土地活用ラボ for Biz

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コラム No.44-3

CREコラム・トレンド

観光における地方の不動産流動化・証券化(3)観光における地方の不動産流動化・証券化

公開日:2017/12/27

内閣府は今年5月、地方創生の推進に向けて、地方で拡大する観光や健康関連の事業に対して安定的に不動産を供給するため、「地方創生に資する不動産流動化・証券化に関する意見交換会」を開きました。3回にわたって開催された意見交換会を通して、地方創生における不動産証券化を見ていきます。

100日の黒字と265日の赤字

第3回会合のテーマは「観光分野における地方の不動産流動化・証券化について」。観光庁が2017年3月に発表した宿泊旅行統計調査によれば、2016年の延べ宿泊者数は4億9418万人泊(前年比▲2.0%)。このうち日本人の延べ宿泊者数は4億2,330万泊(▲3.5%)でしたが、外国人延べ宿泊者数は7,088万人泊(8.0%)。最近は、外国人の観光客を見ることが増えており、都市部だけでなく、地方においても外国人旅行者が増加していることを実感します。

「ご当地のご当地によるご当地のための」ヘルスケアファンド ~地域社会における資金循環の実現

< 三大都市圏 >

< 地方部 >

出所:観光庁の2016年宿泊旅行統計調査より一部抜粋

また、客室稼働率は全体で60.0%。シティホテルが最も高く78.7%、ビジネスホテルは74.4%、リゾートホテルは57.3%でした。しかし旅館は37.9%と昨年を.0.9ポイント上回ったものの、ここ数年は30%台が続いています。統計数値を全体で見れば堅調に見える観光業界ですが、低迷するホテル・旅館が少なくないようです。

会合の席ではホテルや旅館の現状について意見が出ました。出席者の一人は「一般的には、ホテルや旅館などの宿泊業は、365日のうち100日は黒字だが、残りの265日は赤字」と述べました。観光シーズンは年間で3か月強、それ以外は閑古鳥が鳴いているというわけです。従って稼働率は年間で見れば35~40%にとどまり、正社員を十分雇うことは難しい状況です。会合では、「夏休みを分散したり、ゴールデンウィークを地域ごとに取得できれば、年間を慣らして利用者が確保できるのだが」という意見が出ました。また高い交通費も課題で、「韓国から羽田には1万円で来ることができても、そこから北海道や沖縄に行くと3万円かかる」との指摘がありました。

求められるオペレーターの運営能力

ホテル・旅館業界が抱える大きな課題は、(1)低い収益性(2)後継者不足(3)耐震化への対応――といわれています。こうした課題に対して、出席した日本政策投資銀行では、融資だけでなくM&Aやコンサルティングなどの支援を展開しています。2015年からは、星野リゾートと連携して「ホテル旅館リニューアルファンド」を創設しました。同行には業績不振や事業承継など多くの相談が寄せられており、今後は事業承継問題に対して流動化手法を活用していくことを考えている、と語りました。

日本政策投資銀行と星野リゾートによるホテル旅館リニューアルファンドの仕組み

出所:日本政策投資銀行の第3回意見交換会提出資料より一部抜粋

ホテルリートの立場から出席した星野リゾート・アセットマネジメントは、「不動産の価値は、不動産が生むキャッシュフローで決まると考えている。価値がないと見られがちな木造の建物でもリートに組み入れている」と話しました。世界のホテル業界では、所有と運営の分離が進んでおり、ホテルの所有者と運営会社が各自の強みを活かして相乗効果を発揮する手法として一般的であると強調しました。

不動産の証券化・流動化においては、それを運営する能力のウエートが物件によって異なり、収益に影響を与えます。例えば、オフィスビルや賃貸マンションなどでは土地の場所と建物のグレードが収益力の大半を決めるといわれます。交通至便で地の利があり、仕事がしやすく住みやすい建築構造ならば、入居率(稼働率)は安定するからです。

一方、ホテル・旅館や病院・介護施設などのヘルスケア施設は、接客スタッフや医療従事者のサービスレベルや施設の充実など、施設の運営にあたる人たちの能力が収益に大きく影響します。人と人のつながりが濃密である分、オフィスや物流施設とは、訳が違うのです。ホテル・旅館の証券化・流動化は、オペレーター(運営者)の能力が問われるのです。

古民家を地域に溶け込ませる

空き家の活用を通じて地域活性化を展開している地域再生推進法人「ノオト」(本社・兵庫県篠山市)。民間資金を活用した古民家再生を拡大するため活動し、歴史資源を活用したまちづくりを実践しています。観光産業の地域ではないところでも、人口減少や少子高齢化で空き家が多く発生している地域や農村地域で空き家を使い、交流人口型の観光客を呼び込む事業を展開しています。

出席した同法人の関係者は、「古民家の所有者が個別に再生すると全体としての価値が出しにくい。そこで我々が一括して預かり、昔の町割りや建物の状態を活用して分散型でまちのコンテンツに変えていく方式で事業を行っている」と話します。

同法人の本社がある篠山市は築城400年を超える篠山城を戴く古い城下町。空き家となった古民家を5棟12室の宿泊施設として再生し、ホテル事業者を誘致。そこにカフェやレストラン、ジュエリー作家などを呼び込んで町全体を一つのホテルに見立てて事業者を分散配置しています。移住者は24人。従業員49人と地域活性化の効果が現れていると説明しました。篠山市の近隣にある朝来市では、築400年の酒蔵を再生。自治体に寄付された物件ですが、自治体は運営費用を負担せず、民間事業者が借りて宿泊施設に再生し、収益の中で運営維持管理費を捻出しています。

ノオトが目指す地域再生

「歴史地区の創造」という地域再生戦略

人口減少、少子高齢化が進行する歴史地区(城下町、宿場町、集落)を、地域の空き家と歴史文化を活かして再生する。

  • ・古民家等の歴史的建築物と地域の食文化、生活文化を一体的に再生
  • ・文化財や町並みを活用した音楽祭、アートフェス、マルシェのほか、ブライダルやコンペティション等の事業を展開
建物 用途 事業者 産業
古民家 カフェ、レストラン シェフ、パティシエ、バリスタなど 食文化産業
工房、ギャラリー 工芸作家(陶芸、布、和紙、ガラス、彫金・・・) クラフト産業
宿泊施設 ホテル事業者 観光産業
サテライト・オフィス IT技術者、デザイナー 地域 ICT 産業
(上のほか住宅等) 大工、左官、家具、茅葺職人など 修復産業
 
空き家の活用

若者の地方回帰

雇用と産業の創造

出所:ノオトの第3回意見交換会提出資料より一部抜粋

また12戸の小さな集落だった同市の農村地区である丸山集落では、増加する空き家を当時建った状態に戻す再生手法で一棟貸しホテルに変え、料理など集落の歴史文化を体験できるコンセプトで運営したところ、空き家や耕作放棄地が減少するなど集落が再生しているといいます。

当初、丸山集落を視察した都市部のコンサルティング業者は、どんな手段を使っても再生は不可能だと断言したそうです。しかし、ノオトはこの見解に「従来のコンサルタント業者は、地域や地方がどう再生するかではなく、自分たちが儲かるかどうかを判断の指標にしているのでうまくいかない」と、異を唱えます。

畑の地域食材を使った料理などでもてなしに力を入れ、1泊3万円からの料金設定にしたところ、稼働率30%で初年度から黒字となり、累積5千人以上が宿泊。数か月に1回は雑誌やテレビ、各メディアに掲載される人気スポットになったといいます。宿泊単価を3~4万円と高めに設定することで黒字になるように運営していますが、そのためには、「地域性や文化、暮らしを体験するストーリーを丁寧に構築することが重要だ。400年前に町があったようなところであれば、昔からの文化や暮らしを活かした事業ができると考えている」と話します。

ホテルや旅館の証券化、流動化では施設を運営する人の運営能力が不可欠であり、古民家の再生も、ただ立て直して衣替えをするだけでなく、付加価値を高めると同時に採算性も重視しながら息の長い業務運営を継続することが重要です。第3回会合は、観光施設の証券化・流動化ではハード(物件)だけでなく、ソフト(運営能力・付加価値)も欠かせないことを教えてくれているのではないでしょうか。

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