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コラム No.17-2

PREコラム

西川りゅうじんの「地方公共団体《PRE》有効活用戦略」
~《PRE》の利活用が地域間競争を決する!~
Vol.2 民間の力を活かす「PFI」で《PRE》を活性化せよ!

公開日:2016/04/27

「PPP」の代表的手法「PFI」

地方公共団体が《PRE》を保有している目的は、言うまでもなく、現在および将来の住民に対して、より良い公共サービスを提供するためである。
しかし、近年、地方公共団体の《PRE》の有効活用が急務となって来たのは、厳しい財政状況の下、公的資金だけで《PRE》上の施設の建設・維持管理・運営を行うのが困難となり、本格的な人口減少社会の到来や公共施設の老朽化に伴う《PRE》の低利用・遊休化が問題視され、集約・再編の必要性が高まったことが背景にある。

今後、地方公共団体の《PRE》を有効に活用して行くためには、民間の資金とノウハウを活かしつつ、財政負担の削減を図る、「PPP」(Public Private Partnerships=官民連携)が重要であることは論をまたない。
《PRE》を有効活用するための「PPP」の手法には様々な選択肢があるが、その代表的手法が「PFI」(Private Finance Initiative)である。

1992年にイギリスで行財政改革のために考案されたものだが、直訳すれば、民間資金主導の意味だ。
公共施設などインフラの整備、建設、維持管理、運営などを、民間の資金、経営能力、および、技術的能力を活用して、VFM(Value For Money=公的資金の投資価値)を極大化すべく行う手法で、欧米をはじめ世界各国で成果を収めている。

日本における「PFI法」の施行と実施状況

日本では、1999年に、「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(PFI法)が制定され、着実に普及してきた。

地方公共団体の財政は逼迫し、人口が減少していくにもかかわらず、今後20年間で、高度成長期を中心に整備された公共インフラの半分以上に更新時期が到来すると考えられる。
その費用をすべて税金でまかなうのは非常に困難だ。財政負担を軽減し、民間活力を引き出すためにも、「PFI」がもっと活用されるべきだ。
増加し続ける公共施設の更新需要に対する財源不足が懸念される中、「PFI」を含む「PPP」手法の活用推進は、政府の重要施策として位置付けられている。

2011年に施行された「改正PFI法」では、民間提案制度、公共施設等運営権(コンセッション)をはじめ、民間の裁量をさらに拡大する仕組みが整備された。民間提案制度は、民間の発意によって公共側に「PFI」による事業実施を提案できる仕組みだ。

政府は、2013年6月に策定された「日本再興戦略」の「PPP/PFIの抜本改革に向けたアクションプラン」において、民間資金を呼び込む「PFI」事業の規模を、2022年までの10年間で、それまでの10年間の実績の3倍に当たる12兆円に拡大する計画を明らかにした。

中でも、「公的不動産の有効活用など民間の提案を活かしたPPP事業」に対しては2兆円という目標値が設定され、民間資金によって《PRE》を活用するという方針が改めて明確にされた。

また、アクションプランの中では、公共施設等運営権(コンセッション)を活用した事業や収益施設を併設することにより財政負担を削減する事業などについても一定のKPI(Key Performance Indicators=重要業績評価指標)が示されている。
「PFI法」の施行から15年が経過した2015年9月末の時点において、「PFI」事業の実施件数は511件、契約金額の累計は約4兆6千億円に上る。

「PFI格差」が新たな地域間格差を生み出す!

ところが、「PFI」と言えば、一般的には空港のコンセッションなど巨大プロジェクトばかりがマスメディアで報じられるため、委託する地方公共団体は都道府県や大都市に限られているように思われがちだ。

しかし、実際はその真逆で、過疎化が進む市町村こそが活用すべき手法である。
今や、全国にある約1700強の市町村の大半が、どこも少子高齢化と税収減に苦しんでいる。定住を促進するために公営住宅を新築したくとも、多くは財政状態が厳しいため難しい。

また、既存の公営住宅の多くは1950年代に建てられており、老朽化して建て替え時期を迎えているが、その財源もない。
そこで、2011年の「改正PFI法」によって、行政が民間に委託できる住宅関連事業に関して、対象となる施設が拡大され、従来の公営住宅のみならず、中堅所得者向けの賃貸住宅(地域優良賃貸住宅)にも適用されることとなった。

ただ、市町村が「PFI」事業を民間に委託しようと思っても、そのノウハウも経験も人材もないという場合が少なくないだろう。
そこで、国土交通省では、2016年3月、《PRE》の民間活用を促進するために、地方公共団体の職員が実務の参考にできる「公的不動産の民間活用の手引き」をウェブサイトにアップし、「PFI」を含めた《PRE》の集約・再編の手法を広く公開している。

地方公共団体の中で、人口の多寡や立地にかかわらず、一歩踏み出して「PFI」事業で成功を収めたところは、次々と新たなプロジェクトにチャレンジしている。
そういった意味では、自助努力による「PFI格差」が、新たな地域間格差を生み出しつつあるのだ。

今後、その地域の「地方創生」が成し遂げられるか否かは、地方公共団体が「PFI」によって《PRE》を有効活用できるかどうかにかかっていると言っても過言ではない。

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土地活用ラボ for Biz アナリスト

西川 りゅうじん(にしかわ りゅうじん)

1960年兵庫県出身。一橋大学卒業。マーケティング戦略のエキスパートとして地域活性化に手腕を発揮している。「愛・地球博」の“モリゾーとキッコロ”や「平城遷都祭」の“せんとくん”の選定・広報、「福岡ドーム」のオープニング演出、「六本木ヒルズ」「日本橋三井本館」「京都駅ビル」の商業開発、「つくばエクスプレス」の沿線まちづくりなどに携わった。

総務省地域活性化センター「地域再生実践フォーラム」基調講師、市町村職員中央研修所「市町村アカデミー」特別講師、国土交通省道路工事改善マネジメント委員、経済産業省「地域の魅力セレクション」審査委員長、観光庁委員、全国信用金庫協会「商店街コンテスト」審査委員長、全国地域PFI協会理事長などを歴任。

現在、厚生労働省「健康寿命をのばそう」運動スーパーバイザー、神奈川県まちづくり委員会「マグカル・テーブル」座長、兵庫県参与、(公財)にいがた産業創造機構アドバイザー、日光市まちづくりアドバイザー、藤沢市駅前商店街活性化アドバイザーなどを務めている。

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