コスパ、タイパに続く暮らしのトレンドワードとして注目される「スペパ(スペースパフォーマンス)」。
スペパを意識した住宅ならスペースを有効活用でき、暮らしの快適性も高まるなどのメリットがあります。
そこで、家具・インテリア、住宅設備、空間デザインなどの専門家として活躍されている塩野哲也さんに、
スペパについての解説やコスパ・タイパとの関連性、スペパを高めるアイデアなどを伺いました。
また、スぺパ・コスパ・タイパの高い、注文住宅についてもご紹介します。
Part1スぺパとは?コスパ・タイパとの違いと関連性
スペパについて、コスパやタイパとの違いや関連性も含めて解説します。

スペパ(スペースパフォーマンス)とは?
スペパとは、スペースパフォーマンスを略した言葉で、空間対効果のことを言います。住空間などにおいて、限られた空間を効率的かつ効果的に活用できているか、その空間でどのようなパフォーマンスが得られるかを意味します。
住宅の場合、スペパを向上させるには、間取りの工夫や収納設備、可動家具などを活用して広々とした感じを出すなどが考えられます。詳細は、「Part4 スぺパの高い家・空間づくりのアイデア例」でご紹介します。
コスパ(コストパフォーマンス)とは?
コスパとは、「費用対効果」とも言い、かけたお金(コスト)に対して、どれだけの価値・満足度(パフォーマンス)が得られたかを意味します。住宅の場合のコスパとは、その空間をつくったコストや維持するコストに対する価値・満足度への評価になります。住宅の場合、コスパを向上させるには、規格住宅でコストを抑えながら、満足度の高い家を建てるなどが考えられます。
タイパ(タイムパフォーマンス)とは?
タイパとは、費やした時間(タイム)に対し、どれだけの価値・満足度(パフォーマンス)が得られたかを意味します。住宅の場合のタイパは主に2種類あります。一つは効率化により時間当たりの満足度を上げるもの。例えばキッチン・洗面所・浴室などの水回りをまとめて配置して移動がスムーズになれば、家事の時間が短くなってタイパが向上します。
密接に関連するスペパ、タイパ、コスパ
家の中のデッドスペースを収納スペースにするとスぺパは高まりますが、収納家具などの購入費用も削減できて、コスパの向上につながるでしょう。
また、洗濯・干す・乾かす・たたむといった洗濯家事も、ランドリールームを設けることでスぺパが向上することはもちろん、家事動線がコンパクトになることで家事にかける時間が減り、タイパの向上にも貢献してくれます。
このように同じ空間に対するスペパ、タイパ、コスパは密接に関連しているため、スペパを高める工夫をする際はタイパ、コスパへの影響も考えることが大切です。
Part2スぺパが注目される背景
近年、住宅を考えるときにスペパが注目されているのはなぜでしょうか。その背景を解説します。
住宅のコンパクト化
国土交通省の調査※1では、新たに着工した持ち家の床面積は2004年度には1戸当たり134.2m2だったのに対し、2023年度では114.0m2と約20年間で約15%も減っています。こうした住宅のコンパクト化に、空間を効率的に利用するスペパへの考え方がマッチしたのかもしれません。
新たに着工した持ち家の一戸当たり床面積の推移(2004年度~2023年度)

単位:(m2/戸)
リモートワークの普及
コロナ禍でリモートワークが広まり、自宅で過ごす時間が多くなって「自宅をもっと効率的に使いたい」「自宅の快適性を高めたい」という意識が高まりました。コロナ禍以降、毎日ではなくてもリモートワークで仕事をしている人は、国土交通省の調査※2では2024年時点で24.6%(全国)、特に首都圏では36.8%と定着しています。こうした働き方の変化から自宅の一部をワークスペースにすることも増え、スペパの向上が重視されています。
スぺパ志向の家具やインテリアなどの登場
上記のような時代の変化を受け、より今の暮らしに合うようにと、スペパ志向の家具・インテリアの登場、最小限の家具・インテリアで暮らすミニマルなライフスタイルの普及なども、スペパが注目されるようになった理由の一つと考えられます。
Part3スぺパの高い家・空間のメリット
空間を有効活用できる
リビング兼ワークスペースのような発想や収納の工夫などで、限られたスペースを効率的に使えます。これにより部屋が使われない時間や無駄になっている空間を減らせ、必要な居住スペースを広く確保しやすい点がメリットです。
快適性の向上が期待できる
部屋の多用途化や動線の最適化などでスペパを高めると、使いたい場所に必要な家具や設備が置けてストレスが減り、快適性も高まります。リビングの一部や階段下のデッドスペースに収納を設ければ、リビングなどの居住スペースが散らかりにくくなるなど快適性の向上につながるでしょう。
さらに可変性の高い間取りや家具の使い方を工夫して、出産から子どもの成長、独立後の夫婦だけの生活までライフステージに応じた暮らし方ができれば、長いタイムスパンの中でも快適性を維持できます。
コストを抑えた暮らしができる
スペパ向上のために無駄な空間を減らすことで、居住スペースに置く家具や物も減り、購入費用や維持費を抑えられます。また、スペパの向上によってコンパクトな家でも快適に過ごせれば、住宅コストを抑えることも可能になります。
ただ、注意点もあります。いろいろな機能を1カ所にまとめるだけではスペパが向上しないこともあります。当然、部屋の居心地が悪かったり収納が使いにくかったりすれば、満足度は低下するからです。
そのため、スペパを考えるときは、その空間をどのように使いたいか、そのためにはどんな設備が必要か、どんなレイアウトにするかなど、使いやすさを考えた上でのプランニングが重要になります。
Part4スぺパの高い家・空間づくりのアイデア例
ここでは、スペパを高めるための家や空間づくりのアイデアをいくつかご紹介します。
部屋や空間をマルチユースにする
リビングの一角をリモートワーク用のワークスペースとして使うことは、スペパ、タイパともに高められるアイデアです。パソコンでの作業が中心の人ならカーテンで仕切る程度で集中できるかもしれません。
ただし、オンライン会議などで社内外の人と話す機会が多い場合は、後述するデッドスペースを生かした空間も検討しましょう。

このほか多用途な部屋として、リビング横に6畳ほどの小上がり=タタミスペースを設けるアイデアもあります。ふだんは引き戸で仕切らずに開けておけば、リビングと一体化して広がりを生み、必要なときに仕切れば個室のように使えます。また子どもの遊び場、来客対応のスペースなどとして幅広く活用できます。
デッドスペースを活用する
階段下のデッドスペースを、収納スペースや休憩スペースにするのも、スぺパを高めるアイデアです。
床下収納もデッドスペースの活用法ですが、物の出し入れに「垂直に引き上げる・下ろす」という動作が伴い、面倒に感じるかもしれません。同じ床下でもリビング横に設けたタタミスペースの床を高めに作り、その段差を利用して横に引き出すタイプの床下収納を設置した方が使いやすくなります。
このほか、平屋なら屋根裏空間を「小屋裏2階」※3として活用するアイデアもあります。使用頻度の少ない季節家電、家族の思い出の品などの収納はもちろん、空間設計によっては子どものための空間や趣味の部屋として利用することも可能です。ただ、可動式や収納式のハシゴだと手間がかかって小屋裏の利用が面倒になりがちなので、できるだけ上り下りしやすい階段を設けた方が良いでしょう。
※3小屋裏2階部分の天井高や床面積によっては、建築基準法上、2階建て住宅とみなされる場合があります。
多機能家具を設置する
伸長式のダイニングテーブルのほか、壁面収納ベッド、収納機能付きベッド、ソファベッドなど、複数の機能や用途を持つ家具でもスペパを高められます。
また、子どもと一緒に暮らす期間はさほど長くないので、子ども部屋を将来別の部屋に転用することも考えましょう。一つの空間を、収納などで仕切り2部屋として使うこともできます。可動間仕切収納なら簡単に動かせるので、子ども2人のうち一人が独立した後など、ライフスタイルの変化にも対応しやすいでしょう。
廊下や玄関ホールを省略した間取りにする
廊下や玄関ホールを省略した間取りで居住スペースを広く取り、キッチン、ダイニング、リビングがつながった空間の中で動線を効率化してスペパとタイパを高める方法も考えられます。
また、玄関に土間を設けて、土間収納や趣味の作業スペースとするのもスペパの向上につながります。
自然光を取り入れる
同じ面積の部屋でも工夫によって「広々と感じられるかどうか」は変わってきます。大きな窓や天窓からの自然光がたっぷり入る方が開放感は増し、スペパの向上に役立つでしょう。
天井を高くする
勾配天井にするなど天井を高くすると開放感のある空間になります。リビングの床の高さを少し下げるロースタイルリビングを組み合わせることで、より開放感が高まります。床面積だけではなく、床から天井までの高さも考慮した空間の容量で考えた方がスペパの高い部屋が目指せます。


背の低い家具を設置する
(ロースタイルインテリア)
天井を高くする・床を低くする以外に、背の低い家具を設置すると天井が高く感じられ、部屋を広く見せる効果があります。

照明を工夫する
間接照明やスポットライトを効果的に使い、手元を暗くして遠くに明るいポイント(アートにスポットライトを当てるなど)を設けるなどの工夫で、空間により奥行きが出て快適な空間が生まれます。調光機能付きの照明は時間帯に合わせて照度や光の色を調整。夜は照度を抑えめにするとくつろぎ感が向上します。
色使いを工夫する
色彩工学では、同じ面積・大きさのものでも大きく見える膨張色と小さく見える収縮色があるとされ、膨張色は部屋を広く見せる効果を持っています。その中でも部屋のベースカラーにはアイボリーやホワイトなど明るくて使いやすい色が選ばれやすく、暗めの色や寒色系などをアクセントカラーに使うことでメリハリが生まれます。


また大きな部屋のベースカラーを途中で変えることで、全体の広々感は保ちながら部屋を仕切ったような効果を持たせることも可能になります。
動線に沿って収納を配置する
収納物は使う場所かその近くに収納することが基本。朝出かけるまでと、帰宅して眠るまでの間の移動や家事での動き方など、生活動線や家事動線に合わせて収納場所を考えていきましょう。例えば自分がリビングにいるときに子どもの着替えも済ませたいなら、子どもの洋服だけリビングに収納場所を設けても良いでしょう。
いかがでしたか。家や空間づくりでは、さまざまなスペパ向上のアイデアがあります。次のPart5では、そうした家づくりの工夫が満載の大和ハウスの注文住宅をご紹介します。

Part5家づくりのアイデアが見つかる間取り検索も便利、
大和ハウスの注文住宅とは
大和ハウスの注文住宅ではフルオーダー住宅のほかに、「Smart Made Housing.」(規格住宅・セミオーダー住宅)を提供しており、その特長は、価格を抑えながら間取りや外装・内装、設備などを注文住宅品質で実現可能なことです。
厳選された間取りから選べる
「Smart Made Housing.」で選べる間取りプランは、大和ハウスがこれまで建ててきた注文住宅の中から厳選された人気の間取りプランが揃っています。そのプラン数はなんと2,300以上にものぼります。
その中には階段下収納、テレワークスペース、ウォークスルークローゼットなど、限られた空間を効率的・効果的に使うアイデアも多数反映されています。
「Smart Made Housing.」で選べる間取りプランは、簡単な登録をすればすべての間取りが見放題になります。ぜひ登録をして、理想の間取りを見つけてください。
注文住宅品質をコスパで実現可能
長期保証や高断熱・高耐震、ZEH/長期優良住宅など注文住宅の品質を備えながら、効率的な家づくりにより価格を抑えているのがコスパの高い理由。しかも統一坪単価なので、打ち合わせ時に間取りを選ぶとその場で建物価格がわかる安心感もあります。
間取り検索の活用でタイパな家づくり
人気の間取りから選ぶため、一からプランを考える時間や、担当者との打ち合わせについては、フルオーダーの注文住宅よりも少なくなるでしょう。そのため家づくりのタイパを高めることができます。
Part6間取り検索から始まる理想の家づくり
スぺパの良し悪しは、その人がどんな暮らしをしたいかによって変わってきます。家づくりにおいて、限られた空間のパフォーマンスを最大限高めるために、理想の暮らしや理想の間取りを考えてみてください。
大和ハウスでは厳選された間取りの規格住宅のほか、間取りをカスタマイズできるセミオーダー住宅など、多彩なニーズに応える家づくりの選択肢が豊富です。理想の暮らしや理想の間取りをこれから考えたいという方は、まずは、Smart Made Housing.の間取り検索などを利用して、イメージを固めてみてはどうでしょうか。
お話を伺った方
塩野 哲也(しおの てつや)さん
月刊WebマガジンColla:J(コラージ)編集兼発行人。インテリア専門誌の編集部で活躍後、2006年、編集思考室Shiong設立。インテリア雑誌『コンフォルト』(建築資料研究社)や月刊誌『商店建築』(商店建築社)などに記事を執筆。2007年、月刊WebマガジンColla:J(コラージ)を創刊し、全国各地の生活文化、歴史的建築、手工芸、新時代のエネルギー、教育活動など、多岐にわたる取材・撮影を行っている。