大和リース 規格建築事業・流通建築リース事業建物建材の9割を新店へと再利用したローソン

大和リース株式会社は、株式会社ローソンと閉店した店舗の屋根・壁・柱・梁・サッシなどの建材を新店舗に再利用する試みを進めています。この取り組みは、二社のパートナーシップを通じて、カーボンニュートラルの実現およびサーキュラーエコノミーの構築に貢献する持続可能なビジネスモデルです。大和ハウスグループの原点である創業商品「パイプハウス」に始まるプレハブ建築と建物リースという独自のビジネスモデルの伝統を受け継ぎながら、新たな時代に対応した挑戦を行っています。
概要
■クローズ店舗概要
- 店舗名
- :ローソン津山材木町店
- 場所
- :岡山県津山市材木町
- 規模
- :平屋建 198.25m2
■リユース新店舗概要
- 店舗名
- :ローソン津山高野山西店
- 場所
- :岡山県津山市高野山西
- 規模
- :平屋建 198.25m2
建材の約9割を再利用
閉店店舗の躯体・外壁部分に使用している建材(屋根・壁・柱・梁・サッシなど)を重量ベースで約9割再利用。
CO2排出量を6割削減
資材製造から建物が完成するまでのCO2排出量は、通常店舗と比較して約6割削減見込み。
3割コストダウン
躯体部分(基礎・鉄骨・外壁・屋根・サッシ)において、約3割コストダウン。
リユースまでの流れ
Step1.クローズ
リユース可否の事前調査

大和リースでは、ローソンの出店展開を全国でサポートしており、とりわけ、ロードサイド店舗の建築においては、2013年に共同で「DL-e工法」を開発し、多くの店舗にこの工法を採用しています。これにより、全国規模で同一規格の店舗を建設することが可能となり、資源循環に向けた取り組みへと発展しました。
リユースにおいては、閉店店舗の仕様や出店エリア、閉店から開店までのタイムスパンなどの諸条件を確認し、運搬にかかるコストも考慮した上で、新規店舗へのリユースが可能かどうかを総合的に判断します。
Point
ローソンと大和リースをつなぐDL-e工法とは?
DL-e工法とは、軽量鉄骨を利用したプレハブ工法のこと。2011年に東日本大震災が発生した際、被災地にていち早く店舗営業を再開するために、組み立てと解体が容易な仮設店舗の建設を大和リースが担当したことがきっかけで誕生しました。2013年からローソンの標準的な店舗において全国的に採用され、累計で約3,500棟を出荷。モジュール化された指定の建材を現地で組み立てていく工法で、組み立てや解体がしやすいため、開発当初より、建材の再利用も視野に入れた設計を行い、工法の改良を重ねています。
Step2.解体
解体基準に基づき、建材を1つ1つ丁寧に解体

ローソン店舗において、リユースの対象となるのは屋根・壁・柱・梁・サッシなどの建材です。大和リースがリース事業で蓄積してきた解体基準・ノウハウに基づき、専門の協力会社が一つ一つ丁寧に建材を解体します。紫外線による日焼けの影響などを考慮し、リユース先の店舗でも同じ配置で再び組み立てられるよう、外壁パネルにラベリングを行うなど、外観上の工夫を施しながらバトンを受け継ぎます。
なお、今回リユースの対象となっているのは建材のみですが、大和リースでは、リース事業における基礎材の再利用、使用済みリース用外壁のアップサイクルにも積極的に取り組んでいます。
Point
リユースしやすい「システム建築」とは?
建物を構成する部材の形状・寸法・接合方法を標準化し、設計・施工のすべてのプロセスをシステム化した建築工法。規格化された部材や部品を使用することで、高い品質を保ちつつ、調達や製造段階におけるコストの低減につながるほか、現場での組み立てが迅速に行えるため、施工期間の短縮を図れます。大和リースでは、材料となる資材の調達から加工・組立と一貫して自社工場で行い、厳しい品質管理のもと、信頼性の高い商品をお届けしています。また、全国のデポ・工場を中心に迅速な搬送とアフターケア、メンテナンスなど、機動力のある生産・物流システムを構築し、さらなる工期短縮やコスト削減を図っています。
Step3.整備
デポ・工場において、部材ごとに設けた基準に沿って整備

解体された建材は一旦、全国のデポ・工場へ運ばれます。大和リースの建物リユースシステムの物流拠点であるデポでは、建材の整備に際し、部材の管理基準により、作業者の習熟度に依らない高い品質を維持しているほか、本部では随時基準のアップデートを行っています。
リユースされる店舗の建材はローソンさまの保有資産であるため、大和リースが定めている管理基準を基に、安全面・品質面・見栄えなど、さまざまな要素を総合的に考慮しながら整備の実施範囲を決定します。
Point
安心・安全を長く守り続けるための整備
DL-e工法をはじめ、大和リースの規格商品では、リユース部材の選別基準や整備に関する管理基準を定めています。この基準をもとに、選別・整備・出荷をすることで、安心・安全な部材を供給しています。
四国デポ・工場
さび止めを塗布し、補修する様子
Step4.再構築
新品同様の手順で、新たな拠点へ

整備が完了した建材は、新たな建設現場へと運ばれ、すべて新品を使用する場合と同様の手順・工事期間で、新たな店舗に生まれ変わります。なお、点検・整備の結果、再利用基準を満たさなかった建材は、新品に置き換えます。
建設・解体時の騒音・振動・粉塵の抑制といった生活環境への負荷の低減、およびCO2排出量の削減にも寄与しています。
Point
あえて整備“しすぎ”を避け、新たな価値につなげる
外壁の汚れや小さな凹みなどがあっても品質に問題がなければ新品への入れ替えや過度な整備は行いません。リユース店舗の取り組みは、使えるものは原則再利用することによって環境負荷低減に貢献しています。ローソンさま独自のリユースステッカーは、店舗の外壁に貼られ利用するお客さまに対しても環境価値をアピールしています。
担当者の声
お客さまにとって、そして社会にとってより良いものだという確信を持ち、ローソンさまと何度も話し合いを重ねながら取り組みを進めてまいりました。この試みは、長年にわたる継続的なコミュニケーションと信頼関係があったからこそ実現できたものと考えております。
CO2排出量の削減だけでなく、建設時の環境負荷低減、サーキュラーエコノミーの構築といった幅広い環境課題の解決、コストの削減といったお客さまの課題の解決など、幾重にもポジティブなインパクトを感じており、内外から多くの反響をいただいております。
大和リース株式会社
本社 設計推進部 次長
犬飼 正樹
大和ハウスグループの創業商品である「パイプハウス」。それに連なるシステム建築のノウハウを活用して生まれた今回のプロジェクトは、「世の中の役に立つからやる」という私たちの思いや企業価値が認められたものと誇りに感じております。 全国に点在し、かつ多岐にわたる建材を適切に管理することは確かに手間がかかりますが、長年培ってきたノウハウを活かし、お客様にご満足いただける商品を提供できるという自負を持って進めています。
大和リース株式会社(右から)
- 本社 ⽣産・デポ推進部 部⻑ 北 誠司
- 岡⼭デポ 広島デポ 四国ユニットデポ デポ⻑ 東 康隆
- 四国デポ 資産管理グループ 主任 黒⽥ 恵⼦
- 四国⼯場 製作管理グループ ⼤江 良⼦
※掲載内容は、取材当時(2024年12月)の情報です