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コラム vol.141
  • 土地活用法律コラム

古くなった賃貸住宅問題と空き家問題の解決へのヒント

第4回 今そこにある空き家問題

公開日:2016/07/14

最近、新聞やテレビなどのメディアで空き家問題についての報道が頻繁になされていますが、不動産をご所有の方にとっては、見過ごすことのできない身近な問題となっています。
空き家問題の現状と対策など、気になるポイントを簡潔にわかりやすくご紹介します。

空き家の有効活用の方法

総務省の調査によると、平成25年時点で空き家の数は全国でおよそ820万戸に上り、住宅総数に占める空き家の割合は過去最高の13.5%と、実に7~8戸に1戸は空き家という状況です。
この20年の間に1.8倍に増えましたが、今後も空き家は増え続ける見通しです。

なぜこのように空き家が増えているのでしょうか。主な理由として、地方の人口減少や団塊世代の高齢化、それに伴う相続の増加が関係しているようです。

具体的には、以下の理由などがあります。

  • ・高齢者の長期入院や老人ホームへの入所を機に、それまで住んでいた自宅が空き家になってしまう
  • ・相続が起こり、遺産の分割などを巡って相続人間でトラブルに発展し、解決までに時間がかかるため、空き家として放置されてしまう
  • ・地元を離れて暮らす相続人が、不動産管理の負担を嫌って、相続を放棄してしまう※1

こうして発生した空き家を解体するのに高額のお金がかかることや、どんなにボロ家でも建物が建ってさえいれば、その敷地の固定資産税・都市計画税が減額されてきた※2という経済的な事情もあって、「気にはなるけど後回し」にしているうちに、解決のきっかけを逃して放置されたままになり、お化け屋敷のようになってしまうという構図があります。

※1…最高裁の司法統計によると、家庭裁判所への相続放棄の申請件数は平成26年で18万2,000件。過去20年間で約3倍に増加している。

※2…固定資産税は最大で6分の1、都市計画税は最大で3分の1まで軽減。

損害賠償のリスク

空き家を放置した場合のリスクとして、以下が挙げられます。

  • ・雨漏りやシロアリの発生などで建物の基本構造が朽廃することによる倒壊
  • ・屋根瓦などの建材が台風などで飛散
  • ・漏電や放火などによる火災
  • ・不法投棄によるゴミの集積
  • ・ネズミやゴキブリなどの発生
  • ・お化け屋敷、ゴミ屋敷のようになって景観を阻害
  • ・不審者の出入りによる治安の悪化

これらは言うまでもなく、空き家の所有者の個人的な問題にとどまらず、隣地・隣家に波及する問題です。
そのため、上記のような状態になった空き家があるだけで、隣地・隣家に現実的な被害が生じていなくても、空き家の所有者が隣地・隣家の慰謝料や、隣地・隣家の不動産価値が下落したとして、その下落分についての損害賠償を請求されるリスクがあります。
このような損害賠償請求が認められるかどうかは、空き家の状態が隣地・隣家や周辺に及ぼす悪影響や危険性が、「社会生活上一般に受忍すべき限度」(受忍限度といいます)を超えているかどうかにより判断されます。

実際にこのような損害賠償請求が認められるのは、よほど酷いケースに限られ、一般論としては、このような損害賠償請求はなかなか認められていません。
しかしながら、実際に損害賠償請求が認められるかどうかは別として、損害賠償請求をされることや、訴訟を提起されること自体が心理的に大きな負担となるリスクであることは間違いありません。
なお、実際に空き家が老朽化により倒壊したり、漏電などで火災が発生したり、隣家に実際に被害が発生した場合には、空き家の所有者は、原則として損害賠償責任を免れません。

平成27年5月「空き家対策特措法」が施行

このような空き家問題を個々の家庭の問題、隣人関係の問題として、当事者間での解決に任せるのではなく、社会問題として国を挙げて解決に取り組むために、『空家等対策の推進に関する特別措置法』(以下では「空き家対策特措法」といいます)が制定されました。
平成26年11月に成立し、平成27年5月から完全施行されています。空き家をより身近な問題としてとらえていた各自治体は、この法律が制定される以前から、独自に条例で対策を講じてきましたが※3、条例の性質上、どうしても地域によって対策の内容に差異があったりすることから、国全体での統一的な対策として、空き家対策特措法が制定されることになりました。

この法律では「空家等」を、「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む)」と定義しています。※4
「使用されていないことが常態である」という点については、およそ1年の間、電気、ガス、水道などの使用実績がないことがひとつの判断基準になるとされています。※5
その上でさらに、特に放置するのが不適切な状態にある「空家等」を「特定空家等」として定義しています。※6

具体的には次のような状態をいいます。

  1. (1)そのまま放置すれば倒壊など著しく危険となる恐れのある空き家等
    例)土砂が流出、土台・垂木・軒天が腐朽、など
  2. (2)そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある空き家等
    例)ねずみや害虫が棲息、など
  3. (3)適切な管理が行われていないために地域の景観を著しく損ねている空き家等
    例)枝木が散乱して通行の妨げとなっている、植物が建物を覆うほどに繁茂している、外装が剥落している、など
  4. (4)その他周辺の生活環境の保全のために放置することが不適切な状態の空き家等
    例)施錠などされておらず容易に侵入できる状態、など

単なる空き家なのか、特定空き家に当たるのかによって取扱いが大きく違ってくるため、この違いは非常に重要です。

※4…法第2条第1項

※5…「空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針」(総務省告示・国交省告示1号)

※6…法第2条第2項

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