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コラム vol.221-6
  • 不動産市況を読み解く

土地活用の経済学(6)~不動産市況を見る目を養う講座~第6回 土地活用の魅力:リスクをマネジメントするために

公開日:2017/03/31

不動産は、株や債券と同じく、伝統的な投資対象の一つとして位置づけられています。古くから、内外を問わず、年金や保険会社など、機関投資家といわれる人たちは、不動産に投資をしてきました。

また、ドバイやカタール、ノルウェーなどの産油国は、石油などから得た莫大な資金を、将来の国家の繁栄を維持するために、世界中の主要都市の不動産に積極的に投資をしています。つまり、土地活用または不動産投資は、永続的な国家、企業、家計の発展のために欠かせない行為であるといってもいいわけです。

不動産投資、または土地活用の根拠をより学術的に整理すると、 1. 分散効果
2. インカム収益
3. 非流動性などに起因する高い収益率
4. インフレ・ヘッジ
という4つの優位性が指摘されています。

分散効果とは、投資家にとっての主要な投資対象である株式や債券と全く異なる動きをするために、株で損が出ているようなときでも、それにシンクロするように不動産投資で損をしてしまうというようなリスクが小さいことをいいます。インカム収益とは、ご存知のように不動産投資の冥利は、キャピタルゲインではなく、厚い家賃収入です。世界的に見ても、投資額に対しておおよそ4~8%のインカム収益があるというのは、他に同じような投資対象がないといわれているのです。

少し難しいのが、非流動性などに起因する高い収益率ということになります。しばしばファイナンスの教科書などでは、不動産投資には流動性のリスクがあると書かれています。流動性リスクとは、リーマン危機のような経済的なショックが加わったときに、それを売却したいと思っても、その売却の出口を失うことを意味します。しかし、ファイナンスの鉄則としては、高いリスクの裏側には必ず高いリターンがあることを示しています。つまり、非流動性のリスクが存在するということはその対価としてのプレミアムが存在しないといけないのです。それでは、そのプレミアムはどのように生まれるのでしょうか。
不動産投資の非流動性プレミアムは、不動産市場の契約から産み出されると考えられています。不動産の家賃市場では、第二回連載で詳細に解説したように、契約によって収益の硬直性が生まれています。不動産の収益の中心は家賃収入ですが、それは経済的なショックが加わっても、その家賃は契約期間においては変化しません。筆者らの研究において、同一テナントでの家賃の更新契約では大きな変化が生まれることは少なく、テナントが入れ替わる確率も欧米よりも低いことが明らかになっています。つまり、契約期間は2年と欧米よりも短いですが、実質的な契約期間はそれよりも長く、かつ契約更新時での家賃の粘着性、つまり同一金額で改定される確率は極めて高いことがわかっているため、極めて安定的なリターンを生む対象であると考えていいのです。しばしば何かの経済的なブームや危機が来たときに、何もしなかったから生き残ったということを聞きますが、それも非流動性プレミアムの一つなのです。

そして最後に、インフレ・ヘッジです。長期的にお金を運用しようとした場合には、物価が大きく上昇することで、その資産そのものが目減りしてしまうということが最大のリスクであると考えられています。そうすると、不動産にはキャピタルという側面もあるわけですから、インフレが起こったときに資産インフレも同時に起これば、そのリスクを回避することができるわけです。また、消費者物価指数の約四分の一が家賃であるということを考えれば、物価が上がるということは家賃も上がると考えることができます。そうすると、不動産投資はインフレに強いということになるわけです。
しかし、このような優位性を得ていくためにも、しっかりとリスクをマネジメントしていかないといけません。リーマンショックの直後に、英国のブライトンで開催された機関投資家が集まる国際会議で、ある著名なファンドマネージャーが、次のことを言いました。「リーマンショックからの教訓は、不動産投資には、選別のリスクがあることだ」と。選別リスクとは、国際投資におけるファンドマネージャーセレクションの困難さを指摘したものでした。国際的に投資をしているファンドマネージャーといわれる人たちは、都市またはエリア単位で選別をしてきたといいます。しかし、ニューヨークのマンハッタンの住宅だから、またはロンドンのシティのオフィスだからとかといった単位で投資をしてしまうと、経済的なショックが加わったときに、リスクをマネジメントできないことが分かったというのです。そのような大きなくくりではだめで、それぞれの地域の物件単位で選別していくことが重要であると指摘していました。

さらには、欧州最大の年金投資家のファンドマネージャーであり、その後に、ヒースロー空港の社長に就任したルパート・クラーク氏は、不動産投資のファンドマネージャーに求める条件は、 1. 洗練された金融知識
2. 市場を分析する力
3. 高い専門性
4. 投資対象のパフォーマンスを測定する力
だと述べています。そして、そのような力がないときには、ネットワークでカバーしていかないといけないこと、法令を遵守していかないといけないことなどを付け加えていました。

不動産投資・土地活用は、最も魅力的な投資対象の一つであることには変わりありません。しかし、本連載で示してきたように、「市場を分析する力」がなければ、そのリターンを適正に受けることができないばかりか、リスクにもさらされることとなります。専門家などの力を借りつつ、ネットワークを使って、長期的に資産の運用をしていくことが大切であるといえるでしょう。

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