住宅リノベーションと税務効果-1
公開日:2018/03/31
賃貸住宅のように、収益を上げるためのものへお金をかけてリフォームやリノベーションを行った場合は、修繕費としてその年の経費に計上するか、もしくは資本的支出として減価償却を通して何年かにわたり費用化することができるため、所得税の負担を減らす効果があります。
一方で、ご自宅にお金をかけて建物等の改修等を行った場合には、支払った金額は個人的な支出(家事関連費)であり、税務上はどの経費にも計上することはできないため、所得税には直接影響がない場合が一般的です。
しかし、一定の条件が整った場合には、所得税の軽減効果が生まれることがあります。
所得税に関する税務上の主な取り扱い
(1)住宅借入金等特別控除
住宅ローン等を利用して、ご自宅を取得し又は増改築等をし、平成33年12月31日までにご自身が住んだ場合に下記の要件等をすべて満たすときは、一定の金額をその年分以後の各年分の所得税額から控除できます。
〈主な要件〉
- ・新築等の取得をした日から6ヵ月以内に居住を開始し、その年の年末まで続けて住んでいる
- ・その年の合計所得金額が3000万円以下
- ・住宅の床面積が50m2以上で、その床面積の半分以上をご自身の居住用としている
- ・10年以上の期間の返済期間の住宅ローンがある、
など
〈控除額〉
- 平成33年12月31日までに住み始めた場合は、各年末借入金残高の1%を10年間控除
(2)住宅耐震改修特別控除
古いご自宅に限りますが、平成33年12月31日までの間に、ご自身が住んでいる家屋について住宅耐震改修をした場合に次の要件をすべて満たせば、一定の金額を所得税額から控除します。
〈主な要件〉
- ・昭和56年5月31日以前に建築されたものでご自身が住んでいるもの
- ・現行の耐震基準に適合する耐震改修工事であること、
など
〈控除額〉
- 住宅耐震改修に係る耐震工事の標準的な費用の額の10%(最高25万円)
(補助金等の交付を受ける場合には補助金の額を控除した金額)
(3)住宅特定改修特別税額控除
ご自身が所有しているご自宅の建物に耐久性向上改修工事(住宅耐震改修や一般省エネ改修工事と併せて行うものに限ります。)を行い、当該家屋を平成33年12月31日までの間にご自身が居住されたときに、一定の要件をすべて満たせば、一定の金額をその年分の所得税額から控除します。
〈主な要件〉
- ・住宅耐震改修か一般省エネ改修工事を併せて行うこと
- ・ご自身の家屋について、耐久性向上改修工事をして、平成33年12月31日までの間にご自身がお住まいになること
- ・その年の合計所得金額が、3000万円以下
- ・認定を受けた長期優良住宅建築等計画に基づくものであることなど一定の要件を満たすものであること
- ・耐久性向上改修工事に係る標準的な費用の額が50万円を超える
- ・工事をした後の住宅の床面積が50m2以上で、その床面積の半分以上をご自身の居住用としている、
など
なお要件さえ満たせば、上記の(1)と、(2)または(3)のいずれかを併用して適用することができます。
上記の各種特別控除は、所得控除ではなく税額控除となるところが税務効果の高くなる要因です。計算された控除額の金額が、そのまま所得税から差し引かれるので所得税の負担が減る効果をより受けられるものとなります。
いずれの場合も、要件等は詳細に決まっているので実際には税理士等に確認をしていただくことをお勧めいたします。
一般的に、経費を作ることで不動産所得を減らし、その結果として所得税の軽減が図れるということは皆様ご存じですが、ご自身の居住用にお金をかけても所得税の軽減を図ることができる場合もあることを改めて認識することも、今後の資産対策を検討する上で有効ではないでしょうか。
さらにまた、税金軽減の話という現実的な部分のほかに、次世代へ美しく機能的なご自宅という財産を残すために、ご家族で「家」の話をする対話の機会も作れるという副産物も生まれるのではないでしょうか。