CASE18
医療施設
恒生かのこ病院
- 所在地:
- 兵庫県神戸市
- 構造:
- 鉄骨造
- 延床面積:
- 7,542m2
- 竣工:
- 2019年6月
- 用途:
- 地域包括ケア病床(55床)、サービス付き高齢者向け住宅「かのこヒルズ」(46室)
開設以来、地域における高い知名度や、年間1,200台を超える救急車受け入れなど、評価・実績ともに『地域に欠かせない医療機関』として、確固たる地位を築いてこられた医療法人社団六心会様。
神戸市の地域包括ケア病棟の公募を受け、「患者様やご家族の安心につながる在宅支援」に取り組むべく、将来的に地域包括ケアの拠点となりうる、医療・介護・高齢者住宅の複合施設の開設を新たに計画されました。
計画のポイント
新たに地域包括ケア病棟の開設を実現
新施設の構想時に、神戸市の病床公募情報を入手。公募選定により地域包括ケア病棟55床の「恒生かのこ病院」を開設されました。本院の退院患者様や療養中から再入院された患者様を受け入れ、急性期~回復期~在宅といったトータルケアを一法人で担うことが可能となります。
入院患者様用のリハビリテーションルーム。建物の曲線部分をガラス張りにしたことで、明るく開放的な空間を実現しました。
退院後の手厚いケアを実践するサービス付き高齢者向け住宅を併設
自宅での生活が困難な退院患者様の在宅復帰先の1つとして、サービス付き高齢者向け住宅「かのこヒルズ」(46室)を整備。法人の医療・介護部門と連携した手厚いケアはもちろんのこと、病院併設型とすることで入居者様やご家族に大きな安心を提供します。
サービス付き高齢者向け住宅全46室は、18.81~22.10m2まで5タイプを用意。いずれもゆとりある収納スペースを備え、面積以上に広さを感じる室内空間となっています。
多目的に使える地域交流ホールを併設。
新施設内に地域住民が気軽に集まり利用できる「かのこホール」を併設。病院や医師会主催の健康相談会や講演をはじめ、地域の要望に応える多目的ホールとして活用されています。
新施設の大きなポイントの一つとなった地域交流ホール「かのこホール」。エントランス上部には、ステンドグラスをあしらい、高級感を演出しています。地域の方々にも利用可能なスペースです。
お客様の声
医療・介護分野の機能を豊富に備え、
地域包括ケアの核となる役割を果たす
医療法人社団六心会 理事長 古瀬 繁様
私たち医療法人社団六心会は、脳神経外科病院としてのスタートから、常に患者様と地域に寄り添い、それぞれの声を機能やサービスの提供に反映し続けてきました。その中でも、宝塚市内に介護老人保健施設を開設(2000年)したことが、当法人にとって大きな転機になったと思われます。私自身が立ち上げに携わり、介護の現場を経験したことで「これからは医療と介護、両方取り組んでいかなければならない」と強く感じたことを今も憶えています。時は流れ、いま地域包括ケアの取り組みに注目が集まっていますが、それより以前に近い考えでさまざまな取り組みを続けてきたことになります。
本来、地域包括ケアとは地域全体で取り組むもの。しかし、神戸市北区は神戸市全体の4割以上の面積があるものの、人口は約21万人と神戸市の中でも最も人口密度が低い区です。それだけに地域包括ケアへの取り組みは、効率面からいって簡単なことではありません。こうした地域特性を考慮すると、質の高い医療・介護・福祉を提供するためには、一法人でできるだけ多くの機能を担うことが求められるのだと思います。
今回の施設で、地域包括ケア病棟55床の増床が実現できたことは、医療面において非常に大きなことでした。急性期病棟と回復期リハビリテーション病棟を備えていた当法人にとって、“ついに必要なピースが埋まった”と感じています。また、介護・福祉面においても、退院患者様の在宅復帰先の選択肢として提案可能なサービス付き高齢者向け住宅の開設は、私たちにとって念願だった機能。病院との連携で、医療依存度や介護度の高い方を受け入れることが可能となるとともに、法人内で急性期~回復期~在宅復帰までの流れが確立します。さらに、在宅系の事業所を集約することで、より連携のとれた手厚いケアが可能となるでしょう。
また今回、計画当初から「地域に開かれた施設」ということにもこだわりました。それは、地域共生社会という考えから、子どもから高齢者まで地域のコミュニティーを育む場にしたかったのです。この辺りは、数百人収容の公共のホールしかなく、気軽に地域住民が集まれる施設を提供し、地域の交流に役立ててもらえれば良いと思っています。
大和ハウス工業さんとは、以前からサービス付き高齢者向け住宅の計画にあたり、土地探しの段階からさまざまな相談に乗ってもらっていました。今回、病床公募のタイミングと重なったため、病院併設型に挑戦しましたが、私たちの「こんな施設にしたい」という思いに合致した提案をしてくれたのは、大和ハウス工業さんだけ。医療・介護施設の建設に豊富な実績も大変魅力的でしたし、安心して設計から施工までお願いしました。
プランニングの段階となり、「新病院に移籍して頑張りたい」というスタッフを中心に、準備委員会を結成。かなり細かな要望や意見があったと聞いています。基本的にはこちらの意見を充分組み入れた方向で、物理的に不可能なこと以外は実現していただけました。また、設計担当者からも「こうした方が逆に広く感じたり、機能的になる」など、双方の意見交換を重ねたことで、とても満足のいく仕上がりになったと思います。全体的なデザインも美しく、とても満足しています。
今後、当法人とこの施設は、地域包括ケアを牽引する大きな役割を担っていきたいと考えています。2040年に向け、在宅復帰の流れがいままで以上に強くなっていけば、こうした高齢者住宅のような施設は必要になってくるでしょう。ここは、まだ敷地に余裕があるので、次のステップとして新たな事業(施設)を検討しても良いかもしれません。
今後も私たちは、常に状況を注視し、かつ少し先を見据えながら、地域社会から必要とされる医療・介護・福祉に取り組んでいきます。