- Livnessトップ
- くらし情報コラム
- 相続手続きは誰に何を依頼する?弁護士、税理士、司法書士、行政書士の違いを詳しく解説
コラム
<相続>
相続手続きは誰に何を依頼する?
弁護士、税理士、司法書士、行政書士の
違いを詳しく解説
相続では、たくさんの法的手続きが発生します。自分でできるものもありますが、中には専門家に頼らなければ難しいケースも。相続では法的手続き以外にもやるべきことは多く、他人の手を借りたほうがいい場合も考えられるでしょう。依頼先は、弁護士、司法書士、税理士、行政書士と、解決したい内容によって異なります。誰に何を依頼すべきか、詳しくご説明します。
相続の流れと専門家別の対応業務一覧表
まずは相続がどのような流れで行われるのか、時系列で確認しておきましょう。相続の基本の流れは次の通りです。
遺言書の有無の確認
相続が発生したら、まずは遺言書の有無を確認します。
相続人の調査
遺言書がない場合や、遺言書に載っていない相続財産があれば、亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍を取り寄せて、法定相続人となる人を確定させます。
相続財産の調査
亡くなられた方の財産だけでなく、借金などの債務を調べます。
相続放棄と限定承認の選択
相続財産の調査後、すべての財産や債務を受け継がない場合は「相続放棄」、亡くなられた方の財産から借金を支払うなど条件付きで相続する場合は「限定承認」を選択します。いずれも、相続があったことを知った日から3カ月以内と期限が決まっています。
遺産分割協議・遺産分割協議書の作成
遺言書がない場合や遺言書に記載のない相続財産がある場合は、相続人となる人たちが遺産をどう分けていくか、「遺産分割」を協議し、相続人の合意の証明として「遺産分割協議書」を作成します。
相続登記や名義変更、相続税の申告・納付
相続した土地や建物を相続人の名義に変更する「相続登記」を行います。相続税がかかる場合には申告と納付が必要です。相続税の申告と納付の期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内です。
2024年4月1日より相続登記が義務化されました。不動産の所有権を相続した方は、「相続の開始および不動産の所有権を取得したことを知った日」から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。相当な理由がないのに、義務に違反した場合10万円以下の過料が科されることがあります。
法律や法的手続き、法的書面(法的効力を持つ契約書など)の作成に関する専門家としては、弁護士、司法書士、税理士、行政書士が代表的な士業です。ただし、それぞれに対応できることが異なり、「誰か一人に依頼すれば相続に関するどんな問題も解決する」ということはありません。自分の困りごとを対応できる専門家はどの士業なのか、理解しておくようにしましょう。
相続に関する士業の対応可能な業務内容は次の通りです。
- ※1 代理申請を除く(書類を家庭裁判所に提出するまで)
- ※2 司法書士に任せるケースが多い
- ※3 税理士業務が可能な弁護士に限る
- ※4 認定司法書士に限り、140万円以下の遺留分侵害額請求に関する対応は可能
相続に関するトラブルは弁護士に相談を
弁護士は、相続に関してもっとも多くの問題に対応できる「トラブルの専門家」です。相続に関して弁護士に依頼できることは次の通りです。
- ・遺言書検認の申し立て
- ・法定相続人の調査
- ・相続財産の調査
- ・遺産分割協議書の作成
- ・相続放棄の申し立て
- ・不動産の名義変更(※多くの場合は司法書士に依頼)
- ・預貯金の解約、払い戻し
- ・有価証券などの名義変更
- ・相続税の申告(※税理士業務が可能な弁護士に限る)
- ・相続人同士の争いにおける交渉、解決のために必要なこと
弁護士は「相続税の申告」を除く、ほとんどのことに対応可能ですが、直接遺産相続手続きを行うことはありません。弁護士に依頼するケースでは、相続人間で話し合う遺産分割協議など、トラブルや裁判調停に発展しそうな遺産相続手続きや、紛争になる可能性が高い遺産分割協議などです。解決が難しいとされる相続問題については、まず弁護士に相談するのがよいでしょう。また、相続税の申告などに対応できる弁護士もいますが、基本的には「税理士」が税金の専門家です。
不動産登記や相続放棄は司法書士に相談を
司法書士は不動産登記の専門家です。相続財産の中に不動産が含まれている場合、その登記申請の代理も対応してもらえます。また、認定司法書士に限りますが、相続人同士の争いにおける交渉、解決のために必要な手続きも可能です。
相続に関して司法書士に依頼できることは次の通りです。
- ・遺言書検認の申し立て(※代理申請を除く)
- ・法定相続人の調査
- ・相続財産の調査
- ・相続放棄の申し立て(※代理申請を除く)
- ・遺産分割協議書の作成
- ・不動産の名義変更
- ・預貯金の解約、払い戻し
- ・有価証券などの名義変更
- ・相続人同士の争いにおける交渉、解決のために必要なこと(認定司法書士に限る)
相続するものに不動産がある場合には、司法書士に相談しましょう。また、「書類の作成のみ」という場合も、多くは司法書士に依頼すれば問題ありません。ただし、相続全般に関する相談やトラブルの解決、代理申請などについては依頼できません。弁護士に依頼するようにしましょう。
相続税や税務調査は税理士に相談を
税理士は、主に税金に関する業務に対応することが可能です。相続税が発生する場合には、税理士に相談しましょう。相続に関して税理士に依頼できることは次の通りです。
- ・法定相続人の調査
- ・相続財産の調査
- ・遺産分割協議書の作成
- ・相続税の申告
- ・預貯金の解約、払い戻し
- ・有価証券などの名義変更
相続というと納税の大変さが注目されますが、相続税は大きな控除もあり、「そもそも相続税が発生しない」という場合も多いものです。ただし、さまざまな形で遺産があり、この計算自体がご自身で難しい場合なども、税理士への相談が有効だと考えましょう。
不動産が含まれていない遺産相続は行政書士に相談を
行政書士は国や地方に提出する書類の作成や手続きを行う専門家です。行政書士の業務範囲は広く、それぞれに得意不得意があります。すべての行政書士が遺産相続手続きに対応できるわけではありませんので、確認してから依頼しましょう。相続に関して行政書士に依頼できることは次の通りです。
- ・法定相続人の調査
- ・相続財産の調査
- ・遺産分割協議書の作成
- ・預貯金の解約、払い戻し
- ・有価証券などの名義変更
相続に関して特にトラブルがなく、相続するものに不動産を含まない場合には、相続関連の書類作成を行政書士に依頼しましょう。たとえば、遺言書があり、相続内容が明確であれば、行政書士に依頼したほうが安心でしょう。
依頼する専門家は用途によって決めよう
監修:渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、起業コンサルタント®)1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年に独立し、司法書士事務所開設。2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。
著書『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’22~’23年版』(成美堂出版)
商業登記・相続登記に特化した司法書士事務所V-Spirits (https://www.pright-si.com/)
※掲載の情報は2024年4月現在のものです。内容は変わる場合がございますので、ご了承ください。
写真:Getty Images