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  • 土地活用法律コラム

コラム vol.091

ケースで学ぶ「土地活用と法律」(1)
万が一、賃貸物件が乗っ取られたらどうする?

公開日:2015/10/30

事例(1): 万が一、賃貸物件が乗っ取られたらどうする?

最初の事例は、テナントビルを所有する方が麻雀店としてテナントの一画を賃貸していたところ、管理会社による管理も不十分だったためか、いつの間にか反社会的勢力の事務所控室のように使用されていたケースです。
借主とは連絡が取れなくなってしまい、賃貸したテナントはほとんど人の気配がなく、居室内は机や衣類が散乱し生活感もない。しかし、郵便ポストには見知らぬ名前宛にダイレクトメールなど溜まっている…という状態でした。

仮処分の必要性

このように不動産が第三者に占拠されてしまった場合、不動産所有者としてはどのように対処すべきでしょうか。このような場合でも所有者は勝手に鍵を開けて入ったり、荷物を処分したりすることはできません。自力救済は原則として禁止されているからです。
所有者として、まず、裁判所に建物明け渡しを求める裁判を提起することが考えられます。
もっとも、裁判所が建物明け渡しを認める判決を出しても、裁判の途中で占有者が入れ替わってしまっていたら、無駄な裁判になってしまいます。なぜなら、判決は原則として判決書に記載された当事者にしかその効力が及ばないからです。
そこで、不法占拠者が勝手に占有を移転させてしまわないように、占有移転禁止の仮処分を裁判所に申し立てます。
このケースでは、不法占拠者、その者による占拠の範囲の特定が困難を極めたのですが、周辺の聞き込みや郵便物により可能な限り特定して、不明な部分については「本件仮処分命令執行の時において別紙物件目録記載の建物の占有をする者」という記載で対応しました。
その結果、裁判所から占有移転禁止の仮処分の決定を出してもらうことができました。

建物明渡訴訟の提起

仮処分決定が出たら、次は建物の明け渡しを求める訴訟を提起します。
今回のケースでは借主、占有者はテナント内に居住はしていなかったので、建物明渡訴訟は被告の欠席ですんなりと請求認容判決が出されました。

明渡断行

建物明渡請求を認める判決が出たら、その判決に基づき強制的に占有を取り戻す、いわゆる強制執行をしていくことになります。
開錠業者、動産撤去業者が集まり、執行官立ち合いのもと、対象となったテナントビルから不法に占拠していた動産を撤去して所有者に占有を回復することができました。
今回のようなケースは非常にまれだと思われますが、賃借人の債務不履行による建物を明け渡しを求める場合でも、基本的には上記のような手続きが必要になります。賃借人と連絡がとれない、賃料が遅れるようになった、など不自然な事態が起こったら早めに対処することが大切です。

事例(2): 公道に出られない競落物件?!

建物正面入り口がAさん所有の私道に面しており、建物から公道に出るためには建物裏側の勝手口から出るか、Aさん所有の私道を通行する必要がある土地建物をBさんが競落した事例です。
この土地建物が競売にかけられる以前は、建物所有者とAさんが私道を通行する権利、地役権を設定していました。

この通行地役権が消滅した土地建物を競落したBさんは、無償でAさんの土地を通行できる権利である囲繞地(いにょうち)通行権(民法210条)を主張できるのでしょうか。それとも、Bさんが公道に出るためにAさんの土地を通行するには有償で通行地役権を設定する必要があるのでしょうか。
Aさんは、これまで有償で通行地役権を設定していたのに、突然、競落した人が無償で通行されるのは納得できないと相談に来られたのでした。
裁判所は、Bさんが競落した土地が袋地になった経緯(かなり古い公図までさかのぼって調査しました)、従前の通路、現在の通路、各土地の地形的、位置的状況などから、Bさんの無償の囲繞地通行権は認めませんでした。
結果的に、Bさんは、Aさんの土地を通行して公道に出るのが最も簡便だったため、Aさんと有償で地役権を設定する契約を結びました。
競売物件を競落するときは十分権利関係について調査することが必要ですし、現在の権利関係を判断するには過去の古い公図が役立つこともあります。

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