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コラム No.17-1

PREコラム

西川りゅうじんの「地方公共団体《PRE》有効活用戦略」
~《PRE》の利活用が地域間競争を決する!~
Vol.1《PRE》の活用度が“地域の元気のバロメーター”!

公開日:2016/03/25

地方公共団体の《PRE》は国土の総額の5分の1、総面積の4分の1

国土交通省の推計によれば、国内すべての不動産の総額約2,400兆円のうち、国および地方公共団体が所有している《PRE》(Public Real Estate=公的不動産)は約570兆円で、全体の24%、約4分の1を占めている。
そして、そのうち、地方公共団体が所有する不動産は、70%を超える約420兆円にのぼり、18%に相当する。

それに地方公共団体の外郭団体や第3セクターなどが所有する不動産も含めると、実質的に地方公共団体が所有するに等しい広義の《PRE》は、国内すべての不動産の20%を上回ると推定される。
つまり、地方公共団体が所有する《PRE》は、国内すべての不動産の総額の5分の1以上を占めると考えられる。

そして、金額ではなく面積で考えれば、さらに、その占める割合は大きくなる。

国および地方公共団体が所有している《PRE》の総面積は、日本の国土全体の約36%を占めている。
地方公共団体が所有する《PRE》は、国内すべての不動産の総面積の4分の1以上を占めると考えられる。

《PRE》の利活用が地域の元気を如実に表す

日本の国土を人のからだに置き換えれば、国土の総額の5分の1、総面積の4分の1に相当する地方公共団体が所有する《PRE》とは、全身を動かす筋肉である。
いかに、道路、鉄道、空港、水道、ガス、電気、通信など、からだの血管やリンパ節、神経に当たるインフラを整備しても、筋肉である土地を有効に利活用して動かさない限り、何ら生産は行われず、人体と同じく地域は衰弱し、老化し、動脈硬化を引き起こして、ついには死に至る。

有史以来、人類は土地を利活用して、あらゆる生産活動、経済活動を行ってきた。
経済学において、土地・資本・労働が生産の3要素であり、土地と資本が生産手段と規定される通りである。

言うまでもなく、土地を利活用し、資本を投じ、労働を行い、生産活動、経済活動を行う主体は、国や地方公共団体ではなく、民間の個人や企業である。
そして、いつの世も、企業家による「イノベーション」こそが経済を活性化する。

「イノベーション」を定義した経済学者、シュンペーターは、経済における本源的生産要素は労働と土地であり、他のすべての財は少なくともこの一つから、また多くの場合、この両者から成り立つと述べている。

「イノベーション」とは、物事の新結合、新機軸、新しい切り口、新しい捉え方、新しい活用法を創造するアイデアと行為だ。
これが、社会的意義のある新たな価値を創造し、変化をもたらす自発的な人・組織・社会の幅広い変革を行うのである。

企業家が労働と土地を利活用して、新しい財貨、新しい生産方法、新しい販路の開拓、原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得、新しい組織の実現を行う「創造的破壊」が、地域経済を豊かにするのだ。
当然、その土地の総額の5分の1、総面積の4分の1に相当する地方公共団体が所有する《PRE》を有効に利活用できているどうかが、その地域の元気の度合いを如実に表すこととなる。
《PRE》の活用度こそが“地域の元気のバロメーター”なのである。

地方公共団体が直面する本格的な少子高齢化と急速な財政状況の悪化

現在、全国に約1,700ある地方公共団体の多くは、本格的な少子高齢化、および、それと軌を一にして、急速な財政状況の悪化という、2つの劇的な構造的変化に直面している。今や日本は本格的な人口減少社会、少子高齢化社会に突入した。

日本の総人口は、2008年12月の1億2,809万9千人をピークに減少に転じ、2020年の東京オリンピックの頃からつるべ落としのようなダウントレンドに入り、国立社会保障・人口問題研究所は2050年には1億人を割ると予測している。
また、65歳以上の高齢者人口の割合は、年々過去最高を更新し、2015年9月時点の総人口に占める割合は26.7%で、既に4人に1人を上回っている。

一方、年少人口と生産年齢人口の割合は減少の一途をたどっている。
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2040年の65歳以上の割合は実に36.1に達する見込みで、地域においてはほぼ半数以上が高齢者という社会が到来する。
また、多くの地方公共団体の財政状況も悪化を続け、非常に深刻な状況にある。総務省によれば、近年の地方公共団体における借入金残高(地方債、交付税特会借入金、公営企業債)の総額は、平成に入ってから約3倍に増加し、対GDP比で4割ほどの約200兆円と推計されている。
人口が急速に高齢化しつつ減少を続け、税収も大幅な増加が見込めない。

他方、社会保障の費用は増大し、さらには整備されてから半世紀を経て老朽化が進む各種インフラの刷新が急務となっている。
近い将来、借入金の償還が、地方公共団体の財政を強く圧迫することは火を見るより明らかだ。

“管理・運用”から脱却し、「《PRE》戦略」を構築・実行しよう!

各地の地方公共団体では、今までにも公共的・公益的な目的のために、《PRE》の“管理・運用”を行ってきた。
しかし、今後は、従来のような《PRE》の“管理・運用”という視点から脱却しなければならない。

《PRE》とは、シビル・サーバントとして住民からお預かりしている最後に残った大切な地域の資産であり希望のいしづえであることを肝に銘じ、意識転換を図る必要がある。

地方公共団体を取り巻く環境が従来と大きく変化する中、地域経済の活性化と財政健全化を念頭に、事なかれ主義や悪しき前例踏襲主義を廃さねばならない。
もはや、待ったなしの事態であることは明らかだ。各地方公共団体に残された時間は1世代未満である。
木を見て森を見ない施策を続けていても単なる宝の持ち腐れでしかなく、ゆでがえるになってからでは取り返しがつかない。

今こそ、地方公共団体は、《PRE》をマクロ的視点から新たに捉え直し、より有効に利活用するための「《PRE》戦略」を構築し、果敢に実行して行くべきである。

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

西川 りゅうじん(にしかわ りゅうじん)

1960年兵庫県出身。一橋大学卒業。マーケティング戦略のエキスパートとして地域活性化に手腕を発揮している。「愛・地球博」の“モリゾーとキッコロ”や「平城遷都祭」の“せんとくん”の選定・広報、「福岡ドーム」のオープニング演出、「六本木ヒルズ」「日本橋三井本館」「京都駅ビル」の商業開発、「つくばエクスプレス」の沿線まちづくりなどに携わった。

総務省地域活性化センター「地域再生実践フォーラム」基調講師、市町村職員中央研修所「市町村アカデミー」特別講師、国土交通省道路工事改善マネジメント委員、経済産業省「地域の魅力セレクション」審査委員長、観光庁委員、全国信用金庫協会「商店街コンテスト」審査委員長、全国地域PFI協会理事長などを歴任。

現在、厚生労働省「健康寿命をのばそう」運動スーパーバイザー、神奈川県まちづくり委員会「マグカル・テーブル」座長、兵庫県参与、(公財)にいがた産業創造機構アドバイザー、日光市まちづくりアドバイザー、藤沢市駅前商店街活性化アドバイザーなどを務めている。

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