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コラム No.20-9

PREコラム

「官民連携による地域活性化への取組を探る」(9)伝統工芸品のブランド化による地域再生プラン ~伝統工芸品の近代化~

公開日:2017/08/25

来日する外国からの観光客がよく口にすることですが、近代都市の中に、神社や仏閣をはじめ、歴史ある建造物や庭園などが混在していることに驚かされるといいます。地域全体を歴史的な遺産として保存している都市は、欧州などによく見られます。我々日本人にとっては、非常に壮大で魅力的な景観です。しかし、木造建築の多かった日本においては、都市全体をそのままの様式で残すことは難しく、近代になって鉄筋コンクリート製の建造物に置き換わっていったことは、必然的なことだったと思います。その過程の中でも、歴史的に重要な建物や庭園、人々が代々崇拝してきた物件などを残している、その感性こそが、多様性豊かな独特な日本文化として醸成されているのでしょう。
伝統工芸についても、同じようなことが言えるのではないでしょうか。産業構造が変わる中で、伝統工芸品の制作に必要な材料や道具、職人が不足し、伝統工芸を将来に残すことが難しくなっています。ひょっとすると、伝統的な地域産業の衰退を防ぐために、伝統的工法を守りつつ、新素材を用いて、CAD/CAMやNC旋盤、3Dプリンターなどを使った量産型商品を開発したり、全く新しい分野へ伝統技術を応用したりする試みが必要なのかもしれません。

仙台箪笥の伝統工芸を使った家具市場の開拓~門間箪笥店の挑戦~

ダウンサイジングで場所をとらない、小箪笥二つ抽

仙台箪笥は、岩手県の岩谷堂箪笥や大阪泉州桐箪笥と並び称される、日本の代表的な和箪笥の一つです。仙台箪笥は、江戸時代末期に仙台藩の地場産業として生まれ、武士たちが好んで愛用したといわれています。その特徴は、指物・塗(漆「木地呂塗り」)・飾り金具の「三技一体」による堅牢な美しさにあり、大変重厚な作りであるため耐久性に優れていることから、仙台地域では親から子へ代々使い続ける箪笥として珍重されてきました。
その仙台で、1872年に創業した門間箪笥店(屋号は「門間屋」)は、分業であった指物・塗・金具のそれぞれの職人を自社で雇い、一棹まるごと制作できる体制を整備することで、技術を集約し、伝統工芸の継承に尽力してきました。しかし、仙台箪笥は明治から大正中期をピークに、生活様式の変化などから、一棹4尺で200万円もする高級箪笥は敬遠され、販売が衰退していきます。
そのような仙台箪笥の伝統技術を現在守っているのが、大手企業を退職し家業を継いだ7代目の門間一泰氏です。今年で経営6年目という一泰氏は、現在20名程という仙台箪笥職人の育成を図りつつ、サイズダウンした整理箪笥や、デザイナーものの調度品などの新作、伝統的な木工技術を生かした家具などの製造に挑戦しています。その業績は、数々のグッドデザイン賞を受賞するなど、国内で認められてきており、中流層マーケットへの拡販が期待されます。また、アジアを中心に、海外にもその技術の高さが認知されてきており、ダウンサイジングした低価格版の箪笥の販売が好調のようです。伝統技術を継承しつつ、マーケットのニーズに合った多様な作品に挑戦する若きスピリッツがここにもあります。

「仏都三条」の木工職人集団が新たな市場を開拓~マルナオの挑戦~

伝統技術の粋を極めた、極上八角箸

新潟県三条市は、「仏都三条」とも呼ばれ、法華宗総本山「本成寺」や浄土真宗大谷派「本願寺別院(東別院)」などが立地しています。そのため古来、寺院の建立や補修にあたり、宮大工や指物師、塗師、金具師などの職人が多く集まり、木工技術が集積したといわれています。「燕三条」といえば、金属加工のイメージがありますが、三条市においては、その高い木工技術が認められ、「三条仏壇」は伝統的工芸品として国の指定を受けています。
その三条市で、伝統的な木工技術を継承しつつ、全く新しい商品を製造し高い評価を受けているのが、マルナオ株式会社です。
マルナオ株式会社は、神社仏閣の彫刻師であった福田直悦氏が1939年に創業、大工道具の墨坪車(すみつぼぐるま)の製造を開始しました。この墨坪車は、緻密な龍の彫刻などが施され、高い精度と芸術性を兼ね備えたていることが大きな特長です。
しかし近年になり、大工道具の市場が年々縮小傾向になったことから、新たな事業の柱が必要となりました。この状況を打開したのが3代目の福田隆宏氏です。隆宏氏が着目したのが、黒檀や紫檀を用いた箸の製造でした。
マルナオの箸の特徴は、先端を限りなく細くし、持ち手から先端まで八角形の形状に統一していることです。簡単なようですが、箸を削る際のテンポや集中力が重要で、ベテランの木工職人でも高いセンスが求められるそうです。この高級箸は、国内で予想以上に反響を呼び、販売も伸びていきました。一方海外では、評価は高いものの、食文化の違いから、販売は低調だったようです。そこで、海外文化にもなじむステーショナリー(レターオープンナー、定規など)やカトラリー(ナイフ、フォーク、スプーンなど)の製造を始めました。ステーショナリーやカトラリーは、箸に比べて比較的作りやすいため、箸製造に至る技術の鍛錬としても意味があるそうです。
マルナオは、これらの挑戦により、大工道具専業時代に比べて業績が拡大しており、地域産業へ大きく貢献しています。

伝統工芸品メーカーの多様な挑戦

門間箪笥店とマルナオの挑戦を見ると、共通するところがいくつかあります。 一つは、両社とも若い世代への事業承継が引き金となり、新しい分野への挑戦が始まっていること。そしてもう一つが、伝統技術で高い精度と芸術性を兼ね備える作品という位置に甘んじず、「実用性」を追及していることです。つまり、日常的に使用する商品の製造・販売を続けなければ、事業の継続が難しいことに危機感をもって、一歩踏み出す決断をしているところです。
一方、違いもあります。地域の伝統工芸を見ると、木工加工や塗装、金具など、職人の分業が見られ、それらを取りまとめる問屋機能が商品のプロデュースを行っていることが多いようです。門間箪笥店などは、その典型と言えるのではないでしょうか。しかし、マルナオの場合は、大工道具の製造という独立した職人企業が、自らマーケットの開拓を行っています。また、大工向けのBtoB業態を、大胆に最終消費者向けのBtoC業態に展開しています。それも、国内外を問わずにニーズに対応しようとチャレンジするところは、特筆すべき事例ではないでしょうか。まさに「職人技の道は世界に通ず」ということでしょう。

地域の伝統工芸品の取組事例を見ていると、海外展開へのハードルを、比較的簡単に飛び越えていることがわかります。ネット時代となって情報網が発達し、海外の消費者ニーズが取り込みやすくなり、そのネット社会で育った若い後継者の新しいマーケット感覚がそうさせているようです。しかし、やはり一番の要素は、伝統工芸の高い品質が世界に受け入れられているのだと思います。大量生産、大量消費時代から少量多品種、品質重視への市場の動きの中で、豊かさを求める人々のニーズが変化して、日本の伝統工芸が世界で評価される素地が生まれてきているように思うのです。

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