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コラム vol.142
  • 土地活用法律コラム

古くなった賃貸住宅問題と空き家問題の解決へのヒント

第5回 空き家対策特措法と空き家問題の解決のヒント

公開日:2016/07/14

旅館の廃業に伴い遊休化していた資産

空き家対策特措法によって、空き家の所有者にどのような影響があるのかを説明します。
まず、空き家を所有しているというだけでは、所有者に義務・制裁・負担が課せられたり、処分を受けたりすることはありません。
ただ、空き家等に該当すると、市町村は、空き家等の所在と所有者を把握するための調査を行ったり※1、固定資産税情報を役所内部で共同利用※2したりできるとされています。

※1…法第9条第1項

※2…法第10条

他方、特定空き家に該当すると、所有者には次のような措置や制裁が課されます。

  1. (1)当該特定空き家等への立入調査※3
    拒否、妨害、忌避に対しては20万円以下の過料※4の制裁があります。

    ※3…法第9条第2項

    ※4…法第16条第2項。なお、「過料」は行政罰であり、罰金などの刑事罰とは異なる。

  2. (2)必要な措置をとるよう助言または指導※5

    ※5…法第14条第1項

  3. (3)助言または指導によっても改善されなければ、改善を勧告※6
    この勧告がなされると、固定資産税につき最大で6分の1、都市計画税につき最大で3分の1に減税する措置が受けられなくなるので※7、以前よりも税負担が増えます。

    ※6…法第14条第2項

    ※7…平成27年法律2号改正後の地方税法第349条の3の2第1項

  4. (4)正当な理由なく勧告に従わない場合、特に必要があれば命令※8
    命令違反に対しては50万円以下の過料※9の制裁があります。
    命令に際して、当該特定空家等に標識を設置するとともに、市町村広報への掲載、市町村ホームページなどで命令内容が公示※10されるので、所有者の氏名や住所も公になります。

    ※8…法第14条第3項

    ※9…法第16条第1項

    ※10…法第14条第11項・第12項

  5. (5)命令に従わない場合は、市町村が所有者に代わって必要な措置を執行(行政代執行)※11
    代執行にかかった費用は所有者から徴収されます。※12

    ※11 法第14条第9項

    ※12 行政代執行法第5条、第6条

このように空き家対策特別措置法は、特定空き家の所有者に対する措置や制裁について定めていますが、国や自治体は、次のように空き家の活用や空き家の解消を支援するために様々な施策を講じています。

  1. (1)空き家バンク

    空き家バンクは、空き家の所有者に物件情報を登録してもらい、インターネットを通じて、購入や賃貸を希望する人に物件情報を提供して、空き家のマッチングをサポートする仕組みです。
    これまで、各自治体が個別に開設しており、国交省の調査によると68%の自治体が開設していますが、自治体によって利用実績や取組状況に大きな相違があります。
    そこで、国(国交省)は全国の空き家や空き地の情報を集約して、購入や賃貸の希望者がインターネット上で条件に合う物件を見つけやすくするために、各自治体が個別に開設・運営する空き家バンクの情報を一元化することを検討しており、早ければ平成29年度にも開始する見込みです。
  2. (2)リフォームへの補助金

    空き家を活用するためのリフォームに対して補助金を支給する自治体もあります。
    ただし、リフォーム代金全額の補助ではなく、100万円までなど金額に上限が設けられ、支給対象者や補助の対象になるリフォーム工事の内容に制限が設けられていることが多いため、事前によく確認しておくことが必要です。
  3. (3)その他

    行政が空き家・空き地を借り上げて有効活用したり、解体補助金を支給することで解体を促し、空き家を物理的に減らしたり、空き家の寄付を募集して、若年層に固定資産税分の家賃で貸し出すなどの支援があります。
    最近、「民泊」解禁に関するニュースが頻繁に取り沙汰されていますが、この「民泊」も空き家が受け皿の一つになることを期待されており、これも法制度の改正を通じて空き家活用を国が支援しているといえます。

空き家の有効活用の方法

行政だけでなく、もちろん民間会社でも空き家・空き地の定期巡回・管理などのサービスを展開していますが、さらに最近では、空き家を改修して宿泊施設として再生・運営する事業などもスタートしています。
ここで空き家の有効活用の方法について整理しておきます。

1つ目は、空き家そのものや空き家を解体した敷地・跡地を自ら使用する方法です。
例えば、建物をリフォームして自分で住居として使用する、建物を解体して跡地を貸駐車場などにする、建物を解体して収益物件などに建て替える、などです。
フルリフォームするとなると、高額の費用がかかりますが、新築するよりは安上がりで新築同様になるため、人気が高いようです。
2つ目は、空き家そのものや空き家を解体した敷地・跡地を賃貸する方法です。
例えば、中古戸建として賃貸する、建物だけを売却して土地は建物の買手に賃貸する、建物を解体して更地にした上で土地のみ賃貸する、などの方法があります。
いずれも田舎暮らしや古民家の人気の高まりから、空き家の賃貸や売買のニーズが増えてきているようです。

最後は、空き家そのものや、空き家を解体した敷地・跡地を売却する方法です。
例えば、中古戸建として売却、建物を解体して更地にして売却、などの方法があります。

いずれの方法も、コストの点や、買手・借手の存在など一長一短ですので、空き家をご所有の方は当該空き家の状態やロケーション、資金面などを考慮の上、空き家の有効活用の豊富な経験・ノウハウのある専門家にご相談されることが重要です。

老朽化した貸家の建て替えのための立ち退きと空き家問題、いずれについても問題の所在と解決のヒントをご紹介しましたが、実際の問題解決にあたっては、それぞれの事案の特性に応じた見通しや判断を誤らないために、立ち退きや空き家問題の経験が豊富な専門の弁護士に相談することをお勧めします。

最後に、失敗しない立ち退きのために、ぜひ次の3点を押さえておいてもらいたいと思います。

  1. (1)家主側の事情、ご入居者側の事情、貸家の状態など、その時々の条件に応じて様々な解決方法があり、状況に応じて柔軟な対応が必要となるということです。
  2. (2)法律上の要件が十分でない場合にも、裁判をするのと変わらない条件で立ち退きが実現できるケースは少なくないということです。
  3. (3)初動対応を間違えると、有利な条件を潰してしまい、やむなく不利な条件で妥協するしかない場合があるので、初動が大事ということです。
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