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コラム vol.221-5
  • 不動産市況を読み解く

土地活用の経済学(5)~不動産市況を見る目を養う講座~第5回「空き家問題の本質:第四象限」

公開日:2017/02/28

空き家ゾンビの増殖が止まらないと言われています。人口減少と高齢化の進展の中で、住宅に対する需要が年々低下していき、地方都市を中心として、住まい手のいない住宅がどんどん増加しています。そして、その半分は賃貸用住宅だという数字が、「住宅・土地統計調査」によって報告されています。

「ゾンビ」という言葉をここで使ったのは、そのような空き家は、様々な税制などの恩恵を受けながら、本来は社会的な使命が終わったにもかかわらず社会に生き続けることで、地域に対して悪い影響(負の外部性といいます)を与えてしまい、地域の衰退に拍車をかけてしまっていることが多いためです。経済用語として最初に登場したのは、1990年の日本のバブル崩壊後の長期的な経済停滞を説明するために、スタンフォード大学教授の星先生がお書きになられた論文の中でした。「ゾンビ企業」という言葉を使われ、本来社会的な使命が終わっている会社であるにもかかわらず、銀行が支援をし続けるためにゾンビのように生きながらえ、その結果として日本経済を長期停滞をもたらしてしまっているということを揶揄されたのです。

このような空き家を産み出す構造を考えるためには、4象限モデルのなかでは、第4象限のストック調整のメカニズムを理解しないといけません。第4象限のストック調整機能とは、第三象限で建築された住宅が新しいストックとして社会に出てきます。しかし、それがそのままストックの量に反映されるわけではありません。生まれてくる住宅もあれば、死んでいく住宅もあるわけです。生まれてくる住宅から死んでいく住宅が差し引かれて、社会の新しい住宅ストックの量が決まるのです。そうすると、いくら住宅が作られても、それ以上に滅失していけば、社会全体の住宅ストックは増加することなく、空き家は増えることなく、第一象限で決定される家賃も低下することがないということを意味します。また、空き家も増えていかないのです。

空き家が増加する中で、住宅の供給を制限すべきであるということがしばしばいわれていますが、そのような単純なことではなく、ストック調整の構造を理解し、滅失のさせ方やルールを考えていくという視点もあるのです。つまり、滅失を進めるべきという政策提言もあるべきでしょう。
ここで滅失に注目すれば、かつては日本の住宅の平均寿命は25年程度であり、欧米社会と比較して短すぎるということが問題視されたことがありました。しかし、そのようなときには、空き家問題は注目されていませんでした。そのような中で住宅の長寿命化を進めようとしたわけですが、その結果として起こったことはストック調整ができなくなり、空き家が増加してしまっているということかもしれません。そもそも建物を壊して、建て替えていく力がなくなったために、空き家が増加していると考えた方がいいでしょう。

そうすると、依然として建設ラッシュが続く、東京都心部のオフィス市場はどのように考えることができるのでしょうか。
今、東京の街を歩くと、至るところで開発が行われています。多くの場合は再開発で、今ある建物を壊して建て替えをしているわけです。再開発とは、複数の区画を統合したり、大型物件であれば周辺の都市施設の整備と併せて開発したりして、集合化していく行為です。今、東京で開発されている大型オフィスビルは、すでに戦後において再開発を通じて供給されたビルが多いために、再々開発といってもいいでしょう。このような大規模な再開発を通じて、オフィス床増加することで、空き家問題と同じような空きビル問題は出てくると考えられるのでしょうか。
ここでは、再開発後の用途に注目をしないといけません。今あるオフィスビルを壊して、つまり滅失させて新しいものに建て替えているわけですから、ストック調整市場という意味では、新しい増分とは建て替え前と建て替え後の差分ということとなります。建て替え後に、もし違う用途、つまりオフィスではなくホテルや商業施設に使い方を変更していれば、オフィス床が増加するということではないわけです。実際に、多くのケースで、オフィス以外の用途へと転換されていることが見受けられます。

そうすると、住宅の場合でも、建て替えという場合には、新しいストックが増加していないわけですから、単純に地域の空き家率の増加の元凶になっているとかということではないわけです。ここで重要になってくるのが、放置されてしまっている空き家なのです。そのように放置されてしまい、地域のゾンビとなってしまうことをいかに防止していくのかということが、社会にとって、またはその所有者にとって大切なことであると言えます。このように考えてくると、ストック調整がいかに大切なことであるのかということが理解していただけるでしょう。それでは、ストック調整をどのように進めていけばいいのでしょうか。

人口減少などによって地域が縮退していく中では、住宅需要は低下してしまうことは必然です。そのような中で、新しい需要は創出するか、それができない場合には、滅失を滅失させて、住宅以外の用途へと転換させていかなければなりません。または、一定の需要が見込まれるものの、住宅としての機能が低下してしまうことで、空き家ゾンビ予備軍になってしまっている場合には、リノベーションや建て替えを促進し、その機能を取り戻しておかないといけないのです。このようなことは、地方都市だけでなく、とりわけ今後、一気に高齢化が進み、そして人口減少にもさらされる大都市部で大切なことであると言えます。相続などが発生する前に、空き家ゾンビを生み出さないためにも、建て替えや滅失を含めたストック調整を進め、外部「不」経済をもたらすような「不」動産を後世に残さないようにしておくことが、今に生きるものの大きな社会的な役割であると言えるでしょう。

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清水 千弘(しみず ちひろ)

1994年 東京工業大学大学院理工学研究科博士課程中退。東京大学博士(環境学)。財団法人日本不動産研究所研究員、リクルート住宅総合研究所主任研究員、麗澤大学経済学部教授、ブリティッシュコロンビア大学客員教授、シンガポール国立大学不動産研究センター教授等を経て、現職に至る。マサチューセッツ工科大学不動産研究センター研究員等を兼務する。国内外の学術誌に採択された論文は40本を超え、150本以上の論文・論説を公表している。それらの論文・論説は、日本計画行政学会、日本不動産学会、資産評価学会から数々の学術賞を受賞している。また、不動産価格指数の国際標準化に向けての国際プロジェクトに参加し、IMF、OECD、欧州統計委員会等の国際機関のアドバイザー務めた経験を持つ。

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