CASE23
医療施設
豊川さくら病院
- 所在地:
- 愛知県豊川市
- 構造:
- 鉄骨造
- 延床面積:
- 5,236.38m2
- 竣工:
- 2022年7月
- 用途:
- 一般病床(18床)、地域包括ケア病床(18床)、回復期リハビリテーション病床(56床)
関東圏を中心に、多くの医療・介護施設を展開されている医療法人啓仁会様。そして、同法人が2013年に運営を継承以来、近隣の急性期病院の後方支援病院として、地域医療に貢献してこられたのが、愛知県豊川市の豊川さくら病院様です。病院施設の老朽化が長年に及ぶ大きな課題となっていた同院では、理想とする移転用地の確保を機に、新病院建設を計画されました。
計画のポイント
理想的な移転新築用地を確保し、長年思い描いていた計画を具体化
築50年近くが経過した旧病院の建物は、水回りをはじめとした各種インフラ設備の老朽化が進行。また、過去に増改築を重ねていたことから、動線面においても課題が多く、施設刷新の時機を計られていました。そんな折、主に患者様の移動に長年使用されていたエレベーターの保守点検の契約満了と更新不可が判明。新設備への入れ替えを行おうにも、診療を続けながらの工事は困難と判断され、新病院の建設計画を具体化する運びとなりました。
旧病院から約100m離れた土地(約4,500㎡)の情報を入手。連携を深めていた急性期病院との距離感、患者様やスタッフの利便性もそれまでと変わることのない理想的な立地であるため、新病院の建設地として確保されました。
徹底した感染対策を施し、将来的にも安心安全な施設づくり
設計作業を進めていた途中に、全国的に新型コロナウイルスが流行し、新病院には感染対策への配慮がより強く求められることになりました。まず、動線の見直しを徹底。患者様と職員それぞれの視点で、安全性と効率化を追求しています。また、施設内の至るところに換気口が設置されるなど、空調システムにも工夫が凝らされています。
同じく、感染対策の一環として、病床構成も見直されました。個室の割合を上限いっぱいまで増やし、旧病院では各階に1ヶ所のみだったトイレを各室に設置(多床室は2~3室毎に1ヶ所)しています。
感染対策に配慮し、機能強化を図ったリハビリテーションフロア
新病院では、急性期の後方支援病院としても役割をより高めようと、リハビリテーション機能のさらなる強化が図られています。最上階の4階すべてをリハビリテーションフロアとして、ADL(日常生活動作)訓練のスペースや眺望の良い屋外リハビリテーションスペースも設けられています。
リハビリテーションスペースは、2階(一般病床・地域包括ケア病床)と3階(回復期リハビリテーション病床)の入院患者様、外来患者様の3つにゾーン分けされており、パーテーションで仕切ることができ、それぞれに別の出入口を設けるなど、感染対策が施されています。
お客様の声
地域完結型の医療・介護・福祉・保健を
複合的に提供できる街づくりの核となる理想の新病院が完成
医療法人啓仁会 豊川さくら病院
院長:高岡 徹様
医療法人啓仁会 豊川さくら病院
本部長:尾上 貴志様
愛知県の豊橋市・豊川市・蒲郡市・田原市で構成されるのが、東三河南部医療圏。人口は約70万人(2020年国勢調査)で、高齢化率(65歳以上)は全国平均レベルだといえます。医療環境としては、公立病院以外の大規模な医療機関がほとんどなく、医学系の大学もないことも影響してか、一般病棟が少なく療養病床が多い点が特徴です。また、他エリアへの流出入が少ないという特性からは、「住み慣れた地域で医療を完結させたい」という地域住民の気質が窺い知れるでしょう。
私たち豊川さくら病院は、急性期と療養をつなぐ回復期医療に力を入れており、公立病院が中心の急性期の後方支援病院といった役割を果たしてきました。回復期リハビリテーションは、この地域にはまだまだ不足している機能です。そんな中、当院では市内最多のスタッフを擁しており、一般病床や地域包括ケア病床を活かすことで、回復期リハビリテーション病床の対象疾患以外の患者様も受け入れるなど、“間口の広い医療”を実践してきました。また、児童精神科や小児リハビリテーションという周辺地域にはない診療科を標榜しているのも当院の特徴の一つだといえます。
築50年近くが経過し、老朽化や度重なるインフラ設備の不具合が課題となっていた旧病院の建物については、法人としても長年の懸案事項でした。今回、エレベーターの設備更新が移転建て替え計画のきっかけとなりましたが、それまでも計画が進まなかった理由の一つが建設地の問題。当院には、医療的な機能以外にも「急性期の豊川市民病院さまから一番近い後方支援病院」という特徴とイメージを継続させる必要があります。そんな中、これ以上ないタイミングで大和ハウスさんから土地情報が提供されたのです。旧病院からも近く、幹線道路沿いということもあり、いままで以上の認知度向上が期待できます。
土地探しでお世話になったので、施設づくりも大和ハウスさんにお任せしようという流れになりましたが、設計段階から数々の要望を実現していただき、とても感謝しています。意見をまとめてきた各部門の責任者と行う月に2~3度の打合せでは、基本設計が煮詰まるまでにいただいた提案は、実に10数案にも上りました。それは、途中コロナ禍となったことが影響したのですが、おかげで、さまざまな角度から感染対策を盛り込むことができ、非常に満足しています。また、私たちが最もこだわった動線についても、想像以上にシンプルな仕上がりで、とても動きやすく改善を実感しました。また今回、機能向上のために4階すべてをリハビリテーションスペースとしました。他のフロアよりも天井を高くした広々とした空間は、窓の外に広がる景色も良く、患者様からも好評です。
デザイン面では、外観や内装は落ち着いた雰囲気に仕上がっており、まさに私たちのイメージ通りで、内覧会に参加された関係者からの評価も上々でした。実際、豊川市民病院さまから転院の紹介を希望される方が増えており、新病院建設の効果を実感しています。
当法人では、展開する地域ごとに「ロイヤル・ワム・タウン構想」をグループで推し進めています。それは、地域完結型の医療・介護・福祉・保健を複合的に提供できる街づくりのこと。豊川市でも「豊川ロイヤル・ワム・タウン」として、当院と既存の介護老人保健施設「たんぽぽ」の他にも、今後さまざまな機能を充実させていこうと考えており、いずれ旧病院跡地も「地域から求められる機能」に生まれ変わることでしょう。豊川さくら病院は、そんな街づくりの核として、これからも地域への貢献度を高めていきます。