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コラム No.140-8

CREコラム

脱炭素社会と不動産(8)ZEH

公開日:2023/07/31

家庭で使う電力を自前で作り出したり消費量を減らして電力消費量を実質ゼロに抑えるZEH(net Zero Energy House=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)への関心が高まっています。
家庭部門におけるエネルギー消費量は国内の全エネルギー消費量の15.8%を占めており(資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」より)、住宅の省エネ化は脱炭素社会実現における最重要課題のひとつになっています。

無視できない家庭内消費の電力量

ZEH(ゼッチ)は一次エネルギー(電気に変換される前の石炭や天然ガスなどのエネルギー源)の年間消費量がおおむねゼロの住宅のことです。2008年頃から世界的に認知され始めたといわれ、断熱や日射遮蔽の工法を取り入れた省エネ設計の住宅を指します。わが国では2009年の「長期優良住宅制度」や2012年の「都市の低炭素化の促進に関する法律」(エコまち法)施行に伴い制定された「低炭素建築物認定制度」など、地球環境の保護を促進する省エネ住宅制度が実施されています。

ZEHに関して国は、2021年10月に閣議決定されたエネルギー基本計画で「2030年までに新築戸建て住宅の6割に太陽光発電設備が設置されることを目指す」との政策目標を掲げ、脱炭素社会の実現に向けて各方面で二酸化炭素削減の努力がなされています。
国内電力消費は工業や商業部門など産業界での使用量が多いのは当然ですが、家庭内の電力使用量も15%近くに達して無視できない数値になっており、一層の省エネ化が求められています。

エアコン電力消費は夏冬とも3割越え

経済産業省資源エネルギー庁の調査によれば、夏季および冬季における家電製品の電力消費割合で最も高いのはエアコン。次いで冷蔵庫、照明の順になっており、この3つの家電製品で実に5割以上の電力を消費しています。特に夏冬ともにフル稼働するエアコンの占める割合が3割を超えています。近年はマンションなどで石油ストーブなどを使用禁止にするところが増えており、エアコンの需要はますます高まるばかりです。

ZEHは「断熱」「省エネ」「創エネ」

省エネ住宅を作るポイントは、夏は日射遮蔽、冬は断熱です。夏季は日中に家全体を照らす日射熱を遮り、室内温度をできるだけ上げないことと、換気をして室内の熱を外に排出する「排熱」、風を通す「通風」が重要といわれています。
冬季では熱を室外に逃がさないよう断熱工法で包み、隙間をふさぐなどして暖房効果を高める「気密」と、室内空気を快適に保つための「換気」が重要になります。

図1:夏冬の快適な住まいを作る住宅省エネのポイント

出典:経済産業省資源エネルギー庁WEBサイト「省エネ住宅」

ZEHでは、こうした断熱を目的とした工法を採用して、できるだけ電力による冷暖房のためのエネルギーを節約して省エネ化を図る一方、太陽光発電など再生エネルギーを導入して電力を新たに作り出して使用する「創エネ」がカギになります。
戸建のZEH住宅には国の補助金制度があり、2種類に分けられています。やや複雑な区分けですが、断熱と省エネによる省エネ比率が20%以上を「ZEH」、25%以上を「ZEHプラス」の基準を設けています。後者が設けられたのは、太陽光発電の買取制度が背景になっているといわれています。

賃貸住宅もZEH化の流れに

ZEHは現状では戸建住宅が主流ですが、近年は賃貸マンションなどの集合(共同)住宅の分野でもZEH化が進んでおり、「ZEH-M」(net Zero Energy House Mansion)と呼ばれています。環境保護への国民意識が高まり、ご入居者の住環境に対する評価基準は年々厳しくなっていると想像されます。またオーナー側の賃貸物件に対する意識が変化しつつあるのかもしれません。
空室をなくし稼働率を上げるには、省エネなどを希望する入居者のニーズに合った居住空間を提供していかなければ経営的に厳しくなります。
また、保有する賃貸不動産の資産価値を高めて、将来の売却時に備える思惑も働いているのでしょう。快適な住環境を維持していけば入居期間も長期にわたることが見込まれ、良好な稼働状況を維持することも可能です。
「ZEH-M」はZEH化を普及・促進する狙いから、「ZEH」と同様に区分(シリーズ)を設定しています。省エネと創エネで一次エネルギー消費量を基準値から100%削減可能なものを「ZEH-M」とし、75%は「Nearly ZEH-M」、50%は「ZEH-M Ready」、省エネのみで20%削減の住居は「ZEH-M Oriented」として位置づけています。

経済産業省資源エネルギー庁の資料によれば、2021年度の集合住宅供給戸数におけるZEH-Mシリーズの割合は、ZEHデベロッパー実績より約7.4%(32,123戸/435,967戸)となっており、2030年目標の達成に向けてさらに推進していく必要があるとしています。

また、棟数では低層住宅の「Nearly ZEH M」を中心に導入され始めている一方で、戸数ベースでは高層のZEH M riented が大きな割合を占めています。
今後、マンションの販売においても、この「ZEH」の導入程度が、大きな影響を持つのかもしれません。

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