大和ハウスの想いつながる
7つのエピソード
大和ハウス工業の社名である「大和」は、創業者・石橋信夫の出身地である奈良の旧名からとったもの。これを「ヤマト」ではなく「ダイワ」と読ませたのは、「大いなる和をもって経営にあたりたい」という想いからである。
創業後、「パイプハウス」の注文は順調に増えていたが、石橋の頭を悩ませたのはそれらをつくる人財を集めること。資本金わずか300万円、創業間もない、海のものとも山のものともしれない会社に、即戦力として活躍できる人はなかなか集まってくれなかったのだ。
そこで石橋は人集めに奔走し、採用した若い人たちを自前で育てるしかないと考える。大阪の今宮高校の夜間の授業が終わるのを待って、担任の先生と面談。自身の仕事にかける意気込みと人を大切にしたいという想いを伝え、通っていた4年生の中から9人を採用。そのうち7人は長きにわたって大和ハウス工業で働き、やがては幹部として会社を支える人財となっていく。
「いかにして人をつくり、育てるか」。創業時にその苦労を味わった石橋は、人を育てることに対し、人一倍強い想いがあった。仕事で活躍できる人を、座学だけでなく実践を通じて育てていく。人は企業によって育てられ、やがて育った人がまた企業をつくり、人を育てていく。まさに「企業は人なり」と石橋は考え、その想いを「社是」に込めている。
第一項から、社員を大切にする石橋らしい言葉が並ぶ。この創業時に制定された「社是」は、70年経った現在も、大和ハウスグループ社員の精神的支柱として息づいている。
石橋が、事あるごとに語ってきた言葉がある。それは、「仕事の基本は“三意”である。すなわち創意、誠意、熱意をもって仕事に臨むこと」。
「創意」とは工夫である。常識に縛られない自由な思考能力を持ち、新しい商品をどのように市場に出し、いかに販売するかを考えること。
「誠意」とは、まごころである。「信頼なくして企業なし」という言葉があるが、お客さまをはじめ、会社の人間や協力会社の人たちからも信頼されなければならない。誰に対しても、誠意を尽くすことで道が拓ける。
「熱意」は人の心を動かすもの。誠意は熱意によって伝わり、創意があっても熱意がなければその力を発揮することはできない。
「事業を通じて人を育てること」に通じ、まさに教育に力を入れ続けてきた石橋の想いが宿った言葉である。
石橋の生誕100周年にあたる2021年、奈良市に「みらい価値共創センター コトクリエ」が誕生した。「創業者精神を伝え広めるための施設が必要」という樋口武男会長(現・名誉顧問)の言葉を受け、大和ハウスグループの未来を担う新しい人財づくりの場をつくるという考えのもと建てられたものだ。
さまざまな研修やワークショップなどを通して、日常では知り会えないような多様な人々が出会い、語らい、新たな発見や発想が生まれ、共に何かを創っていける場になってほしいという想いが込められた「コトクリエ」。
「コトクリエ」という愛称には、奈良の「古都」だけでなく、「個と」「子と」などの意味に加え、大和ハウスグループの基本姿勢「共に創る。共に生きる。」の「共創=コ・クリエーション」が組み合わされている。
「人をいかにつくり、育てるか」を大切にした石橋の想いは、社是や数々の言葉を通じ継承されるだけでなく、多様な人々が集うことができる『場』にも継承されていく。