協働事例のご紹介
熊本支店


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アクションプラン(行動計画) - みらいの家を描く「親子ワークショップ」

こどもたちの絵を工事現場に
市電が走る電車通り沿いの工事現場。その仮囲いを彩るのは、地元のこどもたちが描いた「みらいの家」です。夏の2日間、学校法人第一学園様の幼稚園で、「仮囲いに飾る絵のワークショップ」を開催しました。参加したのはこどもたちと保護者、そして熊本支店の社員です。
熊本支店は子育て中の社員が多いこともあり、「ミライマチ宣言」では少子高齢化や多様性のある社会になっていくことを見据え、「世界一思いやりのある都市」を目指すことを掲げて、こどもを支援する活動に積極的に取り組んでいます。
これまでにも、大和ハウスの工場で余った木材を使う「木工教室」を継続的に開催し、小学校や公民館からの依頼にも応えてきました。また、半導体関連企業の従業員とご家族が海外から移住してきた際、当社が建築した賃貸住宅に入居されました。その方たちが地域の皆さんとつながるきっかけとなる「お祭り」に協力するなど、建築後も支援しています。
親子で一緒に取り組む
今回、協働することになった第一学園様は、熊本支店の営業担当者とそのこども、親子二代が通っていたご縁のある幼稚園でした。当初、大和ハウス側では「こどもたちに絵を描いてもらい掲示する」ことを想定していましたが、園側から「親子ワークショップにしたい」とのご提案をいただきました。
園長先生は、こども家庭庁が推進するビジョンを念頭に「今後は私たち園だけでなく、保護者の方や地域、大和ハウスのような企業の皆さまと連携して、こどもたちの世界を広げていくことが本当に重要なことになっていきます」とお考えです。ワークショップを提案されたのも、ただ絵を描いて渡すのではなく、双方にとって実りのある取り組みにしたいとの思いからでした。
園側の想いを受け、大和ハウスもその気持ちに応える形でワークショップを実施することに。第一学園様と熊本支店の社員が対話を繰り返し、資料展示の工夫や画材の提供を通じて、こどもたちがのびのびと絵の表現ができる環境を整えました。
対話で引き出す深い学び
ワークショップでは、講師の先生が「幼児期に必要なのは主体的・対話的で深い学び」と語り、保護者にはこどもが「考える」ように話しかけてほしいと呼びかけました。続いてこどもたちと、動物の巣を例に「家の役割」を考え、地球環境や温暖化にも話を広げて未来をどう変えていくかを一緒に思索。その後、家族で「将来住みたい家」について話し合い、絵の具で色鮮やかに仕上げていきました。
大和ハウスは、自由な発想で絵を描いてもらうために、本物に触れる楽しさや喜びを体験してもらおうと建材や色とりどりのカタログを展示。こどもたちは目を輝かせながら手に取り、見入っていました。昼食時には、デフサッカー日本代表として活躍する社員が挨拶し、耳が聞こえにくいハンディを抱えながら挑戦を続ける姿を通じて、こどもたちに「あきらめない心」を伝えました。
型にはまらないワクワクで描く家
完成した絵は、どれも大人が思わず驚くような思いがけない発想に満ちていました。蝶の家を描いた女の子は「触角が煙突で、羽にはお花の窓があるの」と説明。蝶のおなかにはキッチンやお風呂、勉強部屋、遊び場など、夢の暮らしがぎゅっと詰め込まれていました。他にも鳥の家や宇宙の家など、想像の翼を広げた作品がずらり。その自由奔放な発想を受け止め、良いところを伸ばす教育方針でこどもたちに接する先生方の姿勢から、大和ハウスの社員も「決めつけない、否定しない」大切さを学びました。
長い時間をかけて花が咲く
地域共生推進委員の藤木は、これまでの活動を振り返り、まちを歩いていた時、「以前、木工教室でこどもが作った椅子をまだ使っています!」と声をかけられ、うれしかったと語ります。今回の活動も、成果はすぐに見えるものではありませんが、時間がたって振り返った時、参加した親子にとっての学びにつながったり、思い出の1ページとして心に残ったり、「何か」を生み出す時間を提供できたはずだと考えています。
同じく活動に参加した社員の梶田は、活動を続ける大変さを言葉ににじませます。本業と地域共生活動を並行することで残業が増え、帰宅が遅くなる日が続きました。梶田は「自分のこどもがまだ小さいのに、わが子に我慢をさせてまで、他の子たちのために時間を使うのはどうなんだろう……」と葛藤。けれども夫から「地域のこどもたちのために活動しているのは、とても誇らしいことだよ」と励まされ、その言葉に胸が熱くなり、涙が込み上げたそうです。
地域をより良くしていく活動は、地域の方々や団体と関係を築きながら「長い時間軸」で進めていくものです。そのため、成果を実感できるようになるまでには時間がかかります。それでも、地域の方々から感謝のお声をいただいたり、協働活動や事業などで新たなつながりが生まれたりすると、地域の一員であることを実感し、その喜びが次の活動への大きな力になっています。
まちの人とつくる景色
「こどもたちの絵で彩る仮囲い」は、一人の社員の発案から始まりました。その社員にとって「絵」は、単身赴任中に休みの日だけ会えるこどもと、美術館や芸術祭を巡った思い出と結びつく大切なものでした。今回、親子ワークショップが実現したことで、親と子が一緒に何かをつくる、かけがえのない時間をつくることができました。
完成した絵が飾られるのは、有料老人ホームの工事現場です。こどもたちの絵とそこで暮らす高齢者の姿が重なり合い、見る人の心を温かくする光景になるでしょう。まちの姿は、企業や行政だけでなく、そこで暮らす一人ひとりが考え、形づくっていくもの。そんな想いが、この小さな絵の一枚一枚に込められています。
熊本支店では今後、こども食堂の支援や使わなくなったこども服の譲渡会など、新たな活動にも精力的に取り組む予定です。これからも、地域のこどもたちや子育て世代を長く支えていきたいと思っています。