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連載:みんなの未来マップ 資本主義のその先は?『新百姓』編集長 おぼけんさん

連載:みんなの未来マップ

資本主義のその先は?"稼ぐ"の先にある"つくる"へ。手を動かすことから始まる、社会のつくり直しのプロセス

2025.11.28

    渡邉さんのロングインタビューはこちら

    社会は変えられない。でも世界の見方は変えられる。注目雑誌『新百姓』が投げかける問い

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    資本主義に疑問を持ったことから金融を学ぼうと証券会社に就職し、リーマンショックを経験。その後、世界一周の旅やソーシャルスタートアップの創業支援などへ出て、2022年に雑誌『新百姓』を創刊したおぼけんさんこと、渡邉賢太郎さん。

    雑誌を通して伝え、問いかけているのは「使う人々の時代(Capitalism=資本主義)から、つくる人々の時代(Creativitism=創造性主義)への転換」です。お金よりも「つくる喜び」に価値基軸を置くことから始まる、新しい社会とは。

    社会は人間がつくったのだから、人間がつくり直せる

    前提として、僕は社会はつくるもので変えるものではないと思っています。政治は不特定多数の人がともに生きていくための意思決定の仕組みだし、経済は富の分配の仕組みです。つまり歴史を俯瞰すれば、社会そのものが、人間がつくったツールなんですね。そして、人間がつくったのだから、人間がつくり直せるはずだと考えています。

    社会はツール! その発想はありませんでした。

    社会には4本の柱があると考えています。まず「市場」が開かれる。市場が開かれたところで「祭り」が行われ、祭りと市場が成り立ったところに人が定住すると、学校のような「学ぶ場」ができる。そして、ダンバー数※1を超えて人口が増え、社会ができると「メディア」が必要になります。『新百姓』もこれに倣って、4本柱で考えました。最初に始めたのはメディアですが、次に学ぶ場をつくり、市場をつくって、最後に祭りをつくる予定です。

    ※1:イギリスの人類学者ロビン・ダンバーが提唱した、人が安定的な社会関係を維持できる人数が150人程度であるという理論。

    制作中の3号では、第二段階である学びの場づくりを実践しているそうですね。

    出版業の新しいサステナブルな仕組みを考えて、読者に「次号を一緒につくりませんか」と呼びかけたんです。集まった39人のメンバーには共同出資という形で参加費をもらい、6カ月間、一緒に制作し、次の6カ月間は販売まで一緒に取り組むという1年間のプロジェクトになっています。3号のテーマは「音を楽しむ」なんですが、漁師やデザイナー、書店主までいろいろな人が参加していて、僕らだけだったら絶対に思いつかなかった視点がたくさん出てきています。すごく面白いです。

    資本主義をツール化する方法は「自分でつくってみる」こと

    おぼけんさんは、最終段階の「祭り」までいくと、どんな社会になると思いますか。

    「つくる」を楽しむという価値観で生きていく人たちが増えると思います。そして資本主義は、相対的には影響力を低下させていきます。

    とはいえ、資本主義から抜け出すのは、かなり大変なことだと思います。私たちはどこから始めたらいいのでしょう。

    僕自身がそうなんですけど、コロナ後、九州で田舎暮らしを経験しています。自分で米をつくって、ワナを仕掛けて、猪や鹿を獲ったり。すると、いざとなったら食べるものは何とかなるなとか、住まいも雑でいいなら自分たちの手でつくれるなとか、だんだんわかってくるんです。ただしそれって「めっちゃ大変!」とも思うんですね。だから「お金で買えるってなんて便利なんだろう!」ってなるんです。

    なるほど。今は資本主義中心で、お金で交換するという選択肢しかない。でも自分でつくれるようになると、お金で買うという行為は数ある選択肢の一つになる。まさに、資本主義が"ツールになる"ということですね。

    そのとおりです。だから資本主義をツール化する方法は簡単で、いったん自分でつくってみたらいい。それだけなんです。

    資本主義の物語は、本当に真実?

    これは、2号の「米をくう」の取材をしていて気づいたんですけど、世界の4大文明は畑作牧畜文明なんですね。畑作は連作ができないから、毎年畑を変えなきゃいけない。つまり、人口が増えれば増えるほど広大な畑が必要になるんです。4大文明は、そこにプラスして牧畜もやったから牧草地も必要。常に森を開拓していくしかないので、徐々に水源は枯渇していくし、隣の文明圏と境界が接したら争って奪い合うしかない。

    一方で、日本も含めた東アジアから東南アジア全般に広がった稲作漁撈文明があります。稲は一粒当たりの収穫倍率※2がおよそ130倍で麦の4倍以上の収量があるし、水稲栽培だと同じ土地をずっと使えるので、人口が増えても必要とする土地の量はそこまで増えない。温帯なので作物はよく育つし、たんぱく源も魚から得ることができる。だから、森を際限なく開拓する必要はないのですが、代わりに、自然災害は多い。あまりに強大な自然の力を前に「自然をどう管理するか」という発想ではなく、「自然とどう調和して生きていくか」という東洋哲学的な発想になるんです。

    ※2:収穫倍率とは、種もみ1粒から何粒の収穫が得られるかを示す指標を指す。

    絶対的な自然があるから、自然を支配しようとか、社会を変えようというマインドにならない。

    そうなんです。でも畑作牧畜文明は「いかに自然を征服するか」なんですよ。その上に今の資本主義という仕組みがある。つまり我々は、OSから変えないといけないということです。少なくとも、1970年代には世界の当時の人口の1年分のカロリーを賄うだけの穀物生産はすでに達成しています。それ以来、世界中の人がお腹いっぱい食べて1年間暮らしていけるだけの食糧生産を、我々はずっとしているんです。なのにみんな、この世界は本質的に不足していて、争い合うしかないという資本主義の物語をずっと信じ続けている。もはやコメディみたいなものではないですか?

    だからこそメディアで問い続けている。

    なんていうか、「起きてくださーい」ぐらいの感じです(笑)。「こっちが正解」とか「こうあるべき」じゃなくて「こっちのほうがめっちゃ楽しいっすよ」みたいな感じでやっていこうと。何度も言いますが、僕らは資本主義を否定しません。ただ、それは選べるものだし、他にも選択肢があるということは言い続けたい。そして、見ている方向が合う人は一緒にやっていこうぜと思っています。

    PROFILE

    渡邉賢太郎

    渡邉賢太郎Kentaro Watanabe

    1982年生まれ。立命館アジア太平洋大学を卒業し、三菱UFJモルガン・スタンレー証券に新卒で入社。退職後、2年間の世界一周の旅へ。帰国後「NPO法人ETIC.」、孫泰蔵氏によるエンジェル・ファンド「Mistletoe」、武蔵野美術大学大学院非常勤講師、「おせっかい社かける」の創業などを経て、2022年、施依依とともに「ている舎」を創業し『新百姓』を創刊。主な著書に『なぜ日本人は、こんなに働いているのにお金持ちになれないのか? 21世紀のつながり資本論』(いろは出版)、『新百姓宣言』(ている舎)などがある。通称おぼけん。現在、『新百姓』の活動への寄付会員を募集中。詳細はウェブサイトより。

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