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コラム No.108-11

CREコラム

急拡大するESG投資(11)SDGs経営とESG投資

公開日:2021/07/30

現在、SDGsへの取り組みの度合いが企業評価のデファクト・スタンダードのひとつになりつつあり、SDGsに配慮した経営を展開していくことが企業の持続可能性を高める重要な要素になっています。SDGs経営とESG投資の関係について考えてみます。

SDGsとESGの違いはなにか?

まずSDGsとESGの違いについて改めて確認しておきます。SDGsは「Sustainable Development Goals」の略で、「持続可能な開発目標」と訳されています。2030年までに達成すべき17の目標を設定し、国や企業がそのゴールに向けて取り組むことを指します。2015年の国連サミットで採択されました。17の目標はアイコンとして色分けされ、近年は広く周知されています。一方ESGはこれまで見てきたとおり、投資家や金融機関の投資判断においてESG(環境・社会・ガバナンス)への配慮を重視していく姿勢を求めて提唱されたものです。いずれも国連の場で提唱・採択された点では共通しており、企業に対する経営姿勢の変化を求めている点で似通っています。また、SDGsの17の目標はそのほとんどがESGの要素に含まれるものといっても過言ではありません。

このためSDGs経営といってもESG経営と表現しても、さほど変わりはないと思われます。違いがあるとすればSDGsが達成時期の目標を2030年と定めていることですが、国や企業がよりよい社会を作り出していくための努力を不断に続けていく点では両者に決定的な相違はないといえるのではないでしょうか。

日本の社会や企業の価値観はSDGsと親和性がある

経済産業省が2019年5月に取りまとめた「SDGs経営ガイド」では、日本の企業や社会の価値観は、古くからSDGsに親和的であると指摘。同ガイドではその代表例として「三方よし」を紹介しています。

図1:わが国の企業や社会の価値観とSDGsの親和性

「売り手よし、買い手よし、世間よし」の三方よしは、鎌倉時代から江戸時代にかけて活躍した近江(滋賀県)商人の活動理念を表す言葉として、現在でもさまざまな業種の企業やそのトップが好んで引用する企業理念です。ビジネスを展開することを売り手と買い手の当事者の立場からだけでなく、地域社会ひいては社会全体を通して考え行動し、単なる利益追求主義ではなく、活動理念を厳守し商売上の不正を戒め、一般社会と融和を図ることに重きを置いていた点は、社会的問題の解消・改善に取り組むSDGsと極めて親和性があるとの解釈です。
SDGsで語られる「持続可能性」に関しては近年、「100年企業」という言葉がたびたび使われています。2010年に発表された帝国データバンクの「老舗企業の実態調査(2019年)」によれば、日本には、100年以上存続する企業が全国に約3万3000社あるとされており、日本には、長期間企業が存続する環境があるといえるでしょう。言い方を変えれば、わが国の産業界が、世界の中でもサステナブルな(持続的な)企業を数多く輩出していることを示しています。その持続性は「三方よし」に代表されるSDGs経営に裏打ちされ、脈々と受け継がれてきたのではないでしょうか。
しかしこの事実は、わが国の歴史ある伝統的な企業は、投資家をことさら意識しなくても企業理念に忠実に経済活動を展開すれば、結果として投資家の評価は自然と付いてくるものであるとの自負が根強く残る結果にもつながったといえ、そのためSDGsやESGに対する積極的な活動を控えたり、PRしてこなかったりした遠因になっているのではないかと同ガイド(「SDGs経営ガイド」)は指摘しています。

ESG投資の時代にマッチしたSDGs経営

企業の間では近年CSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)を重視する姿勢が目立ってきました。しかしCSRは社会貢献の色彩が強く、慈善事業的な取り組みに終始する傾向がみられました。現在は環境改善や人権尊重、企業のガバナンスに取り組むと同時にリターンも求められるESG投資が加速しています。各企業は投資家が下すESGの評価に耐えられる経営を持続的に展開していかなければ、資金調達の面で不利な立場になりかねない時代です。そうしたESG評価に値する経営を目指すため、SDGsに積極的に関わる企業が増加しています。その背景には、SDGsはESGに比べて、より具体的な取り組み目標を設定している点で企業サイドにとっては対応策を早期に立ち上げることができることが挙げられるのではないでしょうか。17の目標のうち2030年までに改善点を見いだせるテーマを選択し、その取り組みやプロセスを開示していくことでESG投資における評価も高まっていくでしょう。
そもそも、投資家は企業の将来性に着目して資金を投下します。投資家は企業が示す長期的なビジョンを見たいと考えます。投資先の将来に向けての具体的な活動を示すことを歓迎し、それがどの程度実現したかを評価します。SDGsやESGは投資家の格好の評価軸でもあるわけです。
企業が率先してSDGsに取り組めば、環境問題や社会問題への改善・解消に対する大きな「うねり」が生まれ、そのことで企業の価値も上昇します。それはまた、ESG投資を行う投資家の長期的なリターンにつながっていくのではないでしょうか。

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