勝見さんの幼い頃に感じた原体験が影響していました。

    幼少期に見た「付加価値」の生み出し方

    勝見さんは、東京都杉並区、西荻窪で70年続く青果店の家庭に生まれました。そこで見たのは"人"が差別化要因になり、信頼や付加価値を紡いでいく世界でした。

    「隣に大手スーパーがあって、正直経営的に苦しい時期もありました。でも実家の事業を通して『なぜうちのほうが値段は高くても、常連さんがわざわざ買いに来てくれるんだろう』ということに気づいたんです」。

    「両親は『この人参は甘いよ』『肉じゃがに入れるならこの野菜もおすすめだよ』とお客様に声をかけながら接客をしていました。『野菜を売る』というシンプルな営みに、些細な接客や気遣いで、付加価値を生み出し笑顔をつくっていく。その体験が今の事業観に大きく影響を及ぼしています」。

    勝見さんは学生時代、自身のアイデンティティや可能性を探すため、インドやバングラデシュ、フィリピンなどを放浪し、貧困や先進国の発展の皺寄せの実態を知ります。その後、ドイツやアメリカに留学し、環境教育プロジェクトやバナナの皮を使った化粧品事業などに取り組みますが、うまく広がらず壁にぶつかりました。さまざまな経験を積んで日本に帰国した勝見さんは、再び壁にぶつかります。

    「もともとは貧困問題や気候変動など、社会課題に取り組む企業に入りたかったんです。ですが、そんな"情報"を打ち出している企業はほとんどありませんでした。当時、コロナ禍で面接はオンラインばかり。実態や本気度を直接確かめられる機会もなく……」。

    いっそ自分でつくろう。こうして誕生したのが、当初は「エシカル就活」という名前で、社会課題の解決やサステナビリティに本気で取り組む企業と学生のマッチングに特化したサービスでした。

    しかし運営していく中で、「社会課題を解決したい」という思いを紐解くと、実はそこに多様な価値観があることに気づきます。社会を変えたい、人の役に立ちたい、新しい挑戦をしたい──社会課題の解決は、"価値観"が発露した一つの形でした。

    「それに、必ずしも社会課題の解決がすべてでなくてもいいんです。『安心して働きたい』『成長したい』など、大事にしたい価値観は多様で当たり前。何が問題かというと、そうしたすり合わせができていないことです。就活の時って企業も学生も、いいことしか言いませんよね。何を大事にしているのか、深いコミュニケーションが必要なんです」。

    幼少期に育まれた「ビジネスを通じて付加価値、その先に幸せを生み出したい」という勝見さん自身の価値観は、2024年2月、さらに幅広い"価値観"を取り込みながら、「BaseMe」へとプロダクトをアップデートしたのです。

    採用を変えれば、教育も価値観もすべて変わる

    大手企業の一括採用の取りやめ、ジョブ型雇用の本格導入など、少しずつ就職活動シーンは変化しています。

    「日本の"失われた30年"は、実は就活に原因があるんじゃないかと思っているんです。終身雇用が成立していた時代、勉強をしていい大学、いい企業に入るのが是である教育がされてきました。一括採用は経済成長中にある製造業型の働き方には適していましたが、時代は急速に変わり、アメリカでは新卒を採用しない企業も増えている。スタンフォード大学の学位を取っても仕事がないんです。つまり、出口(採用方法)が変わると、教育も価値観も一気に変わります」。

    AIやデジタル技術の進化が著しい今、同じ能力や考え方の人材ばかりを集めても、イノベーションは生まれにくいといわれています。そこで求められるのが「多様な人材・価値観を受け入れられる体制」です。実際、大手企業では「BaseMe限定のインターン」や「サステナビリティ部門採用」など、明確な目的を持って人材を探し始めています。

    また、今後AIの発展によって単純作業的な事務業務はますます機械に置き換わっていく可能性があります。しかし、そのぶん人間が本来やりたかったこと──社会に貢献したり、夢やアイデアを形にする仕事を創出しやすい時代になると、勝見さんは見ています。

    「これまでの就職活動は、学歴や企業の知名度が基準になりがちでした。ですが、本来は学生たちの『自分がどう生きたいか』『どんな価値観を大事にしているか』が最優先されてほしい」。

    そうした多様性を社会に包摂して、企業を、社会を変えていくことがBaseMeの目的なのかもしれません。

    今後は「日本の企業だけでなく、世界へ展開する可能性も大いにある」とのこと。社内のエンジニアチームはグローバル人材を集めるなど、BaseMe自体が"国籍や多様性を当たり前に受け入れる土台"をつくろうとしているそうです。国内外を問わず、価値観でつながる就活とキャリア形成が進めば、日本の大学や企業文化、ひいては社会全体へのインパクトは計り知れません。

    PROFILE

    勝見 仁泰

    勝見 仁泰Kimihiro Katsumi

    1998年生まれ。自身の就活経験から大学3年次、22歳に株式会社アレスグッドを共同創業。24年2月にZ世代キャリア支援プラットフォーム「BaseMe」をリリースし、トヨタ自動車、日立製作所、KPMG、みずほ銀行など大手企業を中心に150社に導入され、ユーザー数2万人まで拡大。世界を変えるアジア人30人「Forbes 30 UNDER 30Asia 2024 」Consumer 部門にて選出。

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