今年9月に創刊58年を迎える『住まいの設計』。
編集部に在籍して約15年、多いときには年間60軒もの住宅を取材してきたという
同誌の編集長・丸洋子さんに、時代とともに変わり続けるキッチンの歴史と今、
そして丸さん個人が理想とするキッチンについて伺いました。
『住まいの設計』では、年間を通して必ずキッチンの特集をしていますね。
現在、巻頭特集と第2特集、年に2回キッチンの特集をしています。キッチンは、水道、電気、ガスなど、設備や機器の多くが集約されているし、様々な形状のものが集まる場所。他の居住スペースは、インテリアやレイアウト次第で暮らし方の工夫をすることも可能ですが、キッチンはそうはいきません。家を建てるときはキッチンを核に考えていかないと、家全体のグランドデザインは引けないと思っています。キッチンは時代とともに大きく変わり、今はスタイルも多種多様になりましたね。
キッチンは、時代とともにどのように変化してきたのでしょう。
キッチンの変化は、家族構成やライフスタイルの変化と比例しています。二世代、三世代で暮らしていた昭和初期には大家族で生活していた家も多いですが、その頃は「男子厨房に入らず」という考えが主流で、キッチンは女性だけが使う場所。北側の陽の当たらない場所に作られ、暗くて寒い個室が大半でした。平成に入り、核家族化が進み、共働き夫婦が増えると、キッチンの作り方も自然に変わってきました。料理を手伝う男性や、料理そのものが好きな男性が多くなりましたので、男性や子どもでも使える、手伝えるようなキッチンが考えられたわけです。そうして、キッチンは家の奥からどんどんリビング側に移り、現在のオープンキッチンが主流になったのではないでしょうか。また、家庭内における女性の発言力が増したこともあり、今のキッチンは自由度がずいぶんと高くなりましたね。
家を建てるとき、さまざまな選択肢があるなかで「理想のキッチン」を実現するにはどうしたらいいのでしょうか。
子どものいる家族、DINKs、二世帯など、理想のキッチンは人によって違います。ただ、一つ共通して言えるのは「自分らしいキッチン」にすることが「理想のキッチン」への近道です。自分の性格やキッチンの使い方をよく考え、それに見合うキッチンをつくること。家を建てるときには、キッチンをどう使うのかやキッチンと家族との関係性などを、改めて見つめ直すことが大切ですね。
それでは、丸さん個人の暮らしについてもお伺いさせてください。現在、どのようなキッチンを使っていらっしゃいますか。
14年前に建てた4LDKの一軒家に、夫と大学生の子どもと暮らしています。上の子は家を出て働いていますので、私の子育てももうすぐ終わりです。
キッチンは、リビングとつながった壁づけのI型。2方向に窓があって明るく、外の景色が見えるところが気にっています。キッチンはにおいが籠りがちですが、私は自然換気が好きなので、寒い日でも開けていることが多いですね。外と近い関係性であること、長時間いても居心地がいいこと、これが私にとってキッチンに必要な要素です。昔は子どもが寝た後、音楽を聴いたりお茶を飲んだりしながら、「ながら」で料理していたこともありました。
丸さんにとって、キッチンはどんな場所ですか?
私にとって、キッチンはクールダウンをする場所です。仕事をしている「パブリックな自分」と「家庭での自分」を切り替える場がキッチンだと思っています。仕事から帰って立ちながらでもお茶を飲んでひと息つくだけでも、気持ちをパッと切り替えられたりするんですね。仕事の緊張感をそのまま家庭内に持ち込むのは家族にとっても好ましくありませんから。仕事をしている女性にとって、キッチンはそういう空間であるといいと思っています。
丸さん個人の「理想のキッチン」は、どんなキッチンですか?
子育てが終わり、もう少し自分の生活に時間をかけられるようになったら、リフォームをしたいと考えています。家族のかたちは変成しますから、その時代ごとに見合ったキッチンにできるといいですよね。私の理想のキッチンは、一部がリビングに開かれていて、一部が閉じているセミクローズドキッチン。家に人を招くことが好きなので、お客様と接するときにはカウンターで笑顔で接して、1人のときは少し奥まった空間で落ち着ける、そんなキッチンにしたいですね。
ダイワハウスのキッチン紹介
ダイワハウスでは、その人のライフスタイルに合ったキッチンを6タイプに分類し、提案しています。
その中から、『住まいの設計』編集長・丸さんが、今後の暮らしを豊かにするために選んだ「理想のキッチン」とは?
[丸さん's select!]にぎやか手作り派「みんなでワイワイ囲める」キッチン
家族や友人と楽しく使える ダイニングに開かれたキッチン
「料理が趣味で、人を家に招くのが好き」という丸さんが選んだのは、「みんなでワイワイ囲めるキッチン」。
家族や友人で囲めるアイランド型のセンターキッチンなら、料理の準備から片付けまでみんなで楽しむことができます。
「子どもが巣立ったら、その分他人を家に招いて、ワイワイ過ごすのもいいですよね。
私は準備でヘトヘトになってしまうのではなく、親しいお友達に気負わずに手伝ってもらいたいタイプなので、このキッチンは理想的です。リビングにも開かれていて、楽しく使っているのが想像できるキッチンというところもいいですね」(丸さん)
幅広のフラットカウンターなら、ダイニング側からの調理や配膳にも便利。家族や友人と向かい合って、楽しみながら調理ができます。
見せて・隠すを両立した 大容量壁面収納を活用!
「ほどよく収納して、ほどよく見せる、メリハリのあるキッチンが私の理想です。キッチンは、食器や家電など形状が定まらないものが、たくさん集まる場所。それらをいかに見せ、いかに隠すか、腕の見せどころでもあります。また、お気に入りのお皿や調理器具を見える場所に飾っておけば『今度このお皿に盛りつけるものをつくってみよう』と、自分の気持ちをアップさせる仕掛けになります」(丸さん)
デザイン性と収納力がある大容量壁面収納は、片づけ初心者の人にもおすすめ。見せたいものは半透明棚に、隠したいものはクローズドの棚に収納することで、スッキリとしたキッチンになります。
人気雑誌&Web媒体の編集者に聞く これがワタシの理想のキッチン