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コラム vol.249-2
  • 土地活用法律コラム

認知症の親の介護に困らない「家族信託」第2回 財産を凍らせない三つの方法

公開日:2018/08/30

POINT!

・「 委任契約公正証書」と「任意後見公正証書」を合わせた「移行型任意後見契約」は効果的

・名義だけの変更が可能になる第3の方法「家族のための信託」

・「信託」も万全ではなく、遺言がなければ相続人の全員の合意が必要

認知症になる前に、「任意後見制度」、「家族のための信託」、「遺言」で対策をしましょう。

元気なうちに成年後見人を選べる「任意後見契約」

「任意後見」とは、本人がお元気なうちに「いざというとき(ご本人の判断能力が不十分になったとき)には、この人に判断を任せる」と決めておく(「任意後見契約」を結ぶ)制度です。

この「任意後見契約」をするには「任意後見公正証書」を公証役場で作成しなくてはなりません。また、どのようなことを代理してもらうかは事前に決めておく必要があります。

任意後見は判断能力がなくなってから効力が生じますが、その前の段階、つまり、ご本人の判断能力はあるけれども、体の機能が衰えて外出ができないときなどに効果を発揮する「委任契約」と併せ、公正証書にしておきます。この「委任契約公正証書」と「任意後見公正証書」を一つに合わせた「移行型任意後見契約」がお勧めです。

この契約を結んでおくことで、お元気な間はご本人が代理人に指示をして、将来、必要になったときには自分が選んだ親族などの信頼できる人に成年後見人になってもらうことができます。

注意をしたいのが、これらの制度も万能ではなく、任意後見契約の場合、ご本人の判断能力が衰えると、後見人の候補者が裁判所へ、別途、後見監督人を選任してもらうように申し立てなければなりません。後見監督人は通常、弁護士や司法書士などが就任します。そして、ご本人の財産が裁判所の監督下に置かれますので、法定後見と同様に、ご本人のために財産を守り、原則的にご本人のためだけに財産を使わなくてはならなくなってしまいます。例えば、金額の大きい買い物をするとなれば、事前に「これに使ってもよろしいでしょうか?」と後見監督人におうかがいを立てることになります。
財産を守る面が強くなってしまうため、ご本人のための行為が制限されてしまう可能性も出てきます。
また、後見監督人には報酬が発生します。金額は法定後見人の報酬よりも安くなりますが、ご本人の財産が少しずつ目減りしていくことに変わりはありません。
任意後見と法定後見とを比較すると、ご本人が消費者被害に遭った場合などに、法定後見ではその契約を成年後見人が取り消しできますが、任意後見では取り消しまではできません。

移行型任意後見契約

「家族のための信託」ならば、名義を書き換えて財産の管理を託せる

今までは「生前に名義を変えたい……」と希望した場合には、「贈与」もしくは「売買」しかありませんでした。しかし、今は財産自体の権利はそのままにして、名義だけの変更が可能になる第3の方法、「信託」があります。「信託」といっても、信託銀行や信託会社が関与する投資信託などの金融商品の信託とはまったくの別物です。

「家族のための信託」とは、ご本人様がお元気な間に、その「名義」だけを「信頼できる家族や法人」(「受託者」といいます)に変更し、その財産権(売却代金や家賃などで「受益権」といいます)についてはご本人様がそのまま受け取るようにする、他にない契約です。このときに受益権を受ける人を「受益者」といいます。

「信託」は「委任」や「任意後見」のように、「本人の代理ではない」ので、ご本人が認知症になった後も、お亡くなりになった後も影響を受けることなく、「受託者」が自分自身で資産の管理・運用・処分をすることができます。ご本人と受託者の間できちんと契約さえしていれば、そこに書かれている法律行為(不動産の売却や金融資産の運用など)が、ほぼ思いどおりにできます。

ご本人が利益を受け取る「信託」は財産権の移転がないので、贈与税はかかりませんし、売買代金も不要です。

家族信託のなりたちと仕組みについては、前回のコラム、「信託のキホン」を参照してください。

「遺言」も必要

しかし、実は信託も「万能」ではありません。信託は財産管理の方法ですので、ご本人が認知症になったときに遺産分割協議に参加したり、医療や介護などの手続きを行う際には後見人を必要とします。また、信託しなかった財産や信託契約日以降に新しく発生した財産は相続のときに遺産となり、遺言がなければ相続人の全員の合意が必要です。

そこで、(1)信託、(2)委任契約及び任意後見契約、(3)遺言の「3点セット」をお勧めします。

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