研究員のセカイ
緑化に関わる研究開発に長年取り組んできた天保。現在は、農作物の生産方法を工業化する研究を進め、自給率向上など食の課題解決を目指しています。
描く未来像
天保の描く未来
——安心安全な食べ物が今日も食卓に並ぶ。一見、その未来は、現在の日常とあまり変わらない。しかし、それは、地球温暖化が進んでも安定して農産物が生産、供給され、日本の食料自給率が大幅に改善された社会、そして、長年の課題であった農業従事者の減少も払拭されつつある社会だ。
この社会をもたらした理由のひとつに、農業の工業化が進んだことがある。太陽光の下の栽培でも野菜を安定して収穫できるようになり、食料自給率は向上。多くの食材を輸入に頼ってきた日本も、将来にわたって心配することなく、安心安全な食べ物を享受できるようになった。
また、農業の工業化により農作業の負担が大幅に軽減されたことで、これまで農業に関係のなかった企業、個人が、兼業、副業とさまざまな形で農業を営むようになった。これにより、農業従事者の減少という長年の課題も払拭されつつあるのだ——
いま取り組むこと
天保はこれまで、壁面緑化システムの開発を皮切りに、緑化に関するさまざまな研究開発に取り組んできました。
壁面緑化においては、施工性がよく運搬しやすいシステムなどを開発。同時に、緑化をした際の建物の躯体の温度変化や植物が与える心理的効果など、緑化の効果検証も手掛けました。その中で、室内緑化が導入されたオフィスでの働きやすさを検証するプロジェクトにも参画。本社オフィス改修に伴い導入されたアクティブベースドワーキング(ABW)によって、働く人の行動がどう変化するかを検証しました。「少し緑化から離れた研究でしたね」
現在は、食の自給率を高めるための研究に取り組んでいます。「具体的には、太陽光下で農産物を工業的に生産する方法について研究しています」。気候変動が激しくなり、また農業従事者が年々減少する現在、人工光で農作物を栽培する植物工場は、作業負担を軽減しながら安定的に農作物を収穫できます。しかし、栽培スペースが狭く機械化に適さない農作物もあります。また、商品単価が低かったり育成期間が長かったりするため、コストが高い人工光型の植物工場に振り切ることができないものも。「そのため、農作物を太陽光下で安定的に生産する技術の研究が必要なのです」
消費者や生産者が求める成分を満たした農作物を栽培する技術を開発、それを生産者に展開し、ビジネスとして成立させることが目標です。そのためには農業の工業化がカギとなります。「太陽光型の栽培技術だからといって手作業が多くなってはダメ」と天保。なるべく作業をシステマチックにすることで、生産性を向上し、質も量も担保できる栽培技術の確立を目指しています。「大和ハウス工業の歴史は建築の工業化の歴史。農業の工業化にも培った知見が活かせると思っています」
最終的には、日本の農業の活性化を進め、食の自給率を向上させるのが目標です。また、工業化により作業負担を軽減することで、農業への参入障壁を低くすることも期待しています。「いろいろな業種の企業、あるいは個人が農業に参画するようになれば、農業従事者の減少といった課題の解決にも寄与できるはずです」
現在の業務は、栽培に関連した作業が一番多いと天保。「半分農家です(笑)」。現在の研究開発が本格的にスタートしたのは2023年。「今、やっと年間を通してどんな状況が起こるか、そのデータが揃った状態です」。梅雨が長かった2024年。台風の接近にもヒヤヒヤし、夏の猛暑には枯れてしまうのではと気をもみました。「自分たちではどうにもできない部分もあり、収穫まで神頼みのようなところもあります」。想定通りの結果が出ないことも多いけれど、それもひとつの結果であり、なぜ、思った通りにならなかったのかを考えるときも楽しいと天保。「でも、一番うれしいのは、自分たちの狙い通りに農作物を収穫できたとき。これも、農家の方々と変わりません(笑)」
※記載内容は2025年3月時点のものです。
天保 美咲(てんぽ みさき)
環境エネルギー研究部
地球環境グループ所属研究員
大学院生命環境科学研究科修了
2011年4月入社
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