土地活用ラボ for Biz

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コラム No.44

CREコラム

地方創生と不動産証券化

公開日:2017/11/30

内閣府は今年5月、地方創生の推進に向けて、地方で拡大する観光や健康関連の事業に対して安定的に不動産を供給するため、「地方創生に資する不動産流動化・証券化に関する意見交換会」を開きました。3回にわたって開催された意見交換会を通して、地方創生における不動産証券化を見ていきます。

公的不動産には機会費用の概念がない?

第1回会合では、「地方自治体の公的不動産が活用されていないのは、オポチュニティーコスト(機会費用)の概念がないのが問題」との指摘がありました。機会費用とは、他のことをすれば得られた最大の利益という意味。自治体が所有する不動産が適切に管理運営されているならば、どのくらいの利益を生んでいるのかを算出するということになります。

これに対して、「中心市街地のような活用余地の高い公的不動産に絞ったうえで、固定資産台帳を参考にして一定の地代率を決めれば機会費用の概算は把握できるのではないか。その場合、時間とコストをかけない簡便法を導入すべきである」との意見が出ました。また、固定資産台帳を有効活用している自治体は少ないので、政府が指導することが重要ではないか、との意見もありました。

固定資産台帳は、3年ごとに土地や家屋などの固定資産の評価額を見直して更新する台帳です。広範な土地や家屋を詳細に調査するため、航空測量会社など民間の力を借りる必要があり、自治体の負担も軽くありません。意見交換会では、手間ひまをかけて3年ごとに更新されている固定資産台帳が有効活用されてないことも、不動産証券化が地方で進まない原因の一つ、との認識があるようです。

固定資産台帳の有効活用

固定資産台帳を有効活用することに関連して、リート業界の立場から意見交換会に出席した一般社団法人不動産証券化協会(ARES)から提案がありました。

地方創生やGDP拡大のためには、全不動産の約4分の1を占める公的不動産がその資産価値に見合った形で有効活用されることが重要だが、民間企業では当たり前に行われている保有資産の機会費用の把握が公的不動産(PRE)については全く行われていない。
一方、地方公会計の統一的な基準により、原則として2017年度までに固定資産台帳を含む財務書類整備が地方公共団体に義務づけられた。特に1984年以前に取得した固定資産には再調達価格の把握(時価評価)が求められている。

とARESは指摘します。

そこでARESは、「固定資産台帳を活用した公的不動産活用戦略立案モデル事業への支援措置」という提案をしました。固定資産台帳データを活用して、公的不動産を有効活用するモデル事業を募集し、その立案のために必要な調査費用を補助する、というものです。例えば、地元の不動産鑑定士を活用して市場性の高い公共建築物や公有地の機会費用を把握することを通じて、価値に見合った活用がされていない公的不動産を識別して活用を促す、というものです。

PRE有効活用ための第一関門は現状把握

平たく言えば、活用されていない自治体所有の不動産を、固定資産台帳というデータを使って評価額を算出し、活用することの重要性を喚起しようということです。裏を返せば、多くの公的不動産が眠ったままになっていて、宝の持ち腐れになっている現状を訴えることです。地方における不動産の有効活用に道筋をつけるには、まず初めにすべきことは現状把握ということです。

地方不動産への取り組み~リバースモーゲージ

金融機関の立場から、みずほ銀行が出席しました。同行は、地方不動産の取り組み例として、リバースモーゲージを紹介しました。リバースモーゲージとは、持ち家を担保にして、そこに住みながら金融機関から融資を受けるシニア層向けの貸付制度です。住宅ローンの「逆バージョン」と言えるかもしれません。リバースは「逆」の意味、「モーゲージローン」は不動産を担保にした貸し付けのことです。

1980年代後半に東京都武蔵野市など一部の自治体で制度融資として取り扱いが開始されましたが、存命中は金利だけ返済し、死後に担保の持ち家を処分して返済することから、日本人のウエットな感覚からは受け入れにくい金融商品で、あまり注目されませんでした。ところが、年金の支給開始年齢が遅れたり、年金の支給額そのものが目減りするなど公的年金制度が変容したころから、いま改めて注目され始めています。

みずほ銀行によると、2035年には世帯主60歳以上の世帯数が世帯主20~50代の世帯数を逆転すると推測されています。一方、高齢者世帯の経済実態は、一般的な高齢世帯は毎月6.2万円、年間で約75万円の預金を取り崩して生活しており、貯蓄額が不足する世帯もあるといわれています。

日本のリバースモーゲージ(生活資金)の特徴と課題

特徴 借り手の目線 金融機関の目線
  • ・融資限度額が低い
  • ・終身ではない
老後の収入には不十分 与信判断は住宅の担保価値が取れないため、土地の担保価値のみに依拠
  • ・リコース付き
  • ・期中返済あり
  • ・期中の利払いが滞ったり、担保割れとなった場合に、生前に家を手放さなくてはならないかもしれず、不安が残る
  • ・ノンリコースとする場合、担保価値に比べ、相当低い融資限度額になる
  • ・住宅価値を維持するインセンティブが借り手にないため、モラルハザードの懸念あり
高齢者が対象という商品の性質上の課題 本人、相続人に十分な説明が欲しい。 高齢者が対象のため、年一回の定期面談をするなど、通常の住宅ローンと比べて管理負担が大きい。

※みずほ銀行の第1回意見交換会提出資料より一部抜すい

しかし、民間金融機関だけではリバースモーゲージの3大リスク(住宅価格下落・金利上昇・長生き)をカバーすることは難しく、官と民が適切にリスクを分担して新たなリバースモーゲージの枠組みを構築することが必要と指摘しました。表にあるリコースとは、担保価値が下がった場合は新たな債務が発生すること。ノンリコースはその逆で、担保以上の債務の義務はありません。その代わり、ノンリコースの場合は担保価値が低く設定されます。このように、高齢者が等しく安心して使えるローン、と言い切れない面があるのです。

少子高齢化と住宅の需給を見据え、市場価値のある「質の高い住宅」、例えば新耐震基準を満たした長寿命住宅などを選別したうえでリバースモーゲージを活用し、住宅供給の増加及び維持・拡充を図ることが重要と説きました。

第1回の意見交換会では、このほか、一般財団法人民間都市開発推進機構が「『出資』を通じたまちづくり支援について」、また金融商品取引業のフィンテックグローバル社が「地方都市における証券化」をテーマにそれぞれ意見を述べるなど、地方都市における不動産流動化・証券化に対して活発な議論が展開されました。

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