大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

連載:5分でわかる!サステナブルニュース 気になる疑問、調べてみた 森林大国ニッポンの今とこれから。木材の地産地消は実現できるのか

連載:5分でわかる!サステナブルニュース

森林大国ニッポンの今とこれから。木材の地産地消は実現できるのか

2024.12.26

    実は、日本の国土の約7割を森林が占めているといわれています。この森林率の高さはOECD加盟国ではフィンランド、ノルウェーに次ぐ第3位※1で、日本は世界でも屈指の森林大国です。

    空気を循環し、生物を育み、私たちに癒しを与えてくれる——。森林は昔から重要な役割を担い続けていますが、実は森林が置かれている環境は大きく変化しているといいます。

    身近にあるようで意外と知らない森林について、大和ハウス工業の事例とともに紐解いていきます。

    ※1:参考:FAQ「世界森林資源評価2020」

    日本の森の4割が人工林。伐採の適齢期を迎えている

    「地産地消」という言葉が浸透して久しいですが、近年は国を挙げて"木材の地産地消"が推進されています。現在、日本の森林の約4割が、木材の生産目的のために人の手が加えられた人工林であり、その多くが50年以上経過し、主伐期(伐採の適齢期)を迎えています。つまり木材として活用できる樹木量がピークに達しているのです。

    人工林・天然林別の森林面積と森林蓄積の推移

    こうした現状を見据えて、2010年、国が率先して公共建築物に木材を利用する「公共建築物等木材利用促進法」を施行しました。この結果、翌年から公共建築物の木造率は低層の公共建築物で20%を超えるようになっています。

    公共建築物の木造率の推移

    加えて2021年には、林野庁が民間建築物でも木材利用促進に向けて、建設事業者、設計事業者や実際にこれら建築物の施主となる企業によるネットワークづくりを進める「ウッド・チェンジ協議会」を設立するなど、全国の建築物に木材利用を増やしていくことを目指しています。しかし、国産木材の活用は満足に進んでいないのが現状です。

    そもそもなぜ、樹木を切り出して活用する必要があるのでしょうか。「豊かな森をそのままにしておけば、CO2を吸収するし、地球に優しいのでは?」と思う人もいるかもしれません。

    「実は、森を放置しておくと私たちの生活に危険を及ぼすことがあるんですよ」。

    そう指摘するのは、大和ハウス工業の建築物の木造・木質化を推進する「Future with Wood」担当者です。担当者によれば、森林は適切に管理されずに放置されてしまうと木々が生い茂り、地表に日光が入らなくなります。すると地表の草木が育たなくなり、樹木や植物が強く土に根を張れずに土が痩せてしまうのだそうです。

    昨今、深刻な土砂崩れのニュースを目にする機会が増えていますが、その背景には、こうした森林の事情も大きく関係しています。

    「さらに、樹齢を重ねた樹木はCO2吸収機能も落ちるんです。適切に伐採して、森に新陳代謝を促していかないと、CO2吸収効果も期待できません」。

    森林資源を積極的に活用することは、実は私たちの生活の安全にもつながっているのです。

    林業による雇用創出、地方活性化の可能性

    大和ハウス工業ではこれまで、戦後の木材不足の中で、木に代わる建築資材として鉄を活用してきました。耐震性、耐火性など維持管理のしやすさで工業化できる建物の資材として、鉄やRC(鉄筋コンクリート)造に移行してきた背景があります。ですが昨今、「鉄から木」を掲げ、木造・木質化にも注力、特に事業施設や商業施設、集合住宅で木質化を推進しています。

    実際に、いくつかの施設での木質化の取り組みは始まっています。京丹波町立たんばこども園では、地元の木材使用にこだわり、京丹波町が主体となって、町有林から切り出し、京丹波町産の木材を100%使用しています。地元の木材をふんだんに使った優しく温かな保育空間が、周辺環境とよく馴染んでいると評価され、2022年のウッドデザイン賞を受賞しています。

    内装材や家具には京丹波町産の木材を100%使用することで、空間全体に美しい統一感を生み出しています。

    こうした地元の木材の使用は地域の新たな雇用創出にもつながっています。

    「国内の木材利用はこうした地域創生の一面もあるんですよ。例えば大分県は高齢化に伴い、林業の担い手が減少していましたが、森林組合が主体となって、木材の切り出しと受け入れを分担して、労務を効率化しました。今では1000万円を超える収入を得ている人も生まれてきているそうです」と明かします。

    国内の木材利用が進まない3つの理由

    とはいえ、まだまだ社会全体として、国内の木材利用が進んでいないのが現状です。前出の「Future with Wood」担当者は、その理由として「森林の土地所有者がわからない」「山道が整備されていないこと」「値段が高いこと」の3つの理由が挙げられると言います。

    「日本には土地の登記制度がありますが、市街地と違ってはっきりと区画があるわけでもなく、広大であることから、所有者がわからない森林があるんです。そうすると民間企業が勝手に手入れをしたり、切り出したりするわけにもいかず、荒れ果てたままになってしまいます」。

    事実、地籍調査による登記簿上の所有者不明な林地は28%※2にものぼるといわれています。森林の荒廃を防ぐために、所有者が不明であっても、早急な間伐を行うことが必要な森林であれば、間伐の代行ができる「要間伐森林制度」などを敷くことでしのいでいる状況です。

    ※2:参考:林野庁「森林経営管理法の概要と所有者不明森林への対応」

    「ほかにも、山道が整備されていないと木を切り出しても運搬ができません。目の前に豊かな山があっても、それを運ぶ道がないとそもそも活用できないんです。値段が高いことともつながりますが、日本の山は急峻で、斜度がきつくて作業道が狭く、道がくねくねと曲がっています。大規模産業として機械化の導入が難しいことから、作業工程が細分化され、値段が高くなる傾向にあります」。

    諸外国では、比較的緩やかな斜度の森林に、大型の伐採機を搬入することで短時間で丸太にしてしまいます。大型機材を効率的に導入して、大規模な林業を推し進めることで廉価な木材を提供してきました。もっとも、昨今はコロナ禍に伴う林業従事者の不足と、輸送コストの増大によって、外国産木材が急騰する「ウッドショック」を招き、国産木材も注目されるようになりつつあります。

    日本に眠る「森林」という資源活用のためにできることは

    今後はどのようにすれば国産木材の利用は進むのでしょうか。

    「いち企業として推進するだけではなく、自治体や国と協力しながら取り組むことが必要でしょう。このままでは50年後、100年も放置され続けてしまいます。国による所有不明者の土地の買い取りなどの法整備も必要なのかもしれませんね」。

    一方で、消費者からは嬉しい声も届くようになりました。

    「もし木を使うなら、地元の木を使いたいという施主の方は多くいます。これからどこの木材をどう使うか。木によるぬくもりや安心感というのはあると思います。ぜひ実際に木を見て、触れてもらってその良さを体感してほしいですね」。

    日本に眠る「森林」という大きな資源。もしかしたら大きな可能性を秘めているのかもしれません。

    未来の景色を、ともに

    大和ハウスグループも「生きる歓びを、分かち合える世界」の実現に向け、様々な取り組みを進めていきます。

    大和ハウス工業は、木を活かした次なる進化へ、4つの価値(社会・経済・体験・環境)をつないで循環型社会を目指す、新しい建物の木造・木質化に取り組んでいます。

    Future with Wood(建築物の木造・木質化)

    詳細を見る

    この記事をシェアする

    サステナビリティ(サイトマップ)