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コラム No.52-6

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プロパティマネジメントが不動産価値を上げる (6)エネルギー消費ゼロを目指す次世代ビル「ZEB」

公開日:2018/09/19

2017年4月以降、延べ面積2,000m2以上の新築非住宅建築物等は省エネルギー基準の適合が義務化され、その解決策としてエネルギーゼロを実現する次世代のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)が注目を集めています。そしてZEBに取り組むことによって、不動産価値の向上につながると期待されています。

2030年までに新築建築物の平均でZEBの実現を目指す

2013年時点、業務部門(事務所・ビル、デパート、ホテル・旅館、劇場・娯楽場、学校、病院、卸・小売業、飲食店、その他サービス)において最終エネルギー消費量は全体で約20%(資源エネルギー庁『エネルギー白書2013』)を占めており、業務部門における省エネルギーの重要性が再認識されていました。
こうした状況を受け、政府は「エネルギー基本計画(2014年4月閣議決定)」において、「建築物については、2020年までに新築公共建築物等で、2030年までに新築建築物の平均でZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の実現を目指す」とする政策目標が掲げられ、取り組みが行われています。
さらに、2015年7月には、「建築物のエネルギー消費向上に関する法律」(省エネ法)が制定され、2017年以降に建設される延べ面積2,000m2以上の新築非住宅建築物等に対して、省エネルギー基準の適合が義務化されたのです。

ZEB化のメリットは光熱費の削減だけなく不動産価値の向上も

ZEBとは、先進的な建築設計によるエネルギー負荷の抑制やパッシブ技術の採用などによってエネルギー自立度を極力高め、年間の一次エネルギー消費量の収支ゼロを目指した建築物です。それによって大幅な省エネを実現した事務所は、不動産価値が向上し、テナント入居率が高くなるなどが期待されています。
例えば、ビルのオーナーが延床面積10,000m2程度の事務所をZEB化して50%省エネルギーを実現した場合、年間で40~50%の光熱費を削減することが可能となるだけでなく、不動産価値の向上も期待できます。東京23区内に立地する事務所ビルにおいて、「環境認証を取得しているビル(環境に配慮したビル)」は、「新規成約賃料」にプラスの影響を与えるとの調査結果も発表されています。
そして、ZEBは少ないエネルギー消費での運用が可能となるので、災害時の事業継続性の向上が期待されます。さらに、自然エネルギー利用技術を取り入れた事務所の方が作業のしやすさを高めてくれると感じる従業員が増加し、テナント・従業員の知的生産性が向上したという調査結果もあります(環境省・経済産業省・国土交通省パンフレット「ビルは”ゼロ・エネルギー”の時代へ。」より)。

まずはZEB Readyから取り組む

ZEBのメリットは理解できても、かなりの投資が必要となるので二の足を踏むオーナーが多いことも事実です。そこで一挙に100%のZEBを目指すのではなく、ステップアップしていくことによってZEB化するという道もあります。

最も取り組みやすいのが、「正味50%以上の省エネルギー」を実現した建物「ZEB Ready」に取り組むことです。その上で建築物の実態に応じて、さらなる省エネルギー化と太陽光発電等の再生可能エネルギーの導入により、正味で75%の省エネルギー目指す「Nearly ZEB」、最後に「正味で100%以上の省エネルギー」を実現した「ZEB」を目指すことができます。

ZEBの第一ステップである「ZEB Ready」の実現には、建築計画的な手法(パッシブ技術)を積極的に最大限に活用しつつ、長寿命かつ改修が困難な建築外皮を高度化します。さらに、設備の効率化(アクティブ技術)を重ね合わせることで、省エネルギー化を図ることが重要です。「ZEB Ready」は省エネルギー基準相当の建物に比べ、約9~18%の建築費増と試算されており、必ずしも実現が困難なものではありません。

ただし、ZEB Ready、Nearly ZEB、ZEBを実現するためには、ビルの計画段階から実際の建築に至るまで、さまざまな基準をクリアする必要があります。また、ZEBに取り組むためには、省エネ設備や太陽光発電などの導入にコストもかかるため、その問題もクリアしなければいけません。

そのため、建築段階から専門家と協議を行い、ZEBを実現するために必要な外皮やパッシブ技術の導入などについて早い段階から検討することが必要です。なお、国は次のような補助事業によってZEB化を支援しています。

関連リンク
大和ハウスグループは「ZEB(ゼブ:ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」のトップランナーとして環境負荷”ゼロ”の社会を目指します。

  1. ・テナントビルの省CO2促進事業(環境省)(国土交通省連携事業)
    環境負荷を低減する取り組みについてビルオーナーとテナントの協働を契約や覚書等で取り決めを結び、省CO2を図る事業であることが条件で、(1)運用改善に要する設備導入事業経費の1/2を上限に補助(上限:50万円)、(2)設備改修事業経費の1/2を上限に補助(上限:5,000万円)されます。
  2. ・ZEB実現に向けた先進的省エネルギー建築物実証事業(経済産業省連携事業)
    地方公共団体の建築物および延床面積2,000m2未満の業務用建築物が対象。対象経費の2/3を上限に補助(上限:3億円)され、原則単年度事業が原則ですが、複数年度事業は最長2年度認められる場合があります。
  3. ・ネット・ゼロ・エネルギービル実証事業(経済産業省)
    延床面積2,000m2以上の建築物が対象(一部用途や地方公共団体等の建築物は補助対象外)。補助率は補助対象経費の2/3以内で、補助金額の上限は5億円/年(複数年度事業について事業全体の上限は10億円)。原則単年度事業だが、複数年度事業は最長3年度認められる場合もあります。
  4. ・サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)(国土交通省)
    対象は、(1)住宅・建築物の新築、(2)既存の住宅・建築物の改修、(3)省CO2のマネジメントシステムの整備、(4)省CO2に関する技術の検証(社会実験・展示等)。補助対象費用の1/2以内が限度。ただし、建築物及び共同住宅の新築事業については、採択プロジェクトの総事業費の5%または10億円のいずれか少ない金額(標準単価方式による場合は総事業費の3.5%)が上限となります。戸建住宅については、建設工事等に係る補助額は1戸あたり300万円が上限となります。
  5. (平成30年度)

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