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コラム No.29-1

CREコラム

米国の規制緩和は不動産証券化市場を変えるか

公開日:2017/01/26

POINT!

  • ・規制緩和によって米国で不動産証券化市場は拡大するか
  • ・米国内の金融業界および不動産業界関係者は金融規制の緩和に注目

米国では規制緩和に着手か

不動産証券化は、保有する不動産を有効活用して資金の調達および運用を図る金融手法です。近年は、新たに不動産物件を購入して証券化するケースが増え、不動産証券化それ自体がビジネス化するなど、裾野が広がっています。
米国では、雇用拡大のため経済活動の規制緩和を目指す新政権が不動産市場の活性化のための規制緩和に着手するのではないか、との期待が広がっているようです。

「米国の金融規制が緩和されれば、不動産証券化市場は拡大する」との期待がある・・・

報道によれば、金融に対する規制が緩和されれば金融商品の一つである証券化商品に対する規制が緩和され、不動産証券化市場が拡大するのではないか、との観測が出ています。具体的には、2010年に作られた金融規制改革法である「ドッド=フランク法」の中の「リスクリテンション規制」の発効を延期することで規制を緩和しようとするものです。少し遠回りしますが、説明しましょう。

リスクリテンション規制とドッド・フランク法

リスクリテンション規制とは、どういうものでしょうか?リテンションは保持、保有すること。この場合のリスクは、ビルなどの商業用不動産や住宅ローン債権など、証券化の裏付け資産(担保)になっている原債権の信用リスクを指します。信用リスクを保持する規制、という解釈になりますが、これでもよくわかりません。
不動産は地価が変動し、テナントビルは好不況などで入居率が上下して賃料収入に影響が出るので、不動産証券化商品の価値も変化します。住宅ローン債権を担保とした住宅ローン担保証券は不動産価格に左右されます。証券化商品における、こうした不安定要素が信用リスクです。証券化する主体者(オリジネーターやSPC)は、このリスクを一定の割合で保有しなさい、というのがリスクリテンション規制です。
具体的な方法として、オリジネーターやSPCが証券化商品の裏付け資産を5%程度保有すること、または同等の準備金を用意します。「責任なリスクの移転と過度の証券化を防止しようとする狙い」(金融業界関係者)との指摘があります。

これは、2008年に起きたリーマン・ショックと大いに関係があります。サブプライムローンは低所得者(サブプライム)向けの住宅ローンで、これを原債権にした住宅抵当証券(ABS)をファンドにして小口化した金融商品は、格付け機関の格付けで一層細分化されて複雑なABSができあがりました。最終的には原債権の価値を保証するプレーヤーの所在が不明になるほど複雑怪奇な金融商品がいくつもできて、それが転々と多くの顧客の手に渡り、気が付いたときは、これらの証券化商品は紙切れになってしまいました。この悲劇を繰り返さないために、証券化商品をプランニングした者もリスクを負うようにしたのです。
リスクリテンション規制を盛り込んだドッド=フランク法は、リーマン・ショックを教訓とした金融規制で、2011年に発効しています。同法は消費者保護の観点から、リスクの高い金融商品(証券化商品)のリスク規制を定めたほか、銀行などの経営を監視する機関を設けるなど金融の健全性を重視するものになっています。

信用リスクを取れば証券化商品のコストが上がる

なぜ、不動産業界の人々が金融規制の緩和を望んでいるのでしょうか。信用リスクの保持(リスクリテンション)は販売コストが上昇し、リスクリテンション規制を受ける業者には、証券化の主体者であるオリジネーターやSPCが含まれる可能性があるからです。
証券化においてリスクを取ることになれば、その分の販売コストは証券化商品の配当や利回りに転嫁せざるを得ず、結果的に投資家の利益を損ないかねません。そうなると証券化商品は販売不振に陥り、米国の不動産業界としては困った状況に直面すると考えているからです。こうした事態を回避するために、米国内の金融業界および不動産業界関係者は金融規制の緩和に注目しているのです。

DF法は、撤廃困難な21世紀の金融「大法」

ドッド=フランク(DF)法の撤廃は、現実的には厳しいのではないかとの意見が少なくありません。同法は、1933年の世界大恐慌の反省から生まれ、銀行と証券の分離をうたったグラス・スティーガル(GS)法以来の金融「大法」だからです。日本でいえば日銀にあたる、米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長も、「ドッド=フランク法によって、金融システムは、より安全で健全になった」と撤廃に反対しています。
GS法は銀証分離の業者法で、日本流に解釈すれば、大事な預金を金融機関の勧誘などでリスク投資に回さないためにできた法律。DF法は、複雑怪奇で難解な金融商品のリスクに警鐘を鳴らし、銀行に強固な経営健全性を求めた消費者保護的な法律。金融機関の経営健全性については、米国の影響力は強いですが、それだけで世界基準が決まることはありません。世界の潮流は金融システムの安定化。それを前面に打ち出したDF法の撤廃はあり得ないでしょう。ただし、部分的な規制緩和はあるかもしれません。

米国の規制緩和は、日本の不動産証券化に影響を与えるか?

リスクリテンション規制は、米国限定のルールではありません。2011年に開催された「G20」(主要国首脳会議)で各国が合意した国際的な金融規制のひとつ「シャドーバンキング規制」に盛り込まれているものです。米国ではドッド=フランク法に明記され、他国に先駆けて2017年の発効の予定です。シャドーバンキングとは、信用仲介活動をしている者で、銀行に類似した業務を展開している業者を指しています。 世界最強国のアメリカで先行して発効する規制の行方は、世界各国の金融規制に影響を与えます。リスクリテンション規制が米国で具体的に適用されれば、我が国の不動産証券化市場も、今後の規制の動きを先取りして、証券化の組成件数が減るなどの影響が出るかもしれません。米国では、リスクリテンション規制が発効することを見越してローン担保証券(CLO)市場が冷え込み、発行が抑制に向かうとの予測が出ています。

こうした悲観的な予測を受けて、経済活性化のためにリスクリテンション規制、ひいてはドッド=フランク法の発効時期が遅れることになれば、我が国でのリスクリテンション規制の開始時期も遅れる可能性があり、日本の金融業界や不動産業界には朗報となるでしょう。 過度の証券化を防止する狙いで定められたリスクリテンション規制が金融先進国アメリカで先延ばしになれば、国際的な金融規制の枠組みにヒビが入りかねません。規制に縛られる業界の企業活動はより自由になりますが、その分、信用リスクは高まるかもしれません。新政権の規制緩和策がどこまで広がるのか、世界が注目しています。

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