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コラム No.20-1

PREコラム

「官民連携による地域活性化への取組を探る」(1)少子高齢化がもたらす地方都市の課題と再生への可能性

公開日:2016/12/22

POINT!

  • ・地方の魅力を感じ、街のリノベーションに取り組む若者は少なくない
  • ・「地方創生」とは地方の役割を新たに改善し創造していくこと

現在、地方を再生・活性化させる目的で、さまざまな施策や支援策、資金的補助が国や自治体から打ち出されています。そして、華々しい成功とまではいかなくとも、行政と民間企業、住民が協働し、本質的な意味で真の住みよい街、人が集う街へと変貌を遂げた事例は確実に存在します。 官民連携による地域活性化への取り組みを探ってみたいと思います。

若者が街の機能そのものを改善し新しく創造する

先日、とある過疎化した地方の街で、ある若者と出会いました。聞けば、彼はデザイナー。都会育ちの彼がいろいろな所を旅して落ち着いたのが、都会の喧騒とは無縁のこの街だそうです。「気に入った場所で、好きな仕事を始めたいな。」高齢者の多い街の住民と仲良くなり、仕事を手伝ったりイベントを企画したりするうちに、ヨソモノ、ワカモノが「まちおこし」を後押しできるのではないかと、理屈抜きに感じました。そして彼が画いた戦略は、街全体のリノベーション。空き家の家主を探し出し、事業所物件として賃貸するのです。まだ人が住める物件とはいっても、そもそも将来的に入居の予定がない家なので改装は自由に行えます。それは、街を復活・再生するのではなく、街の機能そのものを改善し新しく創造する手始めです。この動きに行政や公的支援機関、事業者組合、民間不動産屋、もちろん街の住民も共感を覚え、その活動は徐々に広がっています。そして、少しずつではありますが、志を同じくする若者が、田舎町では気の利いた店を出し始めているのです。きっと彼らのまなざしの遠くには、徐々にではありますが若返っていく街の風景が見えているに違いありません。地方都市を見聞していると、このような話によくぶつかります。大きな資本の都市計画とは違い、時間はかかりますが自然で地道な人間の営みを身近に感じる人も多いのです。
1960年代の高度成長期、街はどんどん新しくなり、居住環境も目に見えて改善され、大多数の国民が幸福感を味わった時代でしょう。地方都市と大都市を結ぶ交通網が日に日に整備され、人や物の移動も便利になりました。これによって地方都市と大都市の生活格差は縮小されたかに見えましたが、大都市圏への資本の集中は凄まじく、次第に地方の若者は大都市圏へ吸い込まれていきます。
続く1970年代、過度な開発による環境破壊や公害、資源の浪費がクローズアップされ、過密状態となった大都会では、疎外感を持ち生活の豊かさを感じられない若者が地方を放浪する現象がありました。しかしこの時代は、「地方の時代」が叫ばれ、地方都市においても開発の都市間競争が激化する最中、これら若者はただの「ヨソモノ」にしか映らなかったかもしれません。
そして1980~90年代、バブル経済が崩壊し、経済成長期は終焉を迎えました。その後、安定成長期に入った国内を振り返ると、都市の生活スタイルは少子化を生み出し、生活環境の向上は国民の長寿化を支え、高度成長期に活躍した団塊世代といわれる多くの人々の高齢化問題が表面化するなど、社会的構造的な課題を抱えるに至っています。しかも、この現象は大都市と地方都市に平等に訪れました。

ワークライフバランスを実現しやすいのは地方?

近年、大都市圏の大企業を中心に「ワークライフバランス」(仕事と生活の調和)の取り組みが活発です。中でも、多様な働き方を確保し、個人のライフスタイルやライフサイクルに合わせた働き方が選択できるようにする環境づくりは企業における大きな課題の一つになっています。特に出産・育児・介護を担っている女性に対して、フレキシブルな職場環境を提供することは、少子高齢化対策としても重要な施策といえるでしょう。
一方、地方都市はどうでしょうか。多くの地方都市は人口減少に悩んでいます。中には人口推計から「消滅可能性都市」との指摘を受けている地域もあります。少子高齢化に対応すべく、行政区域の統廃合やコンパクトなまちづくりで行政サービスの効率化を図る一方、企業誘致や市街地の整備で住民の流出を防ぎ、移住・定住施策で人材を呼び込む取り組みが各所で行われています。冒頭の過疎地もその一つでしょう。しかし考えてみると、地方都市は住民間の密着性が高く、子育てや介護には向いている場所でもあります。つまり、「ワークライフバランス」を地域全体で機能連携して実現しているようにも見えます。子育てママがお総菜屋やスーパーで少しだけ働き、祖父母が子どもと一緒に遊びながら子育てを分担します。恒例のお祭りには一家総出で参加して地域を盛り上げます。みんな顔見知りなので、地域全体が見守り隊です。こんな風景は、地方都市では当たり前でした。「地方創生」とは、そのような地方の役割を新たに改善し創造していくことではないでしょうか。
ひと昔前、国内には非常に似通った街並みが多数出現しました。駅前のロータリー、駅前に続くアーケード商店街、多くの人々がそこに集い活況を呈したのです。車社会になるとこれまた同様に、大型郊外店が出現し、商店街が次第に寂れていきます。しかし少子高齢化は、大型郊外店の存続さえも脅かしかねません。これからの新しい時代の多様化する生活ニーズに対応するためには、街に新しいプラットフォームを再構築する必要があるのかもしれません。それは、地権者としての住民と、街を長期的な新しい視点でコーディネートする人材が、時間をかけて協働し、自治体や民間デベロッパーを巻き込んだ地域づくり、まちづくりをすること。過疎の街のリノベーションを目指す彼の若者が、そのことを何かしら教えてくれているような気がします。

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