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コラム vol.373-1
  • 不動産市況を読み解く

減り続ける世帯構成人員と求められる住まいの変化(前編)

公開日:2021/10/29

POINT!

日本の世帯数は約5572万世帯、5年前に比べプラス4.2%増加した

1世帯当たりの平均世帯構成人員は2.27人となった

単独世帯の増加に伴い、住宅需要の変化が考えられる

増え続ける単独世帯と課題

わが国においては、1960年代から核家族化が進み、今では世帯別では単独世帯が最も多くなっています。東京都の平均世帯構成人員は2015年の国勢調査で1.99人、(速報値のため確定値ではありませんが)2020年では1.95人となっており、平均世帯構成人員は2人を切っているのが現状です。この傾向は、東京都などの大都市部だけの傾向ではなく、全国的な傾向となっています。
単独世帯が増える理由として、晩婚化や離婚の増加、未婚者数増加などが背景にあると考えられていますが、1 人で暮らす高齢者が増えていることも大きな要因です。最近では、「1 人で暮らす高齢者ケアをどうするか」が社会問題化してきています。また、世帯構成が変わると「求められる住宅」が変わります。
都市部でのコンパクトサイズの賃貸住宅需要は高まるばかりですが、その一方地方では、かつて家族で暮らしたような住宅が空き家として多く存在することになりました。

2020年国勢調査:世帯数の速報値

2020年に調査された最新の国勢調査の一部が2021年6月に速報として公表されました。2020年10月1日時点(調査時点)での日本の世帯数は約5572万世帯、この5年で約227万1000 世帯増加しました。増加率はプラス4.2%となっています。世帯数は、一貫して増加しており、前回(2010年から2015年)の増加幅は2.9%でしたが、今回調査で前回から4.2%と増加幅が大きくなりました。これは核家族化がさらに進み、加えて単独世帯がかなり増加していることが要因だと推測されます。また、1世帯当たりの平均世帯構成人員は2.27人となっています。
世帯数が増えていることは住宅需要が増えることにつながります。一方で、世帯構成人員の変化は、「どんなタイプ(=広さや間取り)の住まいの需要が増えるか」を占う指標になります。今回は、世帯構成人員の推移を分析し、「どんな住まいの需要が増えるか」を考えてみましょう。2020年調査分の国勢調査における世帯構成人員の詳細は、執筆時2021年10月20日時点で公表されておらず、また速報から確報で数字が変わる可能性があるため、以降のデータは前回(2015年)の国勢調査の数字を用いています。
また、調査結果は修正される可能性がある(傾向や分析内容に違いが出るような大きな修正は通常はありません)ことをご承知おきください。

少ないのは都市部だけでない!都道府県別世帯構成人員

冒頭で東京都の世帯構成人員が2人を下回っていることをお伝えしました。2015 年の東京都の平均世帯構成人員は1.99人でしたが(四捨五入して2.0 人と報道しているメディアも多い)、が2020 年は1.95 人となっています( 速報値なので修正の可能性あり)。
しかし、都道府県別で世帯構成人員が少ない順に並べると地方も上位に顔を出しています。

図1:世帯構成人員(2015年)

単位:人
総務省統計局「平成27年国勢調査」より作成

図1は、2015年国勢調査での、都道府県の平均世帯構成人員を少ない順に並べたものです。2015年の全国の平均世帯構成人員は2.33人でした。
東京都の次に少ないのは北海道、鹿児島県、高知県と続きます。これらの県では1 人で暮らす高齢者が多いものと思われます。特に過疎化が進む高知県や鹿児島県では一人暮らし高齢者の住まいと介護(ケア)をどうするかが今以上に大きな問題となってくるでしょう。順位は、大阪府、京都府、福岡県、神奈川県と主要都市が続きます。全国平均を下回るのは、13都道府県で、残り44県は平均以上の世帯構成人員となります。

世帯構成人員が少ない傾向の西日本と賃貸住宅需要

全体的な傾向として、世帯構成人員は西日本( 関西・四国・中国・九州)が少なく、20 位以内でそれ以外の都道府県は、東京都、北海道、神奈川県、愛知県、千葉県の4つだけです。何度か「土地活用ラボ」で書きましたが、西日本では賃貸住宅に住む文化が昔から根強く、都市部でなくとも賃貸住宅需要が旺盛な地域といえます。同時に、これら地域では旧耐震基準で建てられた賃貸住宅がまだ残っている地域も多く、それらの建て替えをどうするかという課題も今後出てくるものと思われます。

世帯構成人員が多い日本海側地域と戸建て需要

逆に、世帯構成人員の多い県を見てみると、山形県、福井県、佐賀県、富山県、新潟県と続きます。お気づきの方も多いかもしれませんが、佐賀県を除きこれらの県は、「持ち家比率が高い」県として知られ、特に戸建てに住む方が多い地域です。「結婚して家庭を持ったら戸建てを建てて住む」という風潮が見られます。しかし、とはいえ最も世帯構成人員が多い山形県でも2.78人で、3 人を下回っているのが現状です。今後は、賃貸住宅需要が増えてくる可能性が大いにあります。

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